ハイサイ、RIN(凛)ですニコニコ
【任侠シェパードのようなRIN(凛)君】


楽観思考で明るく、陽気、おおらかで
「いちゃりばちょーでー」出会った人は皆兄弟…、
そんなウチナーンチュの気質をひと言で表現するとすれば、
「なんくるないさ」
という言い方に集約される。


本土では、
「なんとかなるさ」
「どうにかなるさ」
というような、
よくいえば楽観的、
一般的には、適当で他力本願思考な意味だと誤解されているはず。
実は、私もそう思いこんでいた。
本当の意味は、実に奥が深く、美しい。
本土には似たような、意味深い言い回しはないんじゃないかな。

【重機が通った道を警戒に散歩するRIN(凛)君】

私が小学生の頃だから、もう半世紀も昔、
東京オリンピックが開催された1964年(昭和39年)のヒット曲
「だまって俺について来い」
は、ハナ肇とクレージーキャッツの植木等が
「シャボン玉ホリデー」という番組でよく歌っていた。
当時は白黒だったような気がする。
ま、若い人は知らないと思うけどさ。
その歌詞は、
「ぜにのないやつぁ 俺んとへ来い
 俺もないけど心配するな
 みろよ青い空白い雲
 そのうち何とかなるだろう」
【眺めが良い場所が大好きなRIN(凛)君】

また、沖縄復帰の2年前、1970年(昭和45年)、私が中学生の頃には、
かまやつひろしの「どうにかなるさ」という曲がヒットした。
歌詞は、
「今夜の夜汽車で 旅立つ俺だよ
あてなどないけど どうにかなるさ
あり金はたいて 切符を買ったよ
これからどうしよう どうにかなるさ
 見なれた街の明かり 行くなと呼ぶ
けれどもおんなじ暮らしに疲れて
どこかに行きたい どうにかなるさ」
【広大な牧草地でご機嫌なRIN(凛)君】

「そのうち何とかなるだろう」
「どうにかなるさ」
というのは、
「何とかしよう!」「どうにか切り抜けよう!」
という自らの意思ではなくて、
楽観的かついいかげんな、神頼みの他力本願思考。
沖縄方言の「テーゲー」を
「適当」とか「いいかげん」という意味で解釈すれば
まさしく「テーゲー」とも言えよう。
【崖のギリギリまで行こうとするRIN(凛)君、私も落ちちゃうよ!】

「なんくるないさ」は、私は沖縄に移住する前までは、
「そのうち何とかなるだろう」とか「どうにかなるさ」的な、
チャランポラン思考と思いこんでいた。
「果報は寝て待て」みたいな。
おそらくナイチャーは、こういう解釈をする人が多いはず。
【昼間の青空、まだ日中は28度はありそう。Tシャツで十分OK】


「なんくるないさ」の本当の意味は、
「やるべきことを全てやったから、きっと良いことあるよ~」
という、とても奥が深い言葉なんだと知ったのは、2001年(平成13年)のこと。
私が沖縄に移住して2年目の9月。
なぜ具体的に2001年9月と判っているのかというと、
女子プロゴルフの日本女子オープンで、
豊見城市出身の島袋美幸選手が勝ったから。


国内の女子プロゴルフの国内メジャー大会は、
・日本女子プロゴルフ選手権大会
・日本女子オープンゴルフ選手権大会
・ワールドレディースチャンピオンシップ
・LPGAツアーチャンピオンシップ
の4大会で、通常のツアーは3日間開催だけど、
メジャー大会は4日間開催で、体力・気力・知力、技術、勝負勘…、
ごまかしが一切効かない実力勝負。


この2001年は8月31日~9月3日、北海道の室蘭ゴルフ倶楽部で行われた。
2日目から最終日は風速10m近い強風が吹き荒れ、
上位選手でもスコアをまとめるのが難しく、
芋を洗うような大混戦になっていた。

【バナナ園でチョウを捕ろうと狙っているRIN(凛)君】


2日目から首位に立ったのは島袋美幸選手。
プレー中に「なんくるないさ」と何度も言われていた。
それで、私が思っている「なんくるないさ」は意味が違うんじゃないかと。
適当な「どうにかなるさ」ではなくて、
宋代の胡寅(こいん)の儒書「読史管見(とくしかんけん)」に出てくる名言、
「人事を尽くして天命を待つ」
「できる限りの努力をして、あとは運を天の意思にゆだね、天命を待つのみ」
こういう意味なんじゃないかな、と思って、
当時は糸満市阿波根(あはごん)に住んでいたんだけど、
集落の古老たちに意味を聞きに行って、
それで初めて本当の意味を知ることになった。


島袋選手は体系的にはポチャ系で背も高くない、飛距離も出ない。
それでも耐えて耐えて頑張っていた。
相手は、この日本女子オープンに過去2回優勝している世界の岡本綾子選手。
「いつ追いつかれるのか、追いつかれたらチャンネルを変えよう」
と、最終日はTV観戦をしていたので、今でもよく覚えている。

島袋選手は4日間を通じて、すべて70台をキープし、
通算14オーバーでメジャータイトルを手にした。
2位の岡本綾子選手は18オーバー、それくらい難易度が高い消耗戦だった。
5位タイには、東北高校1年生の宮里藍(16歳、アマチュア)が22オーバー。
翌日の新聞には、藍ちゃんの談話として、
「スタート前に郷里の大先輩の島袋さんが「ナンクルナイサ」と言ってくれたので

