テレビの「脱・必需品」化【週刊東洋経済Plus】 | 猿の残日録

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いろんなことがあるが、人生短いから前だけを見たほうがいいですよ。江原啓之 今宵の格言

テレビの世界市場では目下、

韓国のサムスン電子LGエレクトロニクス、そしてソニーが 3強だ。

 

オムディアによると、2020年は売上金額ベースで

サムスンがシェア31.9%で世界首位。次いでLGが16.5%、ソニーは9.1%で3位

世界シェアの約5割をサムスンとLGで独占する。

 

国内では2位で健闘しているパナソニックは、世界で見ると9位、国内3位のシャープも世界10位にすぎない。

 

 

首位を独走するサムスンは、圧倒的なマーケティング予算を投じて液晶の「量子ドットテレビ」をブランド品として確立した。

一方のLGは、テレビ用の有機ELディスプレーを世界で唯一量産しており、有機ELテレビの先駆者として知られる。

 

 

サムスンは液晶パネルを、LGは有機ELパネルを自社で生産する一方、ソニーは自社でパネルを作っていない。

 

ソニーはその負担から解放された分、映像処理エンジンであるプロセッサー「XR」の技術を重点的に磨く。映像の信号からノイズや明暗などを瞬時に判断してシーンごとに最適な映し方を選択し、最終的に出てくる画質で勝負する。

 


ソニーは2012年の平井一夫前社長の就任以降、販路や商品数を大幅に絞り込み、高級機種を中心に展開する戦略に転換。以前と比べて販売台数は減ったものの、テレビ1台当たりの平均単価を高めて売り上げを伸ばしている。

エレクトロニクス事業の利益の大半をテレビが占めたとみられる。

 


 

 

パナソニックは2000年代半ばまで世界シェアで10%以上を誇り、世界トップ3にも名を連ねるメーカーだった。

 

2020年には売上金額ベースの世界シェアでわずか2.6%9位にまで落ち込んだ。1位のサムスン電子(31.9%)や2位のLGエレクトロニクス(16.5%)とは大きな差がついている。


2020年の国内での売上金額ベースのシェアでは、ソニーの26.8%に敗れてパナソニックは2位(21.6%)に転落した。
 

シェア低迷に苦しむ中、パナソニックは事業の収益安定化に向けて抜本的な構造改革を余儀なくされている。2021年4月には、中・小型の液晶テレビの生産を、中国の電機大手でテレビ世界シェア4位のTCLに委託する方向で交渉を進めていることが明らかになった。

 

2016年にはテレビ向けの液晶パネルの製造からも撤退。国内でも人気が高まっている有機ELテレビのパネルは韓国・LGディスプレイから調達し、通常の液晶パネルもすでに外部調達に頼っている

 

 

2015年には国内テレビ出荷台数のうち、50インチ以上の大型品の占める割合は14%にすぎなかった。それが2020年には34%にまで拡大した。大きなテレビは「お金持ちのもの」というイメージが強かったが、今や3台に1台が50インチ以上なのである。

こうした市場の変化の背景にあるのが、テレビの脱・必需品化だ。「日本ではかつて1世帯に複数台のテレビがあったが、今はリビングルームのメインテレビだけが買い替えの対象になっている」。

 

 

 

最近は若年層を中心に、テレビを見ない人が増えた。彼らが見るのはネットフリックスやYouTubeなどの映像コンテンツが中心。地上波放送と異なり、テレビがなくてもスマートフォンなどで楽しめる

 

「スマホがあれば、テレビはリビングに1台で十分」と考える世帯が増加。一家に1台のテレビを買い替えるなら、より大きくていいものを買いたいという需要が強まり、大型化と有機ELのトレンドを生んでいる。

 

日本は1インチあたりの平均価格が約2000円と世界で最も高く、高付加価値化で戦う市場として先頭を行く。価格競争に陥らないため、画像処理や音の表現などに磨きをかけ、その違いが消費者にもわかるように各社がマーケティングに力を入れて訴求してきた結果でもある。

 

 

現在日本で購入されるテレビの平均サイズは43.9インチだが、「家の大きさからすると、65インチぐらいまで伸びる余地がある」