由依side
私は最低な人間だ。
ひかるという恋人がいながら元恋人、現セフレの理佐が好きで好きで忘れられない。
今日だってひかるからの連絡がなければ理佐と体を重ねようとしてた。
特に今日はお酒の力もあって、理佐が欲しい一心でたくさん甘えた。
お風呂で理佐に後ろから抱きしめられているときなんて、久しぶりに感じる理佐の優しい温もりや直に当たっている理佐の胸に自分でも引くくらい興奮していた。
行為を始めようとしたときに鳴った私と理佐の携帯。
『由依さん』
『会いたいです』
邪魔だと思ってしまった。大切なはずの恋人からの連絡なのに。やっぱり私は最低だ…
「ごめん」
「ひかるが会いたいって」
「私も」
「「じゃあね」」
理佐と分かれてからも頭の中は理佐でいっぱいで、そんな状態のままひかるの家へ向かう。
合鍵で扉を開けるとバタバタとひかるが走ってくる音が聞こえた。
「お邪魔します」
「あ、由依さん!」
「本当に来てくれたんですね!」
「うん」
大きすぎる罪悪感を胸に残したままひかるを抱きしめる。
私の腕の中にすっぽりと収まるひかる。
この子は何にも気付かずただ純粋に私を愛してくれてるんだろうな…
「さっきまで、なにやってたんですか?」
「あー、一人でお酒飲んでた」
いつからか何の躊躇もなくつけるようになってしまった嘘。ひかるを傷つけないためだと正当化して今日も息をするように嘘をつく。
「本当に一人でしたか?」
「え、うん」
初めて見るひかるの鋭い目付きに心の奥まで全部見透かされているんじゃないかという気分になる。
「…由依さんって嘘つきですよね」
「え?」
「本当は元カノさんといたくせに」
「っ…」
ひかるのまさかの発言に私は言葉を失った。
すると、ひかるが急に悲しそうな顔をした。
「なんで否定してくれないんですか、」
「図星ですか…?」
「…ごめん」
私は謝ることしかできなかった。
目の前で泣きじゃくるひかる。
そんな権利私にはないって頭ではわかっていたけど、体が勝手にもう一度ひかるを抱きしめていた。
「こんな時まで優しくせんでよ…」
「…元カノさんのところ行ってください、」
「私は大丈夫ですから…」
「…ごめん、ひかる。ありがとう。」
私は合鍵をその場に置いて家を飛び出し、走りながら理佐に電話を掛けた。
「もしもし?」
「理佐、会いたい」
「今すぐ会いたい」
「私も」
「由依の家行くから、由依は取り敢えず家に帰って待ってて」
「待つなんて嫌だ」
「会いたいもん」
なんてわがまま言ってるんだろう…
理佐は私が危なくないように言ってくれてるのに…
「大丈夫だから」
「待ってて?すぐ行くから」
足音と乱れた呼吸に理佐も走っていることに気付く。
「…わかった」
「ん、いい子」
「また後でね」
「うん」
電話を切っただけ。
それだけなのに一気に寂しさが押し寄せてくる。
私、いつからこんな面倒臭い女になったんだろ…
家に着いて、取り敢えずソファーに座る。
でもそわそわして、全然リラックスなんてできない。
気を紛らわすためにテレビを付けてみたりもしたけど、全然気なんか紛らわせなくて、理佐に会いたくて、触れて欲しくて、頭がおかしくなりそう…
ピーンポーン
「理佐!」
ガチャ
待ち望んでいたその顔を見てすぐに飛び付いた。
どちらからでもなくただ吸い寄せられるようにキスをする。
段々と激しくなってきて頭がクラクラしてくる。
顔を離して、このままベッドに…と思っていたら、急に理佐にデコピンされた。
「インターホンちゃんと見ろ」
「へ?」
「へ?じゃないわ」
「襲われたらどうすんの」
「理佐になら襲われたいけど?」
頭がふわふわしてるせいで大して考えもせず変なことを口にしてしまう。
「もうっ…そういうことじゃなくてさ…」
「私もはやく由依のこと抱きたいけど、その前に」
「ん?」
「私、やっぱり由依が好き」
「セフレとかもう嫌だ」
「私の彼女になって。もう絶対離さないから。」
「うん、いいよ」
「私もおかしくなりそうなほど理佐が好き」
「それより…はやくシよ?」
「雰囲気ぶち壊すな」
「いてっ」
理佐にもう一度デコピンをされてから、ひょいっと抱き上げられる。
今まではベッドの上ではどこか悲しそうな顔をしていた理佐。
でも今は愛おしそうな目で私を見てくれている。
それがどうしようもなく嬉しくて、遠回りし過ぎたけど結局私は理佐のことがどうしようもなく好きで、これが私の望む1番の幸せなんだと今さら気がついた。