Uccidi o muori (1966)

 

英語圏では直訳に近い "kill or be killed"

のタイトルで知られているようです。

 

本邦では1968年のゴールデンウィークに公開

「真昼の一匹狼」

"荒野の昼下がり~肩にバイオリン、右手に拳銃の凄まじい野郎がやって来た"

 

こんな素敵な煽り文言で宣伝されたら

否が応でも観たくなっちゃいますよね~

 

そして期待に違わぬ素敵な内容

おそらく当時のファンの方々も大満足だったことでしょう。

 

このオープニング!いきなりテンション爆上げ間違いなし

(いつもながら、我がマカロニ師匠 保田氏のチャンネルから。最高にかっこいいマカロニサントラの宝庫です。ぜひご登録願います!)

 

さて本編。

「肩にバイオリン」の文言よろしく、主人公の流れ者はバイオリンが得意。

とは言え、サバタのバンジョーみたいに実は武器ってことはないです。普通に美しい音色。

殺伐としたサルーンが一気に華やかダンスホールに。

いつでもどこでも思うがままに音楽を再生できる現代と違って「音楽を奏でられる」ということの価値が、おそらく随分違うのでしょうね。

 

ジェリーと名乗るこの男

その正体は凄腕の殺し屋リンゴなのです(ナイショ)

演じたのはロバート・マークことロッド・ダナ氏

一部では「華がない」みたいに言われたりしているようですが、そんなことないよな~

無駄にチャラい演技しないからリアリティがあって「大人の男」感が出てて、好感が持てると僕は思ってます。

Rod Dana (1934-)

ユタ州出身で、元々モデルさん。イタリア移住後は主にスパイ映画をはじめとするアクション娯楽映画で活躍されたそうです。マカロニウエスタンでは本作以外に「ゴーストタウンの番外地」に出演。80年代後半に俳優業を引退していましたが、2003年には作家として小説を出版したりしてるそうです。

 

町を牛耳るのは大牧場主のグリフィス家。

トップはジョナサン・グリフィス。保安官でさえ相手にしない不遜な権力者。

演じたのはメン・フューリーことフリオ・メニコーニ氏

Furio Meniconi (1924-1981)

「ベン・ハー」はじめペプラム映画からマカロニウエスタン、クライム映画にホラー、などなど57歳の若さでこの世を去るまで多数の娯楽映画で活躍した名バイプレイヤー。

 

グリフィス家の問題児が、次男スポット。

如何にも金持ちのドラ息子といった感じで、肩で風を切って町を闊歩しているのですが、運悪く絡んだ相手がジェリーだったもので…最終的に4対1で戦ったにも関わらず敗北。

演じたのはファブリツィオ・モローニ氏

Fabrizio Moroni (1943-2006)

17歳で銀幕デビュー、その後幾多の映画やTVで活躍、モデルとしても活動。マカロニウエスタンでは「虹に立つガンマン」でのフィデル役が印象的です。ドラ息子役がよく似合う、ということか…

 

グリフィス家のやりたい放題はエスカレートする一方。対立するドラモンド家を追い詰め、娘を娶ろうと画策するのがキレ者の長男、チェスター・グリフィス。

演じたのはアルベルト・ファルネーゼ氏

Alberto Farnese (1926-1996)

1950年代からショウビズで活躍した彼は、イタリアやフランス、スペインやドイツなど欧州各国のあらゆるジャンルの映画やTVに出演、マカロニウエスタンは意外に少なくて本作以外には "7 pistole per El Gringo" "5 dollari per Ringo"

 

チェスターが惚れ込んだドラモンド家の娘、リサ嬢

対立する二大勢力の狭間の二人、ですが「ロミオとジュリエット」とは真逆。リサ嬢はチェスターを嫌ってますが、牧場を守るために渋々結婚を承諾してしまう…

演じたのはエリナ・デ・ウィットさん

Elina De Witt

いろいろ調べたけれど5本の映画に出演している以外は情報得られず…ともあれとってもキレイ方。チェスターが惚れ込むのも無理はない。そして惚れ込んでしまったのはチェスターだけではなくジェリーも同じ。

