I quattro inesorabili 1965
「容赦ない四人」の意
本邦では劇場公開されなかったものの
「復讐の脱獄 ガンマン無情」または「奴らに高く吊されろ」の邦題でTV放映されたそうです。
1965年と言ったら、まだコメディ路線や奇をてらった作品ではなく、王道の復讐劇がメインストリームだった、と言っていいマカロニウエスタンですが
本作も真面目に作られた佳作であり、かつ、ちょっとハリウッド時代劇っぽい匂いも感じられました。
主人公の雰囲気がそう思わせるのでしょうか。
ちなみに主人公は「容赦の無い四人組」ではなく、その四人組に狙われる真面目なテキサスレンジャーの男、サム・ギャレットであります。
ブリムの曲げ方や、シャツやジレ、そしてマフラーの色なんかがアメリカっぽいのかな?
演じているのはアダム・ウエスト氏です。
Adam West (1928-2017)
1950s後半から米TVで活躍していた彼は、米映画で幾本かの主演作撮ったのち、イタリアに渡り本作の主演をこなしました。
そして翌年、彼のキャリアを代表する「バットマン=ブルース・ウェイン」役に出会いました。
その後、まさにバットマンと一心同体な人生を歩んだアダム・ウエスト氏の「プレ・バットマン期」の貴重な記録が本作である、と言えるかも知れません。
この時代の、お茶目バットマン、めっちゃくちゃ好きです。
以前地上波の深夜に再放送してて、広川太一郎さんの吹き替えに爆笑しながらTVにかじりついていました。
(ブルーレイBOX買っちゃった、てへ)
このテキサスレンジャーの正義感溢れる姿は、まさにアメコミヒーロー的であります。
対してヴィラン。これが「容赦なき四人」
非情の賞金稼ぎたち。有無を言わさず懸賞が掛かった人間は次々血祭りに。
リーダー格はアラン
演じたのはロバート・ハンダー氏
Claudio Undari aka Robert Hundar (1935-2008)
長身、端整な顔立ち、ニヒルな表情…主役よりずっと「マカロニくさい」ですね。マカロニでは「荒野の復讐鬼」が有名でしょうか。イタリアやスペインで主に悪役として活躍し、後年はドキュメンタリーの監督などを務めたりしたそうです。
ナンバーツーっぽい立ち位置なのがロイ。
演じたのはハワード・ロス氏
Howard Ross (1941-)
1960年代から映画、TV問わず様々なジャンルを股に掛けて活躍されたそうです。マカロニでは「ネブラスカの一匹狼」"L'ira di Dio" など。脚本家としての作品も残しております。
お調子者なロスを演じたのはラフ・バルダサーレ氏
Raffaele "Raf" Baldassarre (1932-1995)
彼もかなりの数のイタリア映画に出演歴を誇る「マカロニウエスタンおなじみ」さんですね。個人的には「さすらいの盗っ人野郎サンタナ」のバートン兄弟二役が印象に残っています。
四人目はやや年長の賞金稼ぎバクスター。
ホセ・ジャスペ氏が演じています。
José Jaspe (1906-1974)
スペイン出身の彼も、かなり数多くの映画出演を果たしております。大戦前の1941年にデビューし史劇やマカロニウエスタンなどで大活躍。あの「レッド・サン」の機関車の運転士を演じてるのも彼だそうです(ノンクレジットながら)。
法に忠誠を誓いつつサム・ギャレットを信じアランらの陰謀を暴く保安官ルークを演じたのはルイス・インドゥニ氏
Luis Induni (1920-1979)
WW2では枢軸国側で戦い、戦後は極貧ホームレスだったとのこと。その後寝床と引き換えに映画スタジオの清掃係となり、エキストラを経て俳優に。多くのマカロニウエスタン出演歴があります(保安官役おおいですね)。
対して、アランたちと通じる悪徳保安官助手がビンス。
最期はアランに処刑されてしまうけれど…
演じたのはクリス・フエルタ氏
Cris Huerta (1935-2004)
実はかなり多くのマカロニウエスタンに名を連ねている役者さん。コルブッチ作品やアンソニーアスコット作品はじめ、有名どころに多く出演されました。
サム・ギャレットを罠にはめるために犠牲になった富豪の牧場主ジェフリー・アンダースを演じたのはロベルト・カマルディエル氏
