それでは、ニコゲーについて振り返ってみます。
「ニコゲー」って何? と思う方も多いかもしれませんので軽く説明します。
ニコゲーは株式会社スパイクが運営していたゲームサイトのことで、2010年9月14日にサービスがスタートしました。
ニコゲーのコンセプトは、「ゲームを『つくる』+『シェアする』+『ニコニコする』」というもの。
ユーザーはジェネレーターというツールを使って、手軽にゲームを作って公開することができました。
このサービスが優れていたかどうかは分かりません。
2011年4月27日に閉鎖されてしまったことを考えれば、問題が多かったサービスという見方が正解なのでしょう。
しかし、私にとってはニコゲーはとても画期的なサービスとして記憶に残っています。
私の感じたニコゲーの魅力とは何だったのか?
それは、ゲーム製作の垣根がとても低いことです。
ニコゲーのコンセプトとして、『シェアする』というものがあります。
例えば絵が得意な人が画像素材を提供し、音楽が得意な人がBGMやSEを提供し、それをみんなで共有することで、一人ではゲームが作れない人でもゲームを作ることが可能になりました。
また、ニコゲーの準備していたジェネレーターは、とても簡単にゲーム製作が行えるツールでした。
ゲーム製作サイトはどうしてもプレーヤーとクリエーターが別れてしまうのが常です。
それがニコゲーでは、誰でも使えるジェネレーターによって、プレーヤー・クリエーターの壁を感じさせずに交流し合うことができました。
これって、けっこうすごいことなんですよね。
意図的にサイト作りをしなければ、決して達成できないことなのです。
そして、ニコゲーで画期的なことは、『ゲーム』の捕らえ方が他のサイトとは革新的に異なることですね。
他のゲーム製作サイトでは、ACT、STG、RPG,ADVなどにゲームのジャンルが分かれます。
もちろん、ニコゲーのジェネレーターもACTやSTGが作成可能なのですが、その次にくるのがスライドショー、ブック、占い、クイズなどになるんですね。
スライドショーは、簡易的に動画を作成するツールであり、ブックは小説を書くことのできるツールです。
これらは、見る側はページをめくってみたり画面を眺めたりするだけでものなのです。
あれ? それってゲームと呼べるの?
そう疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、オフラインで一人で作成していたら‥‥それは、ゲームと考えるのは難しいかもしれません。
しかし、ネット上で素材やゲーム自体(コピーが可能)を多くのユーザー共有することによって、ゲームを作成すること自体が、ゲームのような娯楽として成り立つのです。
ズバリ言ってしまえば、ニコゲーの主役は、本来なら脇役のゲーム素材たちなのです。
どの素材を使うかを選択するために、いろんな素材を眺め、音楽を聴き、自分の思い描いたように設置してみる‥‥この過程をゲームの一部としているのがニコゲーなのです。
完成したゲームが面白いかどうか‥‥それは全く別の問題というわけです。
『素材が主役』というのは、ニコゲーを語る上で、とても大切なことです。
私はネット上のゲーム作製がどう行われるかネットで眺めてたことがあります。
例えば、ADVゲームの製作がネットの掲示板で行われるとき、発起人がストーリーを提示し、それに興味を持った絵師が絵を、作曲家がBGMを提供していきます。
ストーリーは壮大で、登場人物も魅力的、開発も順調に進んでいくかのように見えました。
しかし、そのゲームの製作スタッフの一人の生活ががらりと変わり、素材作りに時間がかけられなくなります。
そのうち、ゲーム製作の時間は延び、延びるたびにスタッフが減り、ゲームを完成させることすら難しくなります。
ゲームが完成しないことには、その過程で作られた素材たちは日の目を見ることなくネットの海に沈んでいくのです。
なぜなら、それらの素材は、そのADVゲーム用に作られたものなのだから‥‥。
今、私が作ってる逆転裁判2chの続編も6年以上かかってます。
前作の「逆転裁判2ch 逆転の丑の刻参り」は3ヶ月で仕上げることができたため、世に公表することができました。
しかし、今の作品は軽く見てもその4倍のストーリー分量であり、短期で済ますことができませんでした。
その結果、スタッフの連絡をとることができなくなってしまいました。
もしこのゲームを私が完成させることができなければ‥‥せっかくの素晴らしい素材たちが無駄になってしまうのです。
自分の体験や、ある掲示板のADV製作を眺めていて、本格的なゲームを作ることの大変さを学びました。
ネット上でのフリーゲームの共同制作は、実際の知り合い同士でゲームを作成する場合や同人ゲームとして作成するため、利益が発生する場合と比較すると、難しいことも多いのです。
そして、それらはゲームが主体のため、ゲームが完成しないことには始まらないのです。
私はそのことを思うたびに、考えていました。
もし、ゲーム作製よりも先にキャラクターや音楽の素材が存在していたら?
それらは、闇に埋もれることなく自己主張を始めることでしょう。
そして、そのキャラクターを生かしたゲーム製作が行われるかもしれません。
ACT、STGといったゲームシステムよりも、キャラクターや背景、BGMやSEといったゲーム世界を構築するものを先に共有していたら‥‥それらの素材は決して無駄になることはないはずです。
この私の想いを実現させてくれたのが、ニコゲーでした。
それは、ゲームというものの価値観をオンラインという観点から考え直す画期的なものでもあったのです。
新たなキャラクター、そのキャラクターが活躍するための背景やBGM、独特なSE、それらをみんなで議論しながらニコゲーの世界を広げていくことこそが、ゲームであり、とてもアクティブで楽しいものだったのです。
個々のゲームを完成体とし、その出来でゲームサイトの出来を語る考え方では、ニコゲーを理解することはできないと思います。
そして、ニコゲーのようにゲーム素材を主役にする英断を下すことも難しいのではないでしょうか。
私が熱く語ったニコゲーも、閉鎖してしまいました。
明らかな失敗に終わった以上、上記のコンセプトを実現しようと思うサイトは二度と出てこないかもしれません。
本当に残念です。
文責 龍ノ介