ハイサイ、RIN(凛)です。

琉球犬、縄文犬、トゥラー、天然記念物、沖縄、

 
ウチナーンチュは、
「上等さ~」
「上等だね~」
「コレとっても上等だね~」
「OK!上等、上等!」
など、やたらと「上等」という言葉を口にする。
「なんでも上等さ~」
という人までいる。

本土では、20~30年くらい前だったかな、
暴走族が
「ケンカ、上等!」
みたいなことを言ってるのを
映画かTVドラマで観たことがある。
私が聞いたのはこれが最後。

ウチナーンチュは、このフレーズは使わず、
「たっくるさりんどー!」
と言うのが、喧嘩のセリフらしい。
意味は
「ぶっ殺すぞ、この野郎!」
みたいな?

となると、
今日もRIN(凛)君は私の長靴やサンダルを咥えて数百mも逃走。
「ボクを構わないと、こういう羽目に遭うのさ!」
とバカついて逃げ回り、捕まえるまで小一時間もかかってしまった。
「たっくるさりんどー!」
は、ヤツに言うセリフだね。


本土での「上等」は、
昔の不良の喧嘩の決まり文句みたいな使われ方だったけど、
最近は本土でもほとんど使われない、死語のはず。

本来は、「上等」とは、「良い」とか「すばらしい」などの意味だから、
もっと使われてもいい言葉なのに、これが死語なんて、なんか変だよね。


ウチナーグチの「上等」は、
単純に、モノのグレードが良いかどうかというだけではなくて、
かなり広範囲で使われている。

とにかく、普通より良ければ、何でも「上等」であり、
食べ物でも人の性格でも仕事でも、
「いいんじゃないの~」
みたいな意味で、何にでも使える便利な言葉で、
沖縄方言の定番中の定番、と言ってもいいのかもしれない。


名護市のヘリオス酒造の、沖縄のテレビCMに、
「普通の上等」
というのがある。

ウチナーンチュは意味が判るんだろうけど、
「普通だけど、いいものだよ」
という意味なのかな?

これは、
「轟(とどろき)」
という泡盛についてのCM。

沖縄自動車道の終点「許田(きょだ)」から国道58号線を名護市街に向かうと、
許田道の駅を過ぎて数キロ進むと「数久田(すくた)」の信号がある。
この信号を右折して、数久田集落内の道を2,3km道なりに進むと、
たしか突当りが「轟の滝」。
私は2回、行ったことがある。

古くから水の都とうたわれる名護の、
この「轟の滝」にちなんで名づけられた泡盛が「轟」。

「轟」の定価はたしか1300円くらいのはずだけど、
沖縄のスーパーでは1.8リットルの1升瓶や紙パックが
税別で950円前後で買えるはず。
沖縄で一番売れている泡盛「久米島の久米仙」は1000円以内では買えないから
なので「轟=安い泡盛」のイメージでウチナーンチュには浸透してるはず。
泡盛の味は48酒造所、どこのでもそう変わらないから、安いのでいいんだよね。


「轟の滝」は、滝の高さ約28m、滝壷の幅約6m、深さ約1.5m。
久志岳と辺野古岳の間を流れる川を水源とした、
こじんまりとした滝。
本土の滝と比べると、沖縄の滝は迫力に欠け、水量も少ないけど、
沖縄には滝自体の数が少ないこともあって、
霊験あらたかで荘厳(そうごん)に見える。

ヘリオス酒造の泡盛「轟」は、
沖縄復帰の1972年(昭和47年)の翌年に廃業した名護酒造所の泡盛を、
2000年(平成12年)になって、27年ぶりにリバイバルさせ、
ラベルも当時のレトロ調なデザインのまま仕上げたらしい。

名護市を中心とした本島北部では、
「轟」ブランドは愛着があるブランドなのだろうね。
私が沖縄に移住したのは1999年だから、そういう事情は知らず、
私はただ安い泡盛、という認識しかなかった。

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沖縄では、小さな集落ごとに豆腐店、みそ店、酒造所などがあったらしく、
酒造所は沖縄には現在でも48もある。
酒造免許は国税庁が担当し、
試飲サンプルすら生産量に含まれる小うるさい制約が多々あり、
沖縄の酒造所のほとんどが赤字。
もし廃業したら、酒造免許は取り上げられ、
新規発行は黒字化の根拠を示さないと発行しないらしいから、
泡盛酒造所は、減ることはあっても増えることはない。
実際に、泡盛の生産額は、毎年減少傾向にある。
若いウチナーンチュは、泡盛を飲まないのかな?

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ちなみに、名護市以北で、沖縄戦後に廃業した酒造所を調べてみた。
・1952年(昭和27年)廃業 幸地酒造所(宜野座村字惣慶) 銘柄:瑞泉
・1959年(昭和34年)廃業 奥酒造所(国頭村字奥) 銘柄:マルオク
・1960年(昭和35年)前後に廃業 豊里酒造所(名護市字宮里) 銘柄:豊和
・1961年(昭和36年)廃業 田港酒造所(名護市字饒平名) 銘柄:平松
・1963年(昭和38年)廃業 上本部酒造所(本部町字山川) 銘柄:港乃泉 
・1973年(昭和48年)名護酒造所(=轟酒造所)(名護市字名護462) 銘柄:轟
・1975年(昭和50年)廃業 石川酒造所(本部町字東) 銘柄:琉華、本露、北山
・1975年(昭和50年)前後に廃業 大城酒造所(大宜味村字根路銘) 銘柄:寿
・1975年(昭和50年)前後に廃業 宮里酒造所(名護市宮里112番地) 銘柄:丸盛
・1976年(昭和51年)廃業 與儀酒造所(国頭村字浜) 銘柄:かねよ
・1981年(昭和56年)廃業 宜名真酒造所(国頭村字宜名真) 銘柄:黄金の露
・廃業年度不明 宜野座酒造所(宜野座村宜野座) 銘柄:瑞泉

12酒造所も廃業に至っている。
当時の泡盛は、臭いがきつく、相当なクセがあったらしい。
今の泡盛は、臭いはほとんど無く、
九州の米、麦、芋、黒糖、そばなどの焼酎の方が個性的な味がする。
泡盛については、また後日書く予定。

「普通の上等」で、えらく長く書いてしまった。
脱線してダラダラ書きは、私の悪い癖だね。

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沖縄の「上等」には、英語でいう
「Don't mind(ドンマイ)」
「気にするな、心配するな」
という意味もあるらしい。

誰かが、ちょっとした失敗をした時に、
「上等、上等」
と声をかけて励ます。

失敗だけど、その経験は「上等」、
つまり
「失敗は新たな一歩だ」
とか
「背暗向明(はいあんこうみょう)」
「暗いことには背を向けて、明るい方に向かって進もうよ」
とか、
「これからの人生の役に立つよ」
というような、温かみのある励ましにも感じられる。
こういう気の利いた言葉って、本土にはない。

物事には「良い」「悪い」があり、沖縄では
「上等やっさー」
とか、若者は言うけど、
年配者は、どんなものにも
「上等さ~」
「なんでも上等さ」
と言う人が多い。

そういうのは「テーゲー文化」だと揶揄(やゆ)する人もいるけど、
私は沖縄戦やアメリカ世を経験した先輩がたの、良い意味での
「おおらかさ」や「ゆとり」を感じる。

沖縄の方言、ウチナーグチともいうけど、
なかなか味わい深くて、意味も実に良い響きがある。
まさに、沖縄ぬ心(くくる)だね。

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