マカロニ紳士録59

エル・チュンチョ

El Chuncho Muños

1966「群盗荒野を裂く」より

メキシコ革命活動に身を捧げる無学な荒くれ者。襲撃した列車に居合わせた若い米国人ビルと友情を育みながら革命活動に邁進する。無謀なやり口で失態を演じ革命軍将軍から処刑宣告を受けるが、ビルに命を救われた。彼から裕福な生活への転身を提案されるものの信念を貫いた。

 

演じたのは名優ジャン・マリア・ヴォロンテ氏。

素晴らしい役者さんですね!

マカロニウエスタンには4本の出演のみですが、いずれも強烈かつ違った魅力に溢れています。

(ラモンとエル・インディオでさえ、似ているようで全然違うキャラクターを確立してますよね)

 

 

そして相棒は

マカロニ紳士録60:ビル "ニーノ" テイト

Bill "Niño" Tate

1966「群盗荒野を裂く」より

列車強盗に居合わせた青年を装っているが、実はメキシコ政府軍から革命軍将軍の暗殺を依頼された殺し屋。革命軍に潜り込み将軍に近づいて目的を達成すると共に、ならず者だが無邪気で心優しきチュンチョの処刑を阻止して救出、米国での新生活を提案する。

 

演じたのはルー・カステル氏

マカロニウエスタンでは「殺して祈れ」や「Matalo!」などが知られていますが、その後はフランスで大活躍。

 

「群盗荒野を裂く」

イタリア国内の政治腐敗や犯罪組織などを描いた作品が有名な「社会派」ダミアーノ・ダミアーニ監督作品。

日本では1968年に劇場公開。

 

たしかに「痛快マカロニ!」って感じではありません。

冷酷さや残忍さと、優しさや正義感がすぐ背中合わせに同居しつつ、友情や兄弟愛がしっかり描かれ、かつそれが破綻するという衝撃的な展開もさすが、という感じ。

 

この手の映画は好きな人が語り出したら止まらないほどの蘊蓄がでてくるでしょうが

「マカロニ紳士録」的には、メイン二人のギャップが素敵だなあ、と。

 

チュンチョはならず者。どうしようもないほどの。

無学で卑しくて、盗むは殺すは犯すは、やりたい放題。

無学で無謀ゆえに革命活動においても大失態を演じ、数多くの大切な仲間を失う結果に。

でも、純粋。

襲った列車に乗り合わせて途方に暮れているビルを助け、仲間に加えて好待遇。おまけにビルが熱でうなされれば献身的な看護をいとわない。

 

 

対してビルはスマート。

いかなる時も冷静に対処して最善を見つけ出す、凄腕の殺し屋。

仕立てのよいスーツを着こなし、目的遂行のため一歩一歩、道を逸れることは絶対にない、他人に気を許すなどあり得ない…はずだったが

あまりに純真なチュンチョと行動を共にするうちに、彼に対して一定の理解を示し、特別な友情が生まれ、結果任務にはない「チュンチョの救出」を、リスクを負ってまで実行してしまう。

 

 

この正反対の「ギャップ萌え」コンビの友情。

 

将軍の死(ビルによる狙撃)によって革命は頓挫し

道を失ったチュンチョに対して、なんと

合理的この上ないはずのビルが、将軍殺害の報奨である大金の半分をチュンチョに進呈、ともにアメリカで暮らそう、と提案。

ビルはチュンチョをダンスホールに連れて行き、美容院で髪を整えさせ、小ぎれいなスーツを与え「文化的」な暮らしとはこういうものさ、と教え、米国行きの列車の待つ駅へ。

「列車なんて…襲ったことはあるが乗ったことはないんだ」などと嘯きながらまんざらでもないチュンチョ、しかし顔色が変わった。

貧しいメキシコ人の子供を押しのけ列に割り込み、二人分の切符を買ったビルは「さあ乗ろう、アメリカでの新しい生活だ」とチュンチョの手を引くが…

 

「俺は、お前を…」

チュンチョは取り出した拳銃を構え

「なぜ?なぜだ」と取り乱すビルに向かって銃弾を撃ち込んだ。

 

答えるチュンチョ

「Quien sabe?」

誰が解るっていうんだ?=俺も解らないんだ

 

ギャップ萌えのコンビは、それぞれの思考の強烈な、越えられない壁に隔たれたギャップによって唐突に終焉を迎えてしまいました。

 

「メキシコは嫌いだ」とずっと公言し続けたビルと

手にした大金をメキシコの貧民たちにばら撒きながら「パンなんか買うなよ、ダイナマイトを買うんだ」と叫び散らすチュンチョ。

 

あまりに純粋な二人の、偶然の邂逅。

この奇跡的なわずかな月日が描かれた傑作

「群盗荒野を裂く」

暑い日差しの中、誰もが理想のために走っていた…まるで自身の青春の1ページを反芻するような、うっとりした気分に浸れること請け合いです。

 

日本版ブルーレイもリリースされていますので、ぜひご鑑賞くださいませ!

 

 

そして音楽担当は巨匠ルイス・エンリケス・バカロフ氏。どこかノスタルジックなメロディがまた、映画の持つ重みとのギャップでより美しく感じます。

こちらはサントラを25分ほどにまとめたものです。

とくにギターの美しさに魅了されること間違いなしです!

 

僕はこの中にも含まれてる('13"29~)のテーマ曲をカバーしてみました。

 

ギターの調べをスラップベースに変えて…

お楽しみいただければ幸いですm(_ _)m

 

 

それにしてもマカロニ紳士たち、いずれ劣らず個性豊かでかっこいい!

まだまだ続きます、乞うご期待~^^

 

 

アディオス、アミーゴ!

(^-^)