皆さんこんにちは。

理学療法士・鍼灸師の李成浩です。

 

梅雨が明けたのかあけていないのかわかりにくい天気が続きますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?

 

今月もそろそろ終わろうとしていますが、局地的に大雨が降り、河川が氾濫・大洪水が発生するという事態が起きてしまいました…

 

この災害で命を落とされた方も多く、避難生活を余儀なくされている方も多く、一日も早い復興を願っています。

 

さて今回の「整形疾患ブログ」ですが、手首に起こる疾患をとりあげます。

 

よく使う「手」に起こるこの疾患ですが、痺れや痛み、果てには筋肉の委縮が起きるそうです。

 

どんな病気なのでしょうか。

 

それでは一緒にみていきましょう。

 

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手根管症候群という名前を聞いたことはあるでしょうか。

 

何らかの原因により手根部の圧迫が起きることで、そこを通る筋肉や神経に障害を起こすという疾患です。

 

始めて見られた方は「手根管ってなに?」と思いますので、まず手根管から見ていきましょう。

 

字から見て分かると思いますが、手の根っこにある管の様な部分で、その構成するものは骨と靭帯です。

 

骨は計8つで手根骨と呼ばれ、一つひとつは小さく2列に並んでいます。

 

遠位列:有鉤骨  有頭骨  小菱形骨 大菱形骨

近位列:豆状骨  三角骨  月状骨  舟状骨

(右手手根部)

 

手のひら側には蓋をするように靭帯性のもので覆われていますが、これは屈筋支帯と呼ばれます。

 

この屈筋支帯は手根骨の内と外の隆起に付着しており、下図のように手根部に蓋をしています。

 

 

屈筋支帯は手根骨の配列を維持するとともに、浅・深指屈筋腱が滑動する時の滑車の役割をするとともに、県の浮き上がりを防止する役割を持っています。

 

さて、この手根管を通って手の運動を行う筋肉の腱と神経が走行していますが、

浅指屈筋腱

深指屈筋腱

町母指屈筋腱

正中神経

の4つです。

 

 

手根管とそこを通る筋・神経が分かったところで、今度はここで発声する手根管症候群の話に戻しましょう。

 

まず、この疾患の症状ですが、

①限局した手指の痛み・しびれ

②筋力低下・筋萎縮

③運動・ADL障害

と言うところでしょうか。

 

この疾患もどんな方にも発症する事があり、中高年女性に高頻度に発症する原因不明の特発性や、手をたくさん使う仕事に従事する方、他の疾患に随伴し発症するものなど、その発症契機は様々です。

※他の疾患

骨折後、腫瘍、リウマチ、糖尿病、腎疾患、痛風など

 

初期は中指の痺れから始まる事が多く、徐々に隣接する指に広がっていきます。

 

その範囲は母子内側~環指(薬指)に至りますが、これは手根管を通る正中神経に対する圧迫が原因で、正中神経が支配する感覚と運動神経の領域と一致します。

 

痛みや痺れは夜間や明け方に強く出現する事が多く、その症状で目が覚めてしまう事もあるそうです。

 

この神経圧迫が長く続くと、正中神経が支配する手内在筋と言われる手関節より先にある筋肉(主に母指球筋)の筋力低下が発生します。

 

正中神経の支配筋(手内在筋の一部)

・短母指外転筋

・母指対立筋

・短母指屈筋

・虫様筋

※このうち短母子屈筋と虫様筋は一部支配。残りは尺骨神経支配

 

筋力低下の経緯は簡単に説明しますと、

  1. 手根管内の圧力が上昇

  2. 浮腫の発生

  3. 更なる圧力上昇

  4. 局所的に血流低下(虚血)

と言う経緯によるものです。

 

更に進行すると神経線維の破壊、変性と言った経緯をたどり、最終的に神経の機能異常に陥ります。

 

筋肉は血液によって栄養されていますから、その血流が減少してしまいますと栄養不足により徐々に筋力が低下してしまいます。

 

その状態が長く続くと筋肉の萎縮が起こり、特徴的に表れる変形が起こりますが、手の表面がひらぺったくなってしまう「猿手(ape hand)」というものになってしまいます。

 

これは先に説明した正中神経が支配する筋肉が萎縮した場合、母指の内転を強制し、手のひらが平坦になってしまう状態です。

 

こうなってしまうと手の運動の一部が出来なくなってしまいます。

 

その運動は対立運動と言い、母指と示指の先でつまむ動作の事を言いますが、洗濯バサミや細かい物をつまむことが困難になります。

 

指先でつまむことができないため、代償動作として指の側面や指腹でつまむようになります。

 

また母指と示指で丸(OKサイン)を作れなくなり、涙のような形しか作れなくなり、それをTear drop sign(ティアードロップサイン)と呼びます

(左が正常、右が症状発生時)

 

これは手根管症候群のテストでも行われる物です。

 

他にもPhalen(ファレン)テストやティネルサインと言われるテストで検査します。

 

Phalen(ファレン)テストは両手関節を曲げ、手背同士を合わせます。

 

その状態ですと手根部の圧迫を起こしますので、手根管症候群では症状が強く出現します。

 

ティネルサインは正中神経の走行上を指や打鍵器で軽く叩くと、指先にしびれや痛みを引き起こします。

 

これらのテストを行い、他の疾患との鑑別を行い手根管症候群と診断された場合、その治療が行われます。

 

また長いと怒られました(T▽T;)ので、⑤の2に続きます…