Mannaja (1977)

1977年ですよ。

マカロニ晩期も晩期、アメリカでは「スターウォーズ」や「サタデーナイトフィーバー」、イギリスでは「007私を愛したスパイ」日本では「八つ墓村」の年であります。

ちなみに「アリ・ザ・グレーテスト」で "Ali Bombaye" 劇場で大音量で流れていた年でもあります。

 

まあ「こんな時期に今更かよ」と

言いたくもなるほどのマカロニウエスタン末期ですが

なかなかの傑作。

 

日本では劇場未公開ですが「ハチェット無頼」のタイトルでメディアリリースされております。

 

英語圏では "The man called Blade"

 

"Mannaja" (手斧の意)と呼ばれる主人公は

その名が表す如く斧を武器にしています。

 

もちろん拳銃の腕前も一流。

 

肉弾戦もつよつよです。

(泥まみれで誰が誰だか判らなくなってますが)

 

そんな「マンナーヤ」を演じたのはマウリツィオ・メルリ氏

Maurizio Merli (1940-1989)

イタリアの演劇アカデミー出身の彼は様々な映画に出演の後いわゆるユーロクライムのジャンルでブレイクし

"Roma violenta" でトップスターの仲間入り。

1973年のヒット作「死神の骨をしゃぶれ」(エンツォ・G・カステラッリ監督)にあやかった続編的なものを、との意向で作られたものの同作の主演フランコ・ネロ氏が出演かなわずマウリツィオ・メルリ氏に白羽の矢が立ち、雰囲気を似せるために生やした口髭がその後メルリ氏のトレードマークになったそうです。

ちなみに「死神の骨をしゃぶれ」のネロ氏

うむ…「続・荒野の用心棒」のネロ氏と「皆殺しのジャンゴ」のテレンス・ヒル氏の逸話に通じるものがありますね。

 

マンナーヤは寂れた町サットンに賞金首の換金のためにやって来ますが、この町こそ実は彼の故郷。

かつては平和な町だったけれど今は、やり手の資本家マッゴーワンが恐怖政治で支配するこの町。

マンナーヤの父親もマッゴーワンの欲望の犠牲者だった、という。いわゆる復讐劇仕立てではあります。

 

ところが、物語はそう単純はありません。

マカロニも晩期、いろいろな趣向を凝らして観る者を飽きさせません。

 

憎たらしいエド・マッゴーワン、話が進むにつれ

ちょっと同情したくなる要素も。

演じたのはフランスの俳優フィリップ・ルロワ氏

Philippe Leroy (1930-)

1960年代から息の長い俳優活動を続け、有名どころではリュック・ベンソン監督の「ニキータ」への出演や、なんと高倉健氏が主演の日本映画「海へ ~see you~」にも出演されています。

 

マッゴーワン組の番頭格ボレルは、ちょっと出来の悪いイキり野郎かと思いきや、これがラスボスだったという意外なプロット。

ハゲタカのような出で立ちがかなりカッコイイ。

演じたのは英国俳優ジョン・スタイナー氏

John Steiner (1941-2022)

王立演劇学校出身(レイフ・ファインズ氏やトム・ヒドルストン氏の先輩ですね!)でシェークスピア演劇などで活躍、マカロニウエスタンへの出演は「復讐無頼」、その後もユーロクライムやB級アクション映画でカルトな役で人気を博しましたが1991年突如俳優業を辞し、カリフォルニアに移住して不動産業で成功されたそうです。

 

意外な、といったら物語のどんでん返しを見事に成し遂げたのがマッゴーワンの愛娘デボラ。

演じたのオーストリアの女優、ソニア・ジャニーヌさん

Sonja Jeannine (1956-)

オーストリアの舞台で活躍後、セクシー系の女優として花開き、イタリアのエクスプロイテーション映画でも大活躍したのち、オーストリアの舞台演劇の世界に戻り、1983年の婚約後はショービジネスから引退されたそうです。

 

かたや、主人公マンナーヤとの淡い恋も実ること無く悲劇的な最後を迎える健気な女性アンジェラ。

演じたのはマルティーヌ・ブロシャールさん

Martine Brochard (1944-)

パリ生まれ、イタリアで活躍した女優さん。こちらもセクシーな役柄で本領発揮、映画やTVなどでの女優活動だけでなくバラエティやダンス、舞台に音楽とマルチに活躍されたそうです。

