皆さんこんにちは。
理学療法士・鍼灸師の李成浩です。
3月になり、だいぶあたたかくなりましたね。
ついこの間まで寒い寒いとふるえてたのがウソのようですが、この時期は暖かくなったり冷え込んだりコロコロと変わりますので、服装の選択にはご注意ください。
今日みたいに嵐になってしまう事もありますからね…(;^_^A
さて、今回お話しする疾患ですが、前回骨折について少しお話しいたしましたので、上肢の骨折を取り上げようと思います。
しばらくシリーズのような感じで続けていきます。
今回はどんな疾患でしょうか。
それでは一緒にみていきましょう。
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さて、久々に更新しましたこの整形疾患ブログですが、腕の骨折についてお話しします。
以前高齢の方の骨折例として「コーレス骨折」をお話ししたと思います。
今回の「上腕骨近位端骨折」もその内の1つです。
なぜ高齢者がこの骨折になりやすいか。
例えば、転倒する際に体を支えようと手を出してしまうと思います。
地面に手をついた時に肘を曲げて、その衝撃を分散できれば良いのですが、なかなかうまくできず、手から伝わった衝撃が上腕骨骨頭付近を骨折に導いてしまうようです。
この骨折の症状として、もちろん強い痛みがあります。
その他合併して、神経損傷や脱臼を起こすことがあります。
また、分離した骨折片がうまく癒合せず、あたかも関節のような動きをしてしまう「偽関節」や、癒合してもうまく形成されず変形してしまうこともあります。
上腕骨近位端骨折の分類として、「Neer分類」が用いられることが一般的だそうです。
この分類は、骨折片の1cm以上の転位および45°以上の角度変形があった場合に「転位のある骨折」としています。
また、転位を起こした骨折片の数により、2-part骨折、3-part骨折、4-part骨折と分類され、各骨折に脱臼があった場合のことも記されています。
4つのpartとは、上腕骨近位部にある部位のことを示し、骨頭(解剖頸)、大結節、小結節、骨幹部(外科頸)のことを示しています。
画像所見はもちろんX線を用いますが、外傷シリーズ(trauma series)と呼ばれる「正面像、肩甲Y像、軸写像」の3つが最低限必要だそうです。
しかし、3or4-part骨折では転位の方向や距離がわかりにくいため、3D-CTの画像診断が有効だそうです。
それでは、それぞれの治療に関して見ていきましょう。
<1-part骨折>
1-part骨折は保存療法が適用となります。
転位の少ない骨折であり、この上腕骨近位端骨折の約80%を占めており、さらに外科頸の骨折は高齢で骨粗鬆症の方がなりやすいそうです。
1~2週間三角巾と弾力包帯で内旋位で体幹に固定し、その後振り子運動から徐々に動かしていきます。
この時に禁止される運動は、肩関節の回旋が入らないよう注意しないといけません。
4週頃に仮骨の形成が見られるので、他動での軽い運動や筋力トレーニングを開始します。
<2-part骨折>
2-part骨折も主に保存療法が用いられ、転位や角度変形が強く整復が困難な場合は手術が適応となります。
保存療法で行う場合は、外科頸の骨折は全身麻酔下で整復した後に、Desault(デゾー)包帯もしくは三角巾と弾性包帯で固定します。
長時間仰向けで寝られる場合は、肘から針金(キルシュナー鋼線)を入れて骨片を直接牽引する方法もあるそうです。
固定した後4~5週の臥床安静が必要ですが、は徐々に肩関節を内外旋0°であるゼロポジション(整列の「小さく前へ倣え」のポーズ)方向に変更していきます。
手術の場合は、整復が困難な場合に行われます。
髄内鋼線や髄内釘、Rushピン、rockingプレートなどを用いて、骨幹部と骨片を固定します。
いずれの場合も術翌日から振り子運動(コッドマン運動)を開始し、3週目から自動運動、5~6週で骨の癒合が得られれば、セラピストによる他動可動域運動や、肩関節を動かさない等尺性(アイソメトリック)の筋力増強運動が行われます。
高齢者では関節の可動域を無理に広げるのではなく、日常生活に支障のない程度、つまり洗髪動作や腰の後ろまで手が回る程度を目標として、リハビリを行います。
次からの3or4-part骨折では手術適応のみとなっているようです。
<3-part骨折>
外科頸と大結節の骨折が多く、そこに付着する筋肉の牽引力で骨片の転移大きいため、手術にて整復・固定されます。
術後リハビリテーションは、2-part骨折の術後リハビリと同様に進行されます。
<4-part骨折>
高齢者や脱臼骨折では人工骨董置換術が行われます。
術後のリハビリは、Desault包帯固定を1週間、三角筋で下方への牽引力を制限したうえでの振り子運動、2週間後肩関節を前方に90°まで自動介助(自力+他力)運動を行います。
肩甲下筋という筋肉の再癒着を行っているので、3週後までは90°以上の屈曲と外旋の動作は禁止されます。
しっかりと癒着しないうちにこれらの運動を行ってしまうと、筋肉の停止している部分から剥がれてしまい、再度手術が行われることになります。
4週後からは軽い筋力強化運動や、セラピストによる他動運動が行われます。
5週目以降に肩甲下筋の癒着がみられるようでしたら、少しずつ肩関節の外旋ストレッチや内旋方向の筋力強化を行い、日常へ戻れるようにしていきます。
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いかがでしたでしょうか。
転んだときに手をついてしまうのは反射的に行われてしまいますが、その結果衝撃が突き抜けて手から離れた場所に骨折が起きてしまいますので、普段から転倒しないように注意しましょうね?
さて、ここまで読んでいただいた方に、今回は一つクイズを出します。
この答えは次回のブログ更新に掲載しますが、一ヶ月考えてみてください。
単純なことですので、わかる方はすぐにわかってしまうかもしれませんが、お付き合いください。
「長距離走者と短距離走者。同じ『走る』スポーツをする人ですが、身体の使い方で明らかに違う部分が有ります。そこはどこでしょう?」
ヒントは「用具」です。
正解したからと言って、特に何かあたるわけではありませんが、次回の更新までの楽しみとして考えてみてください。
それでは「整形疾患ブログ」、次回をお楽しみに。