皆さんこんにちは。

理学療法士・鍼灸師の李成浩です。

 

 

少し期間を開けてしまいましたが、再開します。

 

ちょっとプライベートなところで手が離せませんでした…

(´・ω・`)

 

 

それはさておきまして…

 

 

今回の「整形疾患ブログ」ですが、前回に引き続き手に起こる疾患をとりあげます。

 

今回も「管」がでてきます。

 

どのような病気なのでしょうか。

 

それでは一緒にみていきましょう。

 

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さて、前回は手根管に起こった疾患を取り上げましたが、今回はギヨン(ギオン)管症候群という名称の疾患です。

 

この疾患も何らかの原因により神経に圧迫が起きることで障害を起こすという疾患です。

 

ギヨン(ギオン)管は手根骨の豆状骨と有鉤骨鉤、筋肉や靭帯では屈筋支帯・掌側手根靭帯・短掌筋で構成され、尺骨神経と尺骨動脈が通る管状になっている部分です。

前回の手根管症候群では手根管を通る正中神経の圧迫が発生しておりましたが、ギヨン管は尺骨神経が通る為、圧迫・絞扼部以降の手部に症状が出現した場合「ギヨン管症候群」と呼ばれます。

 

この疾患の症状ですが、

①限局した手指の痛み・しびれ

②筋力低下・筋萎縮・変形

③運動・ADL(日常生活動作)障害

と手根管症候群と似ております。

 

この疾患もどんな方にも発症する事があり、ギヨン管周辺組織の変形・変性(老化や過用など)、ガングリオン(ゼリー状の物体が入った腫瘤)、外傷や骨折による絞扼・圧迫など様々です。

 

絞扼・圧迫による神経症状を起こしますが、症状により

①     運動・感覚療法に障害があるもの:TypeⅠ

②     運動障害のみのもの        :TypeⅡ

③     感覚障害のみのもの        :TypeⅢ

と分類されるそうです(Shea分類)。

 

症状は小指と環指(薬指)に起こり、先に説明した通り痺れや筋力低下などが起こります。

 

ただ、感覚(知覚)障害は手掌側の指付近に出る事はありますが、指先の動かしにくさという運動障害の訴えの方が臨床上多いそうです。

※尺骨神経の支配する皮膚領域

 

そして前回同様に神経圧迫が長く続くと、尺骨神経が支配する手内在筋と言われる手関節より先にある筋肉(主に小指球筋)の筋力低下が発生します。

※尺骨神経の支配筋(手内在筋の一部)

小指球筋

小指外転筋

小指対立筋

背側骨間筋

掌側骨間筋

母指内転筋

短母指屈筋

第Ⅲ・Ⅳ虫様筋

 

 

筋力低下と筋萎縮、変形の経緯は前回と同じですので、ここでは省きます。

 

この尺骨神経麻痺による変形で特徴的なものとして、「鷲手(claw hand)」「かぎづめ(鉤爪)状変形」と言われるものがあります。

小指球筋や骨間筋が萎縮したことで小指球を維持できず平坦になり、指の根本の骨(基節骨)が手背側に引かれ、指先の中節・末節骨は手のひら側へ曲げてしまう為、かぎづめのように見られることから、この名前が付けられたようです。

 

このギヨン管症候群でも様々なテストを行い、他の疾患と鑑別されます。

 

皮膚感覚の異常を確認するためには、前回と同じチネル徴候での確認を行います。

 

Froment(フローマン)サイン(両手の母指と示指で紙をつまみ、反対方向に引っ張る時に母指の第1関節が曲がれば陽性)が陽性になれば診断がつきます。

また視覚的な鑑別として、手内在筋の筋萎縮による母指球筋以外の筋萎縮とかぎ爪変形があれば、ギヨン管症候群の疑いが強くなります。

 

治療には手術と保存療法が選ばれますが、早期に除圧術(原因を取り除き、神経への圧迫を除くこと)が行われ、鷲手変形や母指内転動作に対する機能再建術も同時に行われるようです。

 

術直後は浮腫予防の為に患側上肢を拳上したり自力で関節を動かしてもらい、手術部周囲の癒着防止の為にマッサージや関節可動域訓練、温熱療法を加えながらのストレッチを徐々に行います。

 

鷲手変形や関節拘縮の予防に対しては、MP関節屈曲補助装具「ナックルベンダー」が処方されます。

自力で関節を動かす際に注意しなければならないのは、目的とする運動ができないからと、別の筋肉を使いごまかしながら行う運動(代償運動)です。

 

これを行うと鍛えたい筋肉を使わないばかりか、動かしたい関節を動かさないので固まったり、別の筋肉を使いすぎてしまい痛みが起こる可能性があります。

 

また、前回同様日常的によく使う部分ですので、症状緩和に伴いたくさん動かすことで再発する事もあるので、日常生活の指導も行います。

 

よく使う手のことですので、安静にするだけではなく普段の生活様式の見直し、動かし方を変更するなど、患部に負担のかからない動きを行えるようにしたいですね。

 

 

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いかがでしたでしょうか。

 

前回と似たところの多い疾患でしたが、走行している神経や支配される筋肉の違いで、ここまで症状が変わるものですね。

 

仕事で使う大事な手ですので、無理しないように気を付けます…

 

それでは、また2週間後…?