Robert Camardiel (1917-1989)
1960年代から1980年代にかけて数多くの映画に出演、もちろん当時の花形であったマカロニウエスタンには「南から来た用心棒」「夕陽のガンマン」から「荒野の無頼漢」まで、有名どころに多数出演しキーマンとなる人物を演じました。
サム・ギャレットを信じる味方は保安官だけじゃありません。ジェフリー殺害の冤罪で逃亡中の彼をかくまう牧場主ジョンを演じたのはジョン・バーサ氏
John Bartha (1920-1991)
若い頃はサッカー選手として活躍したそうです!映画界に足を踏み入れてからは、数多くの有名作品に名を連ね、とくにマカロニウエスタンでは「保安官と言ったらこの人」といううくらいに知られた顔になりました。
ジョンの娘ナンシー(あるいはデイジー)を演じたのはイタリアの女優さん、エリサ・マイナルディ女史
Elisa Mainardi (1930-2016)
ローマの演劇学校を卒業し、若い頃から舞台で活躍。その後映画でも様々な監督のもとで素晴らしい作品を残しました。
対照的に、サムをアンダース殺害の犯人と決めつけて窮地に追い込むのは、アンダース未亡人とその娘(この二人の名前、国によって "エライザ" と "リタ" でまちまちに成ってます。ドイツではなぜかどっちも "Eliza" 笑)。しかし!彼女らと保安官たちが痛快などんでん返しを演出してくれます。
お母さんの方を演じたのは Dina Loy 女史(詳細不明です、ごめんなさい)、娘の方を演じたのは Paola Barbara 女史 (1912-1989) 実は本作の監督 Primo Zeglio 氏の奥方であります。もともと歌手として大活躍した方だそうです。マカロニウエスタンへの出演は「スレッジ」「さらば殺し屋」など。
さて、そんなパオラさんの夫にして本作の監督が
プリモ・ゼリオ氏
Primo Zeglio (1906-1984)
1930年代から映画界で様々な仕事をこなし、1943年監督デビュー。その後はマカロニウエスタンを含むさまざまなジャンルで作品を世に残しました。また画家としても有名でアート系の雑誌の編集者としても活躍、晩年は映画界から離れ、画家として展覧会に作品を出品することをメインにしていたそうです。
そして本作の正統派な作風かつスピード感ある展開を彩るサントラを担当したのはマルチェロ・ジョンビーニ氏
Marcello Giombini (1928-2003)
イタリアの巨匠としてお馴染みで、当ブログでも幾度となく紹介いたしましたので詳細は割愛しますが
マカロニウエスタンや映画音楽のみに非ず
カトリックの宗教音楽(典礼音楽)においては革命的存在としてその名を歴史に刻み
電子音楽においてはイタリアの最先端パイオニアとして君臨した、そんな希有な才能の持ち主であります。
彼が生み出すマカトラ(マカロニウエスタン・サントラの略)は、とにかくスピード感があって親しみやすい楽曲が多いのですが、本作でもジョンビーニ節は健在。
とくにメインテーマ "Ranger" は勇壮かつ疾走感にあふれ、男声コーラスの勇ましさとともに耳に残る傑作です。
(僕の敬愛するマカロニ道の先達 保田氏のチャンネルからの引用です、いつもレアで素敵なマカロニウエスタンのサントラをUPしてくれます、是非チャンネル登録を!)
素晴らしい歌声は(一聴しただけれ彼とわかる)
ラオール氏
Raoul Lovecchio (1939-)
言わずと知れたマカロニ・サントラ界のビッグネーム。
この声は唯一無二、ですね。
僕ももちろん大好きなのですが
カバーする立場になると、この声にはどうやっても勝てっこなくて、しかしながら別なスタイルで歌うと、曲自体が別物に感じちゃう、という
もうこの人の歌声自体がアレンジというか、音楽そのものなんだ、と。
それくらいにパワーのある声、歌唱であります。人間国宝に認定したい。
てなわけで臆しながらも、今回もカバーにチャレンジしました。お聴きくださったなら幸いです。
寒い日が続きます、みなさまくれぐれもご自愛を。
アディオス、アミーゴ!
(^-^)