皆さんこんにちは。

理学療法士・鍼灸師の李成浩です。

 

台風が過ぎ、気候がだいぶ秋めいてきましたね。

 

自分語りになりますが、最近引っ越しました。

 

ちょっと事情があり引っ越すことになりましたが、ひと悶着ありましてこの間までバタバタしておりました。

 

片づけも終わりやっと一息ついたところです。

 

今回はその新しいお部屋からお届けいたします(笑)。

 

さて、前回のブログですが、3つの神経障害による疾患をとりあげましたが、今回から肘周囲に焦点をあてていきたいと思います。

 

軽く疾患名だけ取り上げたことはありましたが、詳しくみていくことにしましょう。

 

さて、今回はどのような病気なのでしょうか。

 

それでは一緒にみていきましょう。

 

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今回取り上げるのは、上腕骨外側上顆炎です。

 

肘の外側に痛みを発症する、有痛性の関節疾患です。

 

まず、「上腕骨外側上顆」というのはどれなのかという所から見ていきましょう。

人体を正面から見た場合、上腕骨の遠位端(末端)の外側にある顆(つぶ)状に膨らんでいる部分があると思います。

 

そのふくらみの部分を上腕骨外側上顆と言い、反対の内側にあるものは上腕骨内側上顆と呼ばれます。

 

さて、この上腕骨外側上顆は何のためにあるのかというと、前腕部(肘~手首)を伸ばしたり手を外へ回す動きを担う筋肉の起こるところです。

上腕骨外側上顆から起こる筋肉

①長橈側手根伸筋

②短橈側手根伸筋

③総指伸筋

④小指伸筋

⑤尺側手根伸筋

⑥回外筋

 

では、なぜこの場所に炎症が起きてしまうのかを考えてみましょう。

 

この炎症が起きた方は、「タオルを絞れない」「飲み物をコップに注げない」「重いものを持てない」と訴えることが多いようで、簡単に書くと「使いすぎたことによる炎症」が起きていると考えられます。

 

この障害の詳しいことをみていきましょう。

 

発症する年代として30代後半から50代にかけて多く、若年層では少ないそうです。

 

主な原因としては、短橈側手根伸筋(ECRB)腱の付着部である外側上顆で炎症、変形、腱線維のmicrorupture(微細断裂)などが考えられています。

 

先程挙げた6つの筋肉は、手に重いものを持つ(grip動作)時に手関節のstabilizer(スタビライザー:安定させるもの)としての能力を発揮するため、重量物を持った際に手関節が垂れ下がらないように引っ張ります。

 

すると筋肉は伸びた状態で縮むという、見た感じ正反対の動きをします。

これをEccentric contraction(エキセントリック・コントラクション)、日本語では遠心性収縮や伸張性筋収縮と呼ばれます。

 

筋収縮のなかでも一番負荷の高いと言われていますが、この収縮が常に起きていると想像してみてください…

 

筋肉の付着部で腱に強い牽引力(引っ張る力)がかかりますので、炎症・断裂・変性が起きることは、想像し易いと思われます。

 

そしてこのエキセントリック・コントラクションが起きる動作というのが、日常の中にとても多く、意識していなくても起こしてしまう動作です。

 

その動作が先程述べた痛みを訴えるときの動作で、「タオルを絞れない」「飲み物をコップに注げない」「重いものが持てない」などの動作です。

 

また俗称もありまして、テニス肘とも呼ばれます。

 

その中でもバックハンドでボールを打ち返す動作が、エキセントリック・コントラクションを引き起こすため、バックハンドテニス肘とも呼ばれます。

特にテニス初心者によく起きるようで、ラケットを強く握り、手関節を手のひら側に曲げ、球を打ち返すときにさらに曲げながら振り切ろうとするため、肘に強い負荷がかかり痛みを起こしてしまうという事だそうです。

 

 

この上腕骨外側上下縁の診断基準として、以下の三つが挙げられます。

①     抵抗性手関節背屈運動で肘外側に疼痛が生じる

②     伸筋群起始部に最も強い圧痛がある

③     腕謄関節の障害など伸筋群起始部以外の障害によるものは除外する

とあります。

 

文章を見た感じ、わかりにくいと思います。

 

①は手首に対して手のひら側に曲げる力を掛けて、それに抗うように手首を伸ばす動きをしてみてください。

 

肘の外側にすごく力が入っていることがわかります。

 

炎症が起きていると、この動きをするとこの部分に痛みが出ますという事です。

 

②はそのままで、筋肉の始まる部分である外側上顆を押すと痛みが出るという事です。

 

③は外側上顆部ではなく、他の部位に障害が有る場合は、別の診断が下されるという当たり前のことですね。

 

次に検査を行いますが、ストレステストと言って負荷を掛けて行われるテストで、痛みを誘発してどこに痛みが起こるかを検査します。

 

実際にやってみるとわかりますが、痛みのない方でも突っ張る感じが認識できると思います。

 

テスト方法は次の3つです。

①     Chair test(チェアーテスト)

②     Thomsen test(トムセンテスト)

③     Middle finger extension test(中指伸展テスト)

①は手のひらを地面に向け、肘を伸ばしたままで椅子をつかみ持ち上げると、肘の外側に

痛みが誘発されます。

 

②は肘を伸ばし手を内側に回して握り拳を作り、手首を伸ばします。

その状態から検者が手を掌屈(手のひら側へ曲げる)させると、先ほどと同様に痛みが誘発されます。

 

③は手を内側に回すまでは同じですが、指を伸ばしたままにします。

被検者は曲がらないように伸ばす方向へ力を入れ、検者は手のひら側へ中指を曲げようと力を入れます。

するとこちらも同様に痛みが誘発されます。

 

どれも検者の力に負けないように抵抗することで、痛みが起こる動作を再現しています。

 

あまり痛みが強いようですと、被検者が力を入れたときに痛みが出るようですが…

 

次に治療に関してですが、急性期には炎症症状が起きていますので、アイシングと十分な休養を行うようにします。

 

アイシングは1回あたり20分程度として、熱感が戻るころ再度行うようにすることで、腫れの改善を図ります。

 

休養面では、痛みが起こる動作がどのようなものなのかを理解してもらう事や、筋肉の安静目的にコックアップスプリント(cook-up sprint:整形疾患ブログ⑦参照)が処方されることもあります。

 

急性期を過ぎ、痛みが徐々に落ち着いてきたころから、筋肉や腱が硬くならないようにレーザーやホットパックで温めたり、ストレッチを行います。

ストレッチは2~5指の付け根を包むように握り込み、手首を軽く曲げながら肘を外へ回すことで、対象となる筋群を伸ばすことができます。

 

その後強く握り込む動作で痛みが出なくなりましたら、徐々にダンベルなどを用いた運動に切り替え、手首を伸ばす力を強くしていきます。

 

また痛みが出るのを防止するため、「テニス肘バンド」というものが有りますが、筋肉の収縮が筋付着部に直接伝わるのを防ぐために使われるようで、筋肉の肘から3横指ほど遠い場所に巻くようにします。

 

炎症疾患は熱感、腫脹、発赤、疼痛、機能障害という5大徴候が有りますので、それらへの対処を行い炎症症状を鎮静化させた後に、今度はしっかり動かせるように運動を行う事が治ることへの道筋と考えられるでしょう。

 

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いかがでしたでしょうか。

 

この上腕骨外側上顆炎のように、スポーツで特徴的に表れる疾患がまだまだあります。

 

それらは今後登場すると思いますので、お楽しみに。

 

…疾患のことですから、あまり楽しみにしたくないですね…

 

それでは、また2週間後…