「本当は何が撮りたかった?」
カメラマンを志すときには、
皆、「こういうものを撮るカメラマンになりたい」
という理想があるはずです。
しかし、
世の中、なかなかそうはいかないものです。
どこかで妥協して、
不本意な撮影をしているカメラマンが
多いのではないでしょうか。
私もそうでした。
しかし、
中には、人が羨むような仕事をしているのに
不幸なカメラマンもいます。
私の友人H氏がそうです。
彼はすでに30年も、テレビ、映画関係のスティル、
ポスターの撮影をしていて、
有名な芸能人を数多く撮影しています。
女優さんたちとも親しく、
話を聞く度にうらやましく思ったものです。
しかし、
それは、彼がめざした写真とは
大きくかけ離れてしまっていたのです。
彼が撮りたかったもの、
それは「ペンギン」だったのです。
南極に行って「ペンギン」を撮りたかったのです。
彼は、芸能界が嫌いで、
できれば、足を洗いたいと考えていました。
しかし、
一度、仕事を始めてしまうと、
生活のこともあり、なかなか修正がききません。
私は同じ職業の人間として、鳥好きとして
「ああ、そうだったんだ。」
と理解してあげることができますが、
芸能人を撮りたいと思っている多くのカメラマンや、
芸能界に憧れているひとたちには、
理解できなかったようです。
しかし、
写真の世界に限らず、人間ってこういうものでしょう。
幸せか不幸かは、
その人の価値観や、
心のありようで違ってくるものなのです。
また、
不本意な仕事はお金になって、
やりたい仕事はお金になりません。
どの世界も同じでしょう。
しかし、
そんな彼がなぜ芸能界関係の写真を撮るに至ったのか?
それは未だに謎です。