7 dollari sul rosso (1966)

英語版は "Seven dollars on the red"

いずれも意味は同じく「赤の上に7ドル」

 

おそらくオープニングシークエンスで

主人公の妻である女性が撃たれるのですが

(まあ復讐劇によくあるパターンですが)
真っ赤なスカートをまとっています。

 

悪党たちによって撃たれ絶命、倒れると真っ赤なスカートが広がり、その上に悪党は弔いの7ドルを置いてゆく…

 

ちょうどそこに"7 dollari sul rosso" のタイトル文字が。

 

あらためて観ると、なかなかカッコいいタイトルの出し方ですね

本邦では1967年に「地獄から来たプロガンマン」として

劇場公開されました

「狙ったら殺すのみ! 三日月に冴えるステファンの連続地獄射ち!」

、煽ってますが

別に殺し屋(プロガンマン)じゃないし、三日月が冴えるシーンなんてあったっけ?「連続地獄射ち」も何のことを言ってるのかわからず、最初「あれ、別の映画観ちゃったのか?」と思ったほどでした笑

 

 

メガホンをとったのは、アルバート・カーディフの名で知られるアルベルト・カルドーネ氏

Alberto Cardone (1920-1977)

イタリアの映画界で活躍した彼はアクション映画、とくにマカロニウエスタンを多く手がけております。

「砂塵に血を吐け」「さすらいのガンマン 回転逆手撃ち」「L'ira di Dio」「Il lungo giorno del massacro」けっこう有名な作品が多いですね。

ちなみに

"7 dollari sul rosso"  地獄から来たプロガンマン

"1000 dollari sul nero" 砂塵に血を吐け

“20,000 dollari sul 7” さすらいのガンマン 回転逆手撃ち

どんどんドルの額が指数関数的に増額しています笑

 

本作の主演はご存じアンソニー・ステファン氏

Anthony Steffen (1930-2004)

ドイツ貴族階級の生まれ。本名は Antônio Luiz de Teffé von Hoonholtz (アントニオ・ルイス・デ・テッフェ・フォン・ホーンホルッツ)。

お父さんは元F1ドライバーにして外交官。

アルファロメオやメルセデスを走らせ、なんとエマニュエル・ファンジオと共にサーキットで腕を競ったそうで。

Manoel de Teffe' von Hoonholtz (1905-1967)

 

アンソニー・ステファンは27本のマカロニウエスタン主演を誇る、とあります。なんならもっとありそうな気もしますね笑

ともあれ、彼が出てくると何とも言えない安心感というか

間違いない感じが漂います。

どんなに悲惨な展開になっていても、なんとなく彼の飄々とした雰囲気で場が和むというか…

(それがいいのか、悪いのか)

 

そんなステファン兄いが演じるのはジョニー・アシュレイ

出稼ぎ中、ギャング団に父(?)と妻を殺され、愛する我が子ジェリーを誘拐され復讐を誓う。

ちなみに続編(?)の「砂塵に血を吐け」でもジョニーという名の主人公を演じておりました。

 

ギャング団の親玉はジャック・ウィルソン~通称ジャッカル

演じるのはご存じフェルナンド・サンチョ氏

Fernando Sancho (1916-1990)

いつもながらの豪快で残虐、だけど憎めない悪役。堂に入ってます。

当初はコミカルなキャラクターをよく演じていたそうで、そのあたりマカロニウエスタンでも生かされていますね。

なんと7つのオスカーを手にした名作「アラビアのロレンス」にも出演されております。

 

このギャングの親玉に拾われたジェリー。彼はギャング界のエリートとして全うに悪の道を邁進して成長しちゃいます。

やがて父親との悲しき対決に…

そんなジェリーを演じたのはジェリー・ウィルソンことロベルト・ミアリ氏

Roberto Miali

アクション映画を中心にイタリア映画で活躍、増額三部作にはフル出演、それぞれ全く違った役を演じきっております。

2008年には自身が監督・脚本を担当した映画 "Pepe nel latte" を制作しております。

 

ジェリーを我が子として育てた女性ロザリオ。子供が出来ない体と言われており、夫であるギャング団のボス・ジャッカルが誘拐してきたジェリーを健気に育て上げます。

演じたのはキャロル・ブラウンことカーラ・カロ女史

Carla Calò (1926-2019)