緊張がほぐれた」
と書かれていた。


この頃までは女子プロゴルフ界は冬の時代で、
スポンサーも少なく、大会も少ない、人気もなかったけど、
宮里藍選手の登場で、以降一気に華やかになっていった。
たしかに昔の女子プロというと、相撲部屋や柔道重量級、
レスラーのヒール系…、といった選手ばかりで
ビジュアル系は皆無だったよね。
「怪獣図鑑」とか「妖怪図鑑」とも揶揄(やゆ)されていた。
ま、若い人は知らないとだろうけどさ。
なので、島袋美幸選手というと、「知らない」とか、地味だとか、
あるいは日本女子オープンの勝利はマグレとか思う人が多い。
たしかに、日本女子オープンの後は彼女は未勝利のまま引退している。
だけど、島袋選手はツアーで5勝もしている実力者。


それに、日本女子オープンの1か月前、同年8月、
山梨県富士桜CCで行われたフジサンケイレディスクラシックでも優勝している。
この時も、当時世界の飛ばし屋として有名な、
イギリスのローラ・デービースが出場して2日目まで単独首位、
このままBEER樽体型デービースの逃げ切り圧勝かと思いきや、
最終日に上位陣が総崩れになり、島袋選手が大逆転でツアー4勝目を上げている。

バーディラッシュの戦いでは島袋選手は飛距離が出ないから不利だけど、
正確なショットを打てるだけに、雨や風などの混戦では実に勝負強かった。
この時、18番で3パットのボギーを叩いて2位に転落したのが
韓国の李知姫(イ・チヒ)選手。
当時来日2年目の22歳でメキメキ実力を発揮していた。
この年は、たしか賞金額が4位だったはず。
李知姫選手は今36歳だけど、まだシード権を取って現役で活躍してるよね。

【嬉しい朝散歩でニヤけてしまうRIN(凛)君】


亜熱帯気候の沖縄、あるいは南北回帰線の内側の熱帯地域では、
農耕に適さない地域が多い。
また、大航海時代以降、植民地とされた歴史や
産業や教育水準が低く、立身出世が難しい環境にあり、
物事について徹底的に突き詰めて考えずに、
のんびりとほどほどに、適当に生きていこうというような
スローライフ概念が南国にはある。


沖縄にも
「テーゲー」
という言い方がある。
これも「たいがい、適当、いいかげん」というような意味に解釈されているけど、
本来は、
「相手のことを思いやって、もうそのくらいで充分、大変だからもういいよ」
という、思いやりの意味合いがある。
これも阿波根(あはごん)集落の古老から聞いた。
また、「テーゲーやるな~」は「なかなかやるな~」という意味らしいから、
「テーゲー」は、印象より悪い言葉ではなさそうだ。

【サタン化してロープを咬むRIN(凛)君】


「なんくるないさ」
の本当の意味は、
「まくとぅそーけー、なんくるないさ~」
と古老から教えてもらった。
「まくとぅ(真)そーけー」
は、
「正しいことをしていれば」
「やるべきことを全てやったから」
「精一杯やったから」
という意味。


なので、
「まくとぅそーけー、なんくるないさ~」
は、
「地道に一生懸命頑張っていれば、きっと良いことあるよ~」
という意味で、これがいつしか略され
「なんくるないさ」
になった、とのこと。

努力もせず、頑張りもせず、適当に
「そのうち、どうにかなるさ~」
という、いいかげんで他力本願の楽観論ではなくて、
「人事を尽くして天命を待つ」
の、まさに沖縄バージョン。
深長で壮美な言い回し、沖縄方言って素晴らしいね。

【ストーブ用の薪を横取りしたRIN(凛)君】

ちなみに、私が誤解していた「なんくるないさ」の意味、
「そのうち、なんとかなるよ」というのは、
沖縄方言では
「チャーニカナイサ」
というらしい。
でも、こっちは聞いたことがないね。
【夕方18時過ぎ、東の空に月が明るい】


NHK連続テレビ小説 「マッサン」では、
エリーは、「ダイジョウブ」が口癖だった。
このドラマは主役が頼りないマッサンなんだけど、
文化が違い、男尊女卑で軍国主義異国の日本に来て、
頼りない主役を支える妻エリーが主役に見えていた。

いろいろな難局になると、エリーがマッサンに
「ダイジョウブ、ダイジョウブ」
と、励ましていた。
エリーは、常に精一杯努力をしていたので、
これは、エリーは「なんくるないさ」と言ってることになる。

【長時間散歩で大満足し、休憩中のRIN(凛)君】

1956年のヒッチコック監督のサスペンス映画「知りすぎていた男」の主題歌は、
主演女優で歌手でもあるドリス・デイが歌った「ケセラセラ」。
「ケセラセラ」はスペイン語に由来するらしいけど、
意味は「なるようになる」。
これは「なんくるないさ」ではなく「チャーニカナイサ」。
【夕方17時頃、珍しくビーチの端に人がいるのでヤツを放せない】

ゆったり、のんびり、焦らない。
だけど、手は抜かない。
「なんくるないさ」はスローライフの大原則ともいえる良い言葉だね。
【夕方18時近くなっても帰ろうとしないRIN(凛)君】