「ポートレートを撮ること」
が、歳をとるにしたがって楽になりました。
私は、被写体との会話なしに、
写真を撮ることがほとんどないので、
いつも、何かしら話題や接点を見つけては、
被写体に話しかけています。
まあ、撮影よりそちらの方が楽しいこともありますが。
それで、
インタビュアーが取れなかった面白い話題が、
出てきたということもありました。
その会話に被写体が反応して、
機嫌がよくなっても、不愉快な顔をしても、
それは、こちらに対する反応だと受け止めて、
かまわずにシャッターを押しています。
私が一番避けたいのは、
被写体と何のコミュニケーションもとらずに
ただ、写っているだけの写真。
被写体の力で、
いくらそれが絵になっていても、
そこには、撮った側の意思が何もないも反映されていないので
とても気分の悪い写真になってしまいます。
ポートレートは、
そこに撮る側の意思が反映されているべきだと思います。
人間は、一言二言言葉を交わすと、
相手との力関係を把握するので、
いくら度胸が据わっていても、
人生経験の少なく、
修羅場をあまり経験したことのない若い頃には、
どうしてもビビリが出てくるようで、
相手は不安を感じたり、信頼をしてくれなかったようです。
しかし、最近では、
こちらも、幾多の修羅場を潜り抜け、
精神的にもタフに、
ある意味狡猾にもなっているので、
被写体もその辺を自然に感じて、
信頼してくれるようになったと思っています。
そういう意味では、
ポートレートは、写真家にとって総力戦の世界なのかもしれません。