もともと演劇畑で大活躍したのち映画女優に。映画TV合わせると生涯100本以上の作品に名を連ねる名女優さんななのだそうです。
事件から20年の歳月が過ぎ、老いた母となってなお息子(血がつながっているわけでは無い)を愛し立ち上がり、しかしその最愛の息子に打たれて絶命するという悲劇的な女性を素晴らしい演技で表現した彼女の存在が、本作を一段上のレベルに押し上げているような気がします。

 

ジェリーに恋したサルーンのシンガー、シビル。

甘い時間はしかし長くは続かず…

「犯罪計画遂行のために付き合ったフリをしたんだ」と強がるジェリーでしたが、シビルに計画を盗み聞きされたため射殺するシーンでの微妙な表情と間合いは、実はジェリーも本気で恋していたことを示しているように思えます。

シビルを演じたのはスペインの女優エリザ・モンテスさん

Elisa Montés (1934-)

祖父は作曲家、父親は政治家、姉二人は女優さん。若くしてマドリードの舞台に立ち、しばらく演劇界で活躍ののち映画やTVなどに出演するようになり、現在に至るまで無数の作品に出演しておられます。

 

そんなシビルの姉、エミリーも同じサルーンで働いています。ジョニーとは旧知の仲、というか割と相思相愛っぽい雰囲気を醸し出しています。

重たすぎる悲劇の末、この二人も袂を分かってしまったのでしょうか。

演じたのはロレダーナ・ヌシアク女史

Loredana Nusciak (1942-2006)

ミス・トリエステに選ばれた後、女優業を開始。「続・荒野の用心棒」はじめ数多くの映画に出演しかなりの人気を博したそうです。

 

極悪ギャング団ジャッカル一家の副官はビル。演じたのはこれまたお馴染みのスパルタコ・コンベルシ氏

Spartaco Conversi (1916-1989)

1950年台は冒険映画、その後1973年に引退するまで数多くのマカロニウエスタンに悪役として出演しておられます。実は身長2m近い大柄な俳優さん。

 

もう一人ギャング団の一員のなかで印象的なのがエル・グリンゴ。演じたのはホセ・マヌエル・マルティン氏

José Manuel Martín (1924-2006)

スペイン出身の俳優さんで、いわゆる「大部屋俳優」の印象がありますが、実はかなり深い演技も得意ではないかと。単なる「やられ役」ではない独特の雰囲気があり、ときに慈悲深い男の役を演じたり。素晴らしい役者さんだと思ってます。

 

 

ちょっとだけオイディプス王の神話も重なる悲劇である本作、音楽担当はお馴染みフランチェスコ・デ・マージ氏

Francesco de Masi (1930-2005)

ローマ生まれ、ナポリの音楽院で学んだ彼が、もとはホルン奏者だったというのは、彼の作る音楽を聴くと「アッ、なるほど」と思うかも知れません。彼の作る音楽ではけっこうホルンがいい仕事してますから。

 

「地獄から来たプロガンマン」サントラをカバーしました。

凝った作りのOPから頻出のアクションテーマ、シビルとジェリーのロマンス曲、そしてむせび泣くトランペットをギターに置き換えたデグエヨ。

 

実は "A man must fight" という曲が本作の「主題歌」とされていることが多いのですが、本編ではアレンジ曲も含めて全く聴かれず。

同年同時に公開された 「皆殺しの男」(La spietata Colt del gringo) のOPで流れておりまして、当時の事情はわかりません(「地獄から来たプロガンマン」のために作ったけど「皆殺しの男」に流用されたのか、そもそも「皆殺しの男」のための曲を販促などの理由で「地獄から~」の主題歌扱いにしたのか…知ってる方がいたら教えてくださいませ)が、今回のカバーでは取り扱いませんでした。

後日「皆殺しの男」をカバーするときに、ぜひやりたいと思います(すごくカッコいい曲ですし)。

 

ちなみにその "A man must fight" が聴かれる「皆殺しの男」のOP、僕が敬愛するマカロニ師匠の保田氏のチャンネルで観られますので是非!

 

 

少しずつ春めいてきておりますが、まだまだ朝晩冷え込みます。みなさまご自愛くださいませ。

 

アディオス、アミーゴ!

(^-^)