過去の記憶~ラストエンペラー
私の祖父は、昭和の初期に中国に渡り、綿花取引の商売をしていました。
母は青島で生まれ、
12歳で日本に戻ってくるまで中国語の方が得意だったと言います。
祖父の趣味は写真と古美術収集で、
特にカメラはローライコードと、35mmのカメラも所有していたというから
相当の凝り性だったのでしょう。
当時の珍しい風景や出会った人たちを数多く撮影しています。
祖母がなくなってアルバムが私の手もとに来た時に、
始めてそのアルバムを良く見たのですが、
びっくりしたことに、満州国のラストエンペラー、溥儀のポートレートがでてきました。
見たところ35mmで撮ってあるようで、
公式に写真屋が撮ったものではないでしょう。
ちょっとポーズをとってもらって撮ったという雰囲気です。
多分祖父が撮ったと思われますが、
今となっては確証はありません。
母によると、祖父がよく溥儀の話をしていたらしく、
溥儀の写真があるらしいよ。と言っていたのを覚えています。
ぼろぼろのアルバムの中に突然、
歴史の断面を見たような気持ちになりました。
写真の一番の特性は記録性だといいますが、
時代を経て、ある日突然わたしたちに過ぎ去った過去を語りかけてくる不思議さ、
これも写真の大きな魅力なのでしょう。