皆さんこんにちは。

理学療法士・鍼灸師の李成浩です。

 

2週にわたって土日に台風が来るとは…

 

秋が来て、穏やかな気候を期待していましたが、先週は穏やかとは言い難い荒れた天気になってしまいましたね?

 

今週は暖か…

 

…を通り越して日中は暑いくらいでした。

(υ´Д`)アツー

 

まだまだ変動が激しい日が続きますので、みなさんお体に注意しましょう。

 

さて、今回ご紹介するのは、外傷や骨折後に起こり得る、ある症候群をとりあげます。

 

どんな病気なのでしょうか。

 

それでは一緒にみていきましょう。

 

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今回紹介する疾患名は「フォルクマン(Volkmann)拘縮」という、以前紹介した上腕骨顆上骨折や前腕部の骨折など、外傷後に生じやすい阻血性拘縮です。

 

また、前段階として外傷や圧迫などによる急性な虚血、阻血によるコンパートメント症候群(compartment syndrome)の結果の拘縮であると言われています。

 

横文字が2つ出てきました。

 

まず、コンパートメントとは何ぞやという所からみていきましょう。

 

コンパートメントとは、直訳で区域や区画と訳されています。

 

人体にあるコンパートメントは前腕(肘関節から手関節)と下腿(膝関節から足関節)の2か所に存在しています。

 

今回は前腕部のコンパートメントについて説明します。

 

前腕部(肘から先)には2本の骨(橈骨、尺骨)とそれを覆うように筋肉や脂肪組織、皮膚と様々な組織が組み合わさって構成されています。(下図)

また、2本の骨の間には前腕骨間膜という靭帯結合で連結しています。

(下図 青色で囲った部分)

このうち骨、骨間膜、筋肉で区画ごとに分けられ、掌側(屈筋)コンパートメント背側(伸筋)コンパートメント橈側コンパートメントと、3つに分けることができます。

掌側には主に手関節と指の屈曲(曲げる)、背側と橈側には手関節と指を伸展(伸ばす)する筋肉が存在しています。

 

このコンパートメント内の圧力が何らかの原因で高まり、血行が悪くなることで筋肉の壊死が始まることコンパートメント症候群と呼ばれ、そのうち掌側コンパートメントに起こるものを、フォルクマン拘縮と呼ばれるそうです。

 

この「何らかの原因」というのは、実は筋肉内の浮腫によるコンパートメント内圧力の上昇というのが原因で、

①外傷により動脈の閉塞

②毛細管(血管の一部)の透過性上昇

③体液の漏出により、筋肉内で浮腫発生

の機序によって発生します。

 

そこからさらに小血管の閉塞を引き起こしてしまうと、その先にある筋肉を栄養することができなくなり、筋肉の阻血性壊死が進み、最終的に瘢痕化(壊死した組織が、別の結合組織に置き換わってしまう)してしまいます。

 

こうなってしまうと、筋肉は収縮したまま固まってしまい、

肘関節屈曲

前腕回内

手関節屈曲

MP関節伸展

PIP関節屈曲

母指屈曲内転

と、下図のような特有の肢位を取ることになってしまいます。(手指の変形は以前紹介した鷲手に類似)

この変形の初期は、徒手的に矯正することができるようです。

 

しかし慢性化してくると、筋肉の不均衡や関節可動性低下によって二次的に関節包や靭帯、皮膚の硬縮が発生することにより、徒手矯正が困難な変形が完成してしまいます。

 

典型的な拘縮に至るまで不可逆的(戻ることの無い)に進行することが多く、正中神経や尺骨神経にも圧迫麻痺を生じることが有り、機能回復がきわめて困難となります。

 

この拘縮で最も損傷を受けやすいのは、前腕の深層にある深指屈筋と長母指屈筋で、次いで浅指屈筋や手関節屈筋群も損傷されやすいそうです。

 

この疾患を検査する方法として、5P徴候というものが有ります。

 

Pain:疼痛

Pallor:指尖蒼白

Puffiness:腫脹

Pulslessness:末梢の拍動消失

Paralsis:運動麻痺

の5つの頭文字Pを取ったものです。

 

コンパートメント内圧を調べる方法もあり、通常であれば8mmHg程度の圧力が、40mmHg以上の内圧が発生しているとコンパートメント症候群と診断されるそうです。

 

この疾患は予防がとても重要で、骨折や挫傷、腫脹の始まっている部分へのギプスやシーネを用いて固定する場合、常にこの疾患が起こることを念頭に置いておくべきものです。

 

発生したと確認されれば、まずは固定の解除と血行改善の処置を行い、3~5時間以内に回復徴候がみられない場合、前腕の筋膜の切開を行う事で、コンパートメント内の圧力を減圧するとのことです。

 

拘縮が発生してしまった場合は、手術にて壊死組織を除去、拘縮した組織の切離と腱の延長、筋解離術、腱移行術、遊離筋肉移行術などが有ります。

 

術後は、各関節を適切な肢位に保ちギプスで固定した後、心臓より高い位置に挙上することで、循環改善に努めます。

 

固定が取れた後は再度拘縮しないように装具の装着や、運動療法によって筋肉の増強や関節の可動域を十分に獲得できるようにします。

 

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いかがでしたでしょうか。

 

外傷は誰でも起こることとはいえ、二次的に起こり得る疾患として注意したいものですね。

 

一度拘縮が起きてしまうと、元に戻るまでに時間がかかることはおろか、元に戻らないことも考えられますので、外傷後や固定中の自分の腕や足には気を付けましょう…

(;^_^A

 

それでは、また2週間後…