
名護市立図書館で借りた
「日本の名詩100」
に出ていた小野十三郎の詩「犬」。
「犬が口を開いて死んでいる。
その歯の白くきれいなこと。」
わずか2行の短い詩。
その情景が鮮やかに浮かび上がる。
この犬が小野氏の飼い犬なのか、近所の犬なのか、
野良犬なのかは不明だけど、
「この犬は、どう生きたんだろう?」
「幸せに生きられたのかな?」
「飼い主に捨てられた?」
「どうして死んだ?老衰?病気?餓死?」
いろいろ考えてしまう。
発見者も、思わず手を合わせたに違いない。
その後、亡骸はどう処理したんだろう?
人間社会と、自然の摂理に思いを向けさせる、
鋭くて深い内容の短い詩。
「詩とは物の語りを聞くこと」
だとするなら、
短くとも、この詩は
「名詩100」に選出されても異存はない。
小野十三郎(とおざぶろう)は1903年(明治36年)、大阪に生まれた。
日清戦争が終わり(1895年)、日露戦争(1904年)に向かう時期で、
欧米の列強諸外国に対抗するため、
富国強兵と殖産興業をスローガンに、日本を強くしている時代。
年齢的には、「放浪記」の林芙美子、
時代劇小説の山本周五郎とは同年生まれ。
詩人では、中原中也より4歳上、宮澤賢治より七歳下にあたる。
1910年代から1920年代の(概ね大正年間)に起こった、
政治・社会・文化の各方面における民主主義の発展、自由主義的な運動、
風潮、思潮の総称・大正デモクラシーと口語自由詩運動の中で詩を書き始め、
軍国主義下では言論の自由が圧殺された時代を生き抜き、
昭和を超えて平成まで長生きした(1996年、平成8年、93歳で没)。
中原中也や宮澤賢治は多くの研究対象になっているが、
小野は没後20年しか経っていないので、
中原や宮澤と同時代の詩人なのに、注目度が低い。
rareな詩人を発見した!