「3」という数字に特別な意味がある、と、かつて語ったのはキングクリムゾンの総帥ロバート・フリップ。

 

その名も "Three of a Perfect Pair" というアルバムをリリースした80'sバージョンのキングクリムゾンは確かに、ギターx2とベース(or スティック)という弦楽器3本が織りなす、まるでペルシャ絨毯のような「ミクロでは緻密、有機的 / マクロでは詩的、抽象的」という独特のアンサンブルが売りでした。視点を変えればギターとベースとドラムという3種類の楽器によって構成された音楽でもあり、音楽内容的にも弦楽器たちが奏でる2つのポリリズムにドラムを加えた3つのリズムが常に同居しているような作りだし、アルバム一枚一枚の内容も3パートから成り、かつ3枚で完結するように感じられます。

続く90年代のキングクリムゾンは、その思想をさらに大胆に具現化した「ダブルトリオ」すなわち3人組が2つ同時に存在する―まさにThree of a Perfect Pair―形式を発案。

さらに2015年版は何とドラムが3人いるという破天荒な「3」へのこだわりを見せました(ここでも弦楽器は3人、3層構造の音楽)。

 

哲学者か数学者か、あるいは神秘学者か…といった風なフリップ師の論理に僕をはじめ多くのファンは心酔したわけですが、最近はあり得ないくらい親しみやすい姿で我々を魅了しています。

 

いきなり逸れた話題からで恐縮です…

 

さて

4人のメンバーで「Three of a Perfect Pair」

このコンセプトというか、成り立ちをすでに1968年に達成していた映画こそ「荒野の三悪党」なのです。

 

ん「三悪党」なのに4人いるじゃん!という。

そこがポイントです。

 

新星(当時は、ね)テレンス・ヒルとバッド・スペンサーの「キャット&ハッチ」コンビが、謎めく悪党カカポラス(実はギリシャ人とか⁉)、黒人軽業師ナイスガイなトーマスと、行動を共にする羽目に…

この、3つの人種の4人が3つの立場で、現金強奪(というか奪還)と過去の復讐(復讐相手も3人~ハロルド、パコローザ、ドレイク)を、町~メキシコ~カジノと3つの場所で繰り広げる、というお話。

 

あは、なんのこっちゃ!ですね文章だけ見ると。

ま、実際ちょいと入り組んだ内容のストーリーなのですが、見どころ満載&リラックスした雰囲気でサラリと観られます。

 

そんな「荒野の三悪党」の音楽をカバーしましたのでご紹介。

(今まで長い前フリでした、失礼…)

 

音楽担当はカルロ・ルスティケッリ氏。

Carlo Rustichelli (1916-2004)

 

もとはオペラなどの音楽家、のちに映画音楽の大家となり「鉄道員」や「刑事(1959)」「ブーベの恋人」などが有名ですね(「裏切りの荒野」も彼が担当しています!)。

 

今回のカバーは、メインテーマ(とそのモチーフアレンジ)、メキシコでのお祭りの際の曲、そしてラストの優雅なワルツ、で構成しました。

ぜひお楽しみください!

 

お聴きいただけると納得いただけると思うのですが、シンプルながら印象深いメロディが素晴らしく、とくにクライマックスでのワルツの美しさと言ったら!!

 

遂に15年待ち焦がれた復讐の機会を得たカカポラスと仲間たちは、ルーレットを挟んで悪漢ドレイク一味と対峙、決闘の時。

 

いざ!というときにカカポラスが叫びます。

「ちょっと待て!」と

ん?といぶかる一同を前に

「15年、15年もの間、この日を待ち焦がれたんだ」

 

「それで?」

尋ねるキャットに微笑むカカポラスが言う。

「音楽だ。ああ、スロウで、甘~いワルツだ!」

 

カジノの演奏家たちは、実に優雅なワルツを奏ではじめ

カカポラスとドレイク両陣営は対決の瞬間を前に、ルーレットを挟んでゆっくりと後ずさり…

 

もうマカロニウエスタン史上、いや映画史上に燦然と輝く「かっこいい決闘シーン」じゃないですか!

 

カカポラスを演ずるのは名優イーライ・ウォラック。

人懐っこくて賢いけれどどこか抜けてる、図々しい男。口癖は「うちの爺ちゃんが言ってた」

見事にキャラが立ってます。それでいてキャラに頼らない深い人情も表現されていて、さすがアクターズスタジオ最初期メンバー、と唸らざるを得ません。

 

キャット・スティーブンスはテレンス・ヒル

ニヒルでクール、まさに「マカロニ・ヒーローなガンマン」

もちろんキャットの相棒はハッチ・ベッシー。演ずるはバッド・スペンサー。

怪力無双の荒くれ男。でも根は優しかったり情に絆されやすかったり…

 

途中から合流する軽業師のトーマスはブロック・ピータースが演じております。

高い身体能力、銃の腕も一流。妹思いの頼れるナイスガイ。

 

ほら、実にキャラ構成が巧みですよね。

ゴレンジャーシフト(ガッチャマンシフト?)から主人公を抜いたような四人組です。

熱血正義オタクな主人公キャラがいないがゆえに、物語は予想できない方向に走り出したり、思わぬ危機をむかえたり、意外な感動に出会ったり…という。

 

ラスボスはカジノ王ドレイク。ケヴィン・マッカーシーさんがいい感じにダンディで憎らしい、でもちょっと男気ある悪役を演じています。

 

とにかく画的にもかっこいい対決シーンは必見ですね~

 

そして本作は「キャット&ハッチ」シリーズの第2作目でもあるのです。「風来坊」やその後の幾多の作品で名を馳せたテレンス・ヒル&バッド・スペンサーの起点を考えると、なかなかに感慨深いものがあります。

 

大事な時に我を忘れてブチ切れちゃうカカポラスのアクションシーンも楽しめます。

 

 

そんなわけで、原題「I quattro dell'Ave Maria」~アヴェマリアの四人ですが

本邦公開時は「荒野の三悪党」

日本人はなにかにつけ「三大」みたいのが好きなようです。

そして売り出し中のテレンