「骨董」 | 泳ぐ写真家龍之介

「骨董」

平凡社の「太陽」で骨董の特集があると、
なぜか私のところに仕事がきていた。
別に、私は骨董が好きではないのだが。

「別冊太陽」で李朝の陶器の本を出す事になって、
全国を撮影して回ったことがある。
取材先は、個人の収集家、骨董屋、美術館など。

私と編集者と、編集者を装った真贋鑑定家の3人で
撮影に臨むわけだが、
真贋鑑定家が、そっと私の裾を引っ張り、
蚊の鳴くような声で、
「龍之介さん。それ、撮らなくていい。贋ものだから!」
と言うのだ。
私は、
「あっ、あっちの方が今回の特集の趣旨にふさわしいかな。ね、○さん(編集者)
、、、これは今回は遠慮させてもらいます」
なんて、立ち会いの方に弁明して、贋物を避けながら、
撮影を進めていくわけだ。

長年骨董に親しんでいる、ベテランの収集家やキュレターでさえ
見抜けない贋ものを、即座に見抜く!
これが、とっても格好良かった。
まさに、プロ!

骨董の世界に贋作はつきもの。
その見分け方や手口を、いろいろと聞いたが、
敵もさるもので、だましの手口も多種多様。
骨董を眺めたりするより、
そちらの方が面白かったものだ。