 

アンジェラたちショーガール(というか娼婦たち)を率いる気のいい興行主ジョニーがとってもいい味だしてます。

(彼も残念ながら凶弾に倒れてしまうのですが…)

演ずるはサルバトーレ・パンティロ氏

Salvatore Puntillo (1935-)

ジャンル問わず、映画にTVにバイプレイヤーとして大活躍されたイタリアの俳優さん。マカロニウエスタンへの出演は「暁の用心棒」や「デュランゴ」として知られる "Arriva Durango... paga o muori" そして「荒野の処刑」でチャコの手下の一人として出演されています。

 

そして冒頭のショッキングなシーンから、見事な伏線回収に一役買った賞金首バート。

演じたのはドナル "ドナルド" オブライエン氏

Donal "Donald" O'Brien (1930-2018)

アイルランド出身の俳優さんで、舞台演劇で活躍ののちフランスに移住、映画俳優として数多くの仕事をこなし1968年の「続・復讐のガンマン~走れ、男、走れ」のキャシディ役を皮切りにマカロニウエスタンの常連となり、本邦未公開作品ふくめ相当数の出演が確認されます。有名どころでは「荒野の処刑」や「ケオマ・ザ・リベンジャー」「シルバーサドル」など。その後もジャンル問わず「イエティ」や「イングロリアス・バスターズ」などイタリア映画で大活躍されたそうです。

 

ボレルの手下役で、マカロニウエスタンではすっかりお馴染みのネロ・パッツァフィーニさんも活躍しております。

Nello Pazzafini (1933-1992)

もう説明不要ですね。サッカー選手~フェンシングの達人~殺陣師ならびにスタントマンを経て、イタリア映画界で悪役として問答無用の大活躍!

 

さてこれだけの豪華キャストを揃え、歯ごたえのある物語を見事に映像化した監督がセルジオ・マルティーノ氏

(第○のセルジオ、とはもう言わない)

Sergio Martino (1938-)

ちなみにお兄さんのルチアーノ氏も "Tu fosa será la exacta... amigo" などを撮った映画監督さん。

数多くの映画でメガホンをとり、その後主軸をTVに移して活躍されたそうです。

マカロニウエスタンでの監督作品は「アリゾナ無宿・レッドリバーの決闘」や "Per 100.000 dollari ti ammazzo"  "7 pistole per un massacro" などが挙げられます。

 

こんな「ハチェット無頼」

サントラを担当したのは後期マカロニウエスタンではお馴染みのグイド&マウリツィオ・デ・アンジェリス。

Guido De Angelis (1944-)

Maurizio De Angelis (1947-)

多彩な音楽家兄弟としてイタリア映画音楽界では最重要人物のひとり(いや、二人)。前にも述べましたが「ウエスタン (Once upon a time in the West) の「シャイアンのテーマ」でバンジョーを弾いてるのがマウリツィオさん~モリコーネ師、絶賛。ちなみにイタリア版「ドラえもん」「あしたのジョー」「銀河鉄道999」のサントラも手がけているそうです。

別名「オリバー・オニオンズ」としてインターナショナルな活躍もされていて、なんと2007年以降はグループとしての演奏活動を再開しているそうです!

 

「ハチェット無頼」は、その男気あふれる映像にマッチした、ダークで力強い音楽が特徴的です。

主題歌 "Wolf"

 

挿入歌 "Snake"

どちらも "sung by Dandylion" のクレジットがありますが

残念ながらどんな歌手の方なのか存じ上げませぬ…

(とある書き込みに "Caesare De Natale aka Dandylion" というのを見つけましたが、確かにイタリアの作詞家に Caesare De Natale という方がいらっしゃってデ・アンジェリス兄弟と仕事されているのですが、同一人物かどうか確認出来ませんでした…)

 

 

ともあれ、やたら個性的な「ハチェット無頼」のサントラ。カバーするにもあの低音ボイスが僕には鬼門だたので、通常の音域で歌ってみました。若干ロックフィーリングを加えてアレンジいたしました。

お楽しみいただければ幸いです。

 

 

寒い日が続きますが、アツいマカロニウエスタンを鑑賞して、身も心も熱くいきましょう!

 

アディオス、アミーゴ!

(^-^)