Anche nel west c'era una volta Dio (1968)

”かつて西部にも神がいた”

 

英語圏では 

"Between God, the Devil and a Winchester"

”神と悪魔、そしてウィンチェスターの間に”

 

これ、実はなかなかイイタイトルだと思います。主題歌の歌詞やストーリーと巧みに連動してて。

 

日本では劇場未公開ながら「十字架の用心棒」の邦題で、TV放映されました。

 

なぜ「十字架」で「用心棒」なのか、あまりピンときませんが、とりあえずかの有名な冒険小説「宝島」を西部に置き換えたストーリー(、書いたのは脚本家で映画監督のジュゼッペ・デ・サンティス氏

Giuseppe De Santis (1917-1997)

本作では別名の Gino De Santis でクレジット。「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の脚本や「にがい米」の監督はこの方です。

 

少年が偶然にも宝の地図を手にし、周囲の大人たちや盗賊たちとドキドキハラハラな宝探しの旅に出る…確かにそっくりですね。

 

監督はご存じマリノ・ジローラミさん

Marino Girolami (1914-1994)

イタリアでは有名な映画一家の一員で、ロモロ・ジローラミ氏の息子さんですが、

なかなかスゴイ経歴の持ち主。医学部入学するもボクサーに転身、すぐ天性の資質を発揮しフェザー級制覇、1936ベルリン五輪代表に選出されたが不整脈のため断念、その後演劇の世界へ…俳優としてデビュー、やがて脚本家、映画監督として名を馳せました。約80本の映画でメガホンを取ったとのこと!

また俳優エニオ・ジローラミさん、エンツォ・G・ヵステラッリ氏の父親でもあります

 

そして主演は…リチャード・ハリソン氏とギルバート・ローランド氏のダブル主演みたいな感じなのですが

大抵はリチャード・ハリソン氏の方が最初にクレジットされています。

対してポスターなんかではローランド氏の方が大きな扱いのことが多いですね。

 

リチャード・ハリソン氏が演じたのは、神父パット・ジョーダン。少年トミーを火事から救い出し宝の地図を託される。

Richard Harrison (1936-)

米国生まれ。ペプラム映画の時代からすでにイタリアで活躍しマカロニウエスタン、ユーロクライム、ニンジャ映画から2000年のサメ映画まで、数え切れない映画出演を果たしております。まさにB級の帝王!

 

ローランド・ギルバート氏が演じたのは、クセ強めの御者フアン・チャスクイード。敵か味方か…かなり最後まで悩ましい存在ですが、まさに彼の存在こそが "between god, the devil and a Winchester" なのだろうな、と。

そして主題歌 "Heart of stone" の歌詞は、彼の歌なんだろうな、と。

Gilbert Roland (1905-1994)

メキシコ生まれ、代々闘牛士なのだそうで、ご本人も当初はマタドールを目指していたもののパンチョ・ビラの革命で家族ごと米国に亡命、生きるためにハリウッドでエキストラなどでキャリアをスタート。1940~1950年代に米国で注目される俳優に(ゴールデングローブ賞ノミネート2回)。ハリウッドのウォークオブフェイムに名を連ねる文字通りの名優ですが、マカロニウエスタンにも結構出演されてます。

 

そもそも宝の地図を持ち込んだのは、ボブ・フォード大佐。修道院から宝を強奪し仲間割れの末に生き残り、地図を田舎町ビッグレイクの宿屋に隠すものの、宝を狙うギャングたちから逃亡しようとして屋根から転落死…

演じたのはフォルコ・ルッリ氏

Folco Lulli (1912-1970)

ピエロ・ルッリ氏のお兄さん。そして戦争当時はガチのパルチザン。戦後は性格俳優としてイタリアで活躍されました。社会派の印象が強いですがコメディや「虹に立つガンマン」や本作のようなマカロニウエスタンにも出演されております。

 

実は神父パットは修道院の差し金で宝物回収のためにやって来た使者、というのは後で判明します。かたくなに銃を持つことを拒むあたり、聖職者ゆえに。

ボブ・フォードを泊めたばっかりに色々ヒドい目に遭った宿屋のおやじ アンクル・ピンクを演じたのは、ロバート・カマルディエル氏。

Roberto Camardiel (1917-1989)

スペインの俳優さんですが、マカロニウエスタンですっかりお馴染みですね。やっぱり「南から来た用心棒」のウィスキー役が印象深いかな

 

宝を狙う利己的な男マルコス・セラルドを演じたのは監督の息子さんエニオ・ジローラミ氏。

Enio Girolami (1935-2913)

名門ジローラミ家の一員として、ありとあらゆるジャンルの映画やTVに出演し大活躍されました。

 

そしてギャングのボス、ペドロ・バッチを演じたのは

ご存じラフ・バルダッサーレ氏

Raf Baldassarre (1931-1995)

悪役が多い方ですが、なぜか根っからの悪い人に見えないというか、ちょっと同情したくなる役柄が多いような気が…晩年には宗教映画のナレーションを務めたりしもした、とのことです。

 

ある意味主人公といえる少年トミー。彼を演じたのはウンベルト・センペレという方。

スペインの方でしょうか、1960年代のスペイン映画にクレジットを確認できますが詳細不明です m(_ _)m

 

ヒロインのマルタを演じたのはドミニク・ボッシェロさん

Dominique Boschero (1937-)

パリ生まれ、お父さんも俳優さんなのだそうです。15歳で診療所勤務、やがてスタイルの良さからモデルに転身したのが18歳。女優としても活躍しました。俳優クラウディオ・カマソ氏の恋人としても有名です。

 

こうしてみると、なかなか豪華なキャスティング。

宝探しの旅もワイワイ楽しげですね

 

そんな旅を彩る音楽を担当したのはカルロ・サビーナ氏

Carlo Savina (1919-2002)

父親は黎明期の伊ラジオ局オケのクラリネット奏者。

幼少期から音楽の英才教育を受けたそうで、イタリア映画音楽界の重鎮として映画黎明期から活躍。かのエンニオ・モリコーネ師にはじめて仕事を紹介した人物、としても知られているとか…

 

全体的にすごくスパニッシュな構成の音楽なのですが、独特のシンセの音や、あまりに豪快かつエモーショナルなラオール氏の歌のおかげで、ものすごいオリジナルな世界観を作っております。

主題歌 "Heart of Stone"

(こちらもお馴染み、僕の尊敬する先輩、保田氏のチャンネルより~登録よろしくお願いいたします!)

 

それにしてもシンセサイザー。なんたって1968年です。

Mini Moogが発売されるより前です。EMS VCS3はまだ発売されていません。

伝統的なクラシックを学び尊重しつつも、フラメンコや電子音楽など新しいものにも貪欲なあたり、さすがの巨匠です。

 

おなじみラオール氏の歌は相変わらず強力すぎて、鳥肌がたつほどエモい…

Raoul Lovecchio (1939-)

マカロニウエスタンの主題歌の力強い歌唱が印象深いですが、実は幅広い曲調で素晴らしい録音を残しています。

1970年のシングル "Perdutamente"

なんかこう、胸がキュンとくる

魅力的な歌声をお持ちですな~

 

ホント、こんな素晴らし過ぎる歌い手さん、演奏家たち、作編曲家たちの作品をカバーするのは

毎度のことながら相当気恥ずかしいというか

自身の至らなさを痛感するばかりで辛いのですが

今回も頑張ってみました。主題歌および劇伴のカバーです!

 

まだまだ頑張ります!

アディオス、アミーゴ!

(^-^)