毎年、6月になると思い出す
暗い過去があります。。。
今月のメニューに繋がる
エピソードなので、
少しお付き合いください。
もう10年以上前の話ですが、
私は、
料理人を辞めたいと
真剣に思ったことがあります。
思い悩んでいました。
精神的にドン底の状態でした。
大学を卒業してから
料理の世界に入った私は、
当然なんにも出来ませんでした。
大学に行ったことすら
後悔していました。
こんな事なら早く料理の世界に
入っていればよかった。。。
そんな思いでした。
毎日、シェフや先輩から
罵声や暴力の嵐…
身も心もボロボロの状態でした…
もう辞めたい…
心底そう思いました。
まかないも喉を通らず、
夜も寝れない…
もう朝なんか来るな、
と思っても当たり前ですが、
必ず朝になり、仕事が始まる。
そして、また罵声、罵声…
全く楽しくありませんでした。
ある日、意を決して
シェフに、もう辞めたいですと、
言いに行きました。
シェフは黙って話を
聞いてくださり、
明日、お前の誕生日だろ、
お祝いの料理を用意してある、
辞めるなら、
その料理を食べてから辞めろ、
そう言われました。
私は、
あまりにも精神的に
追い詰められていたため、
自分の誕生日のことすら
忘れていました。
次の日に、
シェフが誕生日のお祝いに作ってくれた料理が、
『ホロホロ鳥のコンフィ』
でした。
これを食べたら辞められる、
そんな状態でした。
一時も早く、この場から去りたい、
そう思っていました。
しかし、
一口食べてその浅はかな思いが
すっ飛びました。
そのホロホロ鳥のコンフィが
あまりにも美味しくて…
美味しくて…
無我夢中で食べました!
気がつくと、
骨までしゃぶっていました。
この料理、
どうやって作るんですか?
我を忘れて、
シェフにそう質問していました。
お前、辞めるんじゃなかったのか?
え、あ、はい、えっと、
完全に動揺する私に、
俺もお前と全く同じ道を
歩んできた、
お前の気持ちは痛いほど分かる、
大丈夫だ、お前なら出来る、
大丈夫だ。
と、私の手を握ってくれました。
私は涙が止まりませんでした。
あの手の温もりと、
あの手の大きさは、
今でもはっきり覚えています。
毎年、
自分の誕生日が近づくと思い出す、
ほろ苦い思い出です。
あの時、
ホロホロ鳥を食べなかったら、
料理人を辞めていたと思います。
シェフは私の何もかもを
お見通しだったのだと思います。
10年以上前の話ですが、
今では人生の大きな宝物です。
今月、私の誕生日月は、
このホロホロ鳥のコンフィを、
スカイで出そうと思います。
今度は私が作る番です。
私の人生を変えた一皿を
是非ご賞味ください。
以上が毎年思い出す暗い過去です
(^^;;
あの頃は若かった。。。
って思える歳になりました。
少し長くなってしまったので、
コースの詳細は水曜日に
またメールします。
ホロ苦い過去の、
ホロホロ鳥の、
ホロッとくる話でした……
※今月の土曜日は全て
満席を頂いております。