 

ジョナサン・グリフィスがジェリー殺害を依頼した凄腕の殺し屋 "バルティモア・ジョー"

演じたのはご存じゴードン・ミッチェル氏

Gordon Michell (1923-2003)

正直、本作でいちばん美味しいとこ持って行った感のあるゴードンさん。

デンバー出身、ボディビルで身体を鍛え、高校の体育教師でもあった彼。ペプラム隆盛のイタリアに移住し同ジャンルからマカロニウエスタン、その後はホラー映画など200本以上の映画で活躍したとのこと。俳優引退後はアーノルド・シュワルツネガー氏の経営するジムのマネージャーを引き受けていたそうです。

 

殺し屋は撃退したものの、チェスターの罠にはまって絶体絶命のジェリーを救出したのがペトラックじいさん(と、その飼い犬)。

演じたのはベンジャミン・メイことベニアミーノ・マッジオ氏。ワンちゃんの方はお名前不明です笑

Beniamino Maggio (1907-1990)

俳優一家に生まれた彼は舞台コメディアンとしてキャリアをスタート。その後、即興を交えた多才な演技で映画やTVで大活躍。二人の妹とともに舞台で演技中に倒れて帰らぬ人となったそうです。

 

???(??-??)

 

そして、最初はヤな奴かと思いきや

ラストで最高に粋な計らいをしてくれる保安官。

演じたのはアンドレア・ボシック氏

こんなオッサンのウィンクでテンション上がるなんてことはそうそうありませんよ。

Andrea Bosic (1919-2012)

スロベニア出身、イタリアで舞台俳優をしたキャリアを始め、1950年代以降は映画を中心に活躍。マカロニウエスタンへの出演も頻繁な名バイプレイヤーですね。個人的には「西部の無頼人」の悪役が印象的です。

 

 

こんな個性的なキャストを迎えメガホンを取ったのは

タニオ・ボッチャ氏

Tanio Boccia (1911-1982)

何と、元はダンサーさんなのだそうで。振付師なども兼ねつつ、映画俳優としても活動、やがて監督業に専念したとのことです。ペプラム映画からマカロニウエスタン、スパイものなどで知られ、低予算の作品が目立つことからエド・ウッド氏やロジャー・コーマン氏と同列な扱いを受けることが多いそうですが、近年見直されて評価が高まっているとのこと。

 

対立する二大勢力の間に割って入る流れ者。

生真面目ゆえに損してる弱者に肩入れし

ロマンスあり、コミカルタッチな部分もあり

ピンチに陥りながらも見事に復活の主人公

最終的には強者を成敗しハッピーエンド

そして立ち去ってゆく

 

という、基本的にはハリウッド西部劇っぽい正統派プロットで安心して観られて、爽快感というかスカッとした感覚が残る良作です。

この爽快感は、おそらくカルロ・ルスティケリ氏の素晴らしい音楽が後押ししていると考えて間違いないでしょう。

 

Carlo Rustichelli (1916-2004)

ピアノで学位を取得、その後作曲も学び、実は一時期俳優活動もしていたらしいルスティケリ氏。1943年から映画音楽を手がけ、200本以上の映画にクレジットされているサントラ会の巨人。もちろんマカロニウエスタンでもその腕を振るっておられます。個人的には「荒野の三悪党」の決闘シーンのワルツが至高と思っております。

 

そんなルスティケリ氏の足下にも及びませんが

例によってマカロニ愛だけを頼りに

カバーしてみました「真昼の一匹狼」

是非お聞きいただけたら嬉しいですm(_ _)m

 

春が近づく足音がもうすぐそこまで…しかしまだまだ朝晩冷え込みますね。みなさまご自愛を。

アディオス、アミーゴ!

(^-^)