Il momento di uccidere (1968)
英語圏では "The Moment to Kill" と題されております。
そしてドイツではこちらもジャンゴもの扱い
Django - ein sarg voll blut "血まみれの棺桶”
ジュリアーノ・カルニメオ氏がはじめて西部劇を監督した作品であります。
Giuliano Carnimeo (1932-2016)
マカロニウエスタンとセクシーコメディを中心に30本以上の映画を監督しましたが、クレジット上は「アンソニー・アスコット」名義になっていることが大半です。
2作目以降のサルタナシリーズをはじめジャンニ・ガルコ氏やジョージ・ヒルトン氏を起用した娯楽マカロニ西部劇で知られる監督であります。
ちなみに僕と誕生日が一緒です笑
本作の主演はジョージ・ヒルトン氏
George Hilton (1934-2019)
南米ウルグアイ出身、アルゼンチンで俳優活動を開始し29歳でイタリアに移住、2年後には海賊映画で主演を果たし、その3年後に「真昼の用心棒」でマカロニ西部劇デビュー。評判となり以後マカロニ・スターの一人として数多くの作品に名を連ねました。
西部劇ブームが去った後は様々な役柄をこなし、映画やTVの分野で2010年代まで第一線で活躍されたそうです。
本作では "Lord" と名乗る男。ウォーレン判事に雇われ、相棒の "Bull" とともに隠された南軍の金塊50万ドル相当を探索する。
Bull 役を演じたのはウォルター・バーンズ氏
Walter Barnes (1918-1998)
米国ウエストバージニア生まれ。
NLFのプロフットボーラーとして大活躍(フィラデルフィア・イーグルスで優勝2回)、その後コーチとしても殿堂入り、という輝かしいスポーツ歴を持ち、40歳頃からは俳優としても活躍(米国の西部劇など)、60年代にはイタリアに移って海賊映画やマカロニ西部劇に数多く出演。70年代以降は再び米国で俳優活動に勤しまれたそうです。
ロードとブルの二人に金塊探しを命じたのがウォーレン判事。ところが物語の途中で金塊の横取りをもくろむ連中に殺害されてしまいます。
Rudolf Schündler (1906-1988)
ドイツの俳優さんで20代から活躍、200本を超える出演歴だけでなく監督としても20本の英尾がでメガホンをとっております。本国ドイツではTVなど司会者としても有名でもある大物。
ドイツ製の "Heiß weht der Wind" や本作でウエスタンに出演歴がありますが60年代はおおむねクライムムービー、70年代以降はコメディへの登場が多いようです。
金塊探しに躍起なのはロードとブルの二人だけではありません。当地で権力を持つ男フォレスター一家はやっかいな存在(フォレスター一家のボスは金塊を隠した南軍士官の遠戚だったりします)。
強大な力を持つフォレスター氏を演じたのはアルトゥーロ・ドミニチ氏
Arturo Dominici (1916-1992)
地元シチリアの大学に在学中から演劇界で頭角を現し、戦後はイタリアで俳優として活躍。史劇からマカロニウエスタン、クライム映画からコメディまで幅広く出演する傍ら声優としても活躍しました(アニメ「スマーフ」の声を担当していたそうです)。
このフォレスター家の長男がさらにクセ者。親父さえ踏み台にして金塊探しに血眼になる狂気の男ジェイソン・フォレスターを演じたのはホルスト・フランク氏。
Horst Frank (1929-1999)
マカロニウエスタンではお馴染み、ドイツの俳優さん(主に悪役)。ハンブルクの演劇大学を出てすぐから演劇で活躍され、その後ヨーロッパ各国の映画に出演しクセつよキャラで印象を残しました。またTVはやラジオ、さらには詩人としても才能を発揮されました。
隠された金塊のヒントは二つ
。一つは「キャメロット」なる本に書かれた手がかり。
そしてもう一つは金塊の相続人、ロード&ブルと協力してフォレスター一家と対峙する女性。
車椅子生活を余儀なくされているレジーナ・フォレスター。
彼女を演じたのはロニ・フォン・フリーデルさん。
Loni von Friedl (1943-)
オーストリアの女優さんで7歳の時から子役として映画出演されてたそうです。その後も順調にキャリアを重ねヨーロッパや米国の映画にTVにと数多く出演、また演劇の分野でも活躍されたそうです。
レジーナの世話役であるトレントも鉤を握る人物のひとり。
演じたのはジョルジオ・サンマルチノ氏
Giorgio Sammartino (?-?)
実はこの俳優さん、詳細不明(Wikipedia では Renato Romano とクレジットされていますが明らかに違います)で…「ジョニーハムレット」と本作に出演しているそうですが、それ以上のことは判らず泣
誰かご存じの方いらっしゃいましたらご教示くださいませ
m(_ _)m
それぞれの思惑が入り乱れ一進一退の攻防
本作はアクションもたっぷり。ジョージ・ヒルトン氏のスマートで小粋なガンアクションとウォルター・バーンズ氏のタフガイっぷりと必殺のショットガン、このバディの戦いっぷりが実に痛快。
しかし敵もさるもの、とくにホルスト・フランク氏のダーティかつ執拗な戦略のしたたかさに天晴れ、と言いたくなる。
死闘の末、物語は見事にハッピーエンド。主題歌がインストでリプライズ…と思いきや!
まさかの展開。
これこそ「どんでん返し」という結末…
機会があったら是非ご鑑賞くださいませ。
音楽担当はご存じフランチェスコ・デ・マージ御大。
Francesco De Masi (1930-2005)
もともとホルン奏者(ローマRAI交響楽団の第一ホルン奏者!)ってところ、彼のアレンジを聴くとよくわかりますね。32歳、叔父であり師匠であるアキッレ・ロンゴ師のすすめもあって映画音楽の世界に進出。その後の活躍は世界が知るところ。
手がけたサントラの数と多彩さといった点で、マカロニウエスタンに限らずすべての映画音楽において再重要人物の一人であると評価されております。
本作でも、彼のトレードマークといってもいい12弦ギターのちょっとロック風味なリフから、美しくかつ力強いメロディを、自在なカウンターメロディとホーンリフを駆使した勇壮且つ流麗なアレンジでまとめてあります。
ヴォーカルを担当したのは、こちらもお馴染みラオール氏
Raoul Lovecchio (1939-)
ドン・ポウエル氏と並ぶマカロニ歌キングに間違いありません。実はキャルアの当初はキーボーディスト。「南から来た用心棒」を皮切りにマカロニウエスタンの主題歌で一世を風靡しポップソング歌手として、さらに俳優、映画監督にまで進出いたしました。
主題歌 "Walk by my side"
(われらがマカトラマスター保田氏のチャンネルから)
この主題歌は名曲ぞろいのマカロニウエスタンのサントラの中にあって決して埋もれることのない素晴らしい出来です。
哀愁と情熱、切なさと勇猛さが見事に癒合した屈指の名曲でございます。
恥ずかしながら私もカバーしてみました、是非お聴きいただければ幸いです。
(マカロニ・カバーしてるとよくあることですがクリアな音源のサントラなぞリリースされておらず、DVDから必死に耳コピして再現してみました)
梅雨入り宣言がなされましたね。
ジメジメした毎日を、マカロニウエスタンでスカッと晴れやかに彩りながら、日々を張り切っていきましょう~!
アディオス、アミーゴ!
(^-^)