理佐ちゃんとねるちゃんは元恋人という設定です。




由依side


夕方、私の部屋に理佐がいる。

別に何をするでもない。

ご飯を食べたり、映画を観たり。

時にはお酒を飲んでちょっといい気分になってみたり。

それだけ。


それが居心地悪いけど心地良くて。

気付けば夢の中なんてことも少なくない。


今もきっと、そんな感じだったんだと思う。


無音だった空間に何やら音がして、薄らと目を開けばそそくさと荷物を纏める理佐の姿が映る。


 「りさ?」


名前を呼べば驚いた顔を見せる。


 「あ、起こしちゃった?」

 「ごめん」


申し訳なさそうにする理佐とまだ寝ぼけた頭で会話をする。


 「起こしてよ」

 「もう帰るの?」


 「うん、帰る」


別れはいつもあっさりしててそれが私たちらしくもあるけどどこか寂しかったりもする。


今日だけは少し我儘言ってみようかななんて思ったり思わなかったり。


 「明日なんかあるの?」


 「寝てな?」


ないって言われたら引き止めようかななんて考えて発した言葉も届かない。


だったらもう本格的に我儘になってみようかな、なんて。


 「ねぇ、泊まってってよ」

 「今日くらいいいじゃん、」

 「なんか寂しんだけど」


 「どうした?」


寝ぼけたフリして甘えてみればいい事起きるかなって期待して口にした言葉も上手く届かなくて。


 「付き合っちゃおうよ」

 「私、理佐のこと幸せにする」

 「約束する」


もういっそのこと終わらせちゃおうなんて寝ぼけた考えを実行しちゃうあたり今日の私はどこかおかしい。


 「なんかもうそういうの疲れちゃったんだよね」


そんな言葉も受け取ってもらえないらしい。


 「そういうの?」


 「付き合うとか、そういうのはいい」


 「ねぇ好きだよ?」

 「私、本気だよ?」


 「んー

 「またあそぼ?」


それでいいでしょなんて言いたげな顔。


柄にもなく物分かりの悪い奴みたいに食い下がってみたってやっぱり上手く受け取ってもらえない。


 「ねぇ

 「理佐がそうなったのってさ、ねるが原因?」


 「あ、ちょっと待って」

 「はーい、もしもし?」

 「ん?あー、ありがと」

 「うん、今行く」


核心をつくように発した疑問は宙に舞う。


 「私たちってどういう関係なの?」


電話を繋げたまま小声で「じゃあね」なんて言って部屋を出ていく理佐の背中に問いかけた疑問。


答えはずっとわかってる。

行き止まりみたいに私たちの関係に続きはない。


だったらせめて、ねるみたいに理佐を変える原因になれたら良かったのに、なんて。