皆さんこんにちは。

理学療法士・鍼灸師の李成浩です。

 

暑い日が続きますが、みなさんお身体はいかがですか?

 

ここまで暑いと熱中症の心配がありますので、水分補給や体調管理に気を付けましょう。

 

特にゴールデンウィークに入りお出かけが多くなりますので、外での活動時にはご注意を…

 

さて今回の整形疾患ブログですが、今回も上腕部に起こる骨折を取り上げます。

 

これは小児に起こりやすいようですので、お子さまがいらっしゃる方は気にかけてあげて下さい。

 

どのような疾患でしょうか。

 

それでは一緒にみていきましょう。

 

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上腕骨には上端(骨頭部)、骨体(骨幹部)、下端があると前回お話ししました。

 

今回は過端部の骨折で、小児の骨折で最も頻度の高い骨折であると言われるて上腕骨顆上骨折です。

 

受傷起点として転落や転倒が多く、肘関節を伸ばしたままであったり、前腕部を内側に回した状態で手をついた場合に、肘頭と言う部分が肘頭窩に強く衝突する事で起こる「伸展型」と、転倒時に肘を強く地面に打ち付けて起こる「屈曲型」とがあるようですが、伸展型の骨折の方が頻度としては多いそうです。

(左が伸展型、右が屈曲型)

また、小児の上腕骨顆上部は骨皮質(骨の表面を構成する硬くて緻密な部分)が薄く、骨の断面積も小さいので、強い力が集中すると折れやすいのです。

 

症状としては、肘の周囲に強い痛みがあり、そのため肘を動かすことができません。

 

受傷から時間が経って骨折部のずれ(転位)が大きいと、皮下に血がしみ出て変色します。

 

合併症として循環障害や皮膚損傷があり、橈骨神経や正中神経の麻痺を合併する事もあります。

 

特に注意しなければならないのは循環障害で、前腕部の阻血性壊死(フォルクマン拘縮)が発生すると重大な機能障害を残すことになります。

(フォルクマン拘縮:前腕部の圧迫や受傷で起こる血流障害で、前腕屈筋群が別の組織に変性し戻らなくなり、手指や手首に機能障害を起こす外傷後遺症)

 

受傷急性期から橈骨動脈の拍動を確認して、循環障害が起きていないか注意を払うようにしましょう。

 

診断は、診察時にどのように受傷したかを聴き、X線写真で骨折部の確認を行います。

ずれの大きい例では、X線写真で容易に診断がつきます。

 

しかし、ずれが殆どない場合には、注意深い診察をしないと上腕骨外顆骨折や肘内障など別の骨折と間違うことがあるそうです。

 

上腕骨顆上骨折は3つのタイプに分けられており、Gartlandの分類を用いることが多いです。

<Gartlandの分類>

typeⅠ:転移が全くないか、ごく軽度のもの

typeⅡ:折れ曲がっているが、一部の骨皮質に連続性が残っているもの

typeⅢ:完全に転移してしまっているもの

 

typeⅠのほとんどズレのない骨折の場合はギプス固定を3~4週間することで治癒することができます。

両肘のBaumann(バウマン)角が10度以上の差があった場合、整復してピンニング治療を施します。

Baumann角(図)

①上腕骨長軸に線を引く。

②長軸に対し水平線を引く。

③外顆部の成長軟骨に水平線を引く。

②と③で作られる角度をBaumann角と言います。

正常値:約20°(10°~20°)

 

typeⅡの場合は整復が簡単で、キルシュナー鋼線による経皮的ピンニングで肘関節を90度屈曲した状態を保ちます。

一般的に4週間くらいで改善が見られ、抜釘ができます。

(経皮的ピンニング:切開をせず、皮膚の上から鋼線を刺入し、骨折片を繋ぐ。)

 

typeⅢの場合、骨以外の軟部組織の損傷も見受けられる場合が多く、神経損傷や循環障害を注意深く評価しなければなりません。

骨折の治療は非観血的整復と経皮的ピンニングで治療していきます。また腫れが強い場合は牽引を行う場合もあります。

 

さて、リハビリに移る際には現在の状況を判断するため評価をします。

 

まず診療記録から外傷の程度、合併症の有無、検査所見、処置内容など情報収集を行い、経過を確認します。

 

患部に炎症症状(熱感・腫脹・発赤など)、神経損傷の有無、関節可動域や筋力、日常生活動作に障害が無いかなども確認します。

 

肘関節の内反変形の有無を確認するため、carrying angle(運搬角・肘角)を測定します。

また、先ほども出ましたがフォルクマン拘縮が起きていないかを確認するため、痛みや感覚異常、麻痺、橈骨動脈の拍動は頻回に確認します。

 

リハビリは患部を固定中であっても、他の骨折同様運動を行います。

 

関節の動きを伴わない等尺性運動、骨折部から遠い手や手関節、前腕、肩関節の運動を行う事で、循環改善や筋萎縮予防に影響します。

 

ギプスや固定していた鋼線を抜いた後、早く日常生活に戻るためでもあり、日常生活に支障がないようにするためにも早期から開始することが重要ですね。

 

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いかがでしたでしょうか。

 

小児に起こりやすいと言っても、成人以降に起こらないわけではなく、どの年代にも起きることのある疾患です。

 

普段の生活であまり起こしたくない転倒や転落で起きる可能性のある骨折ですので、気を付けましょうね?

 

次回も肘関節周囲の骨折を取り上げます。

 

それではまた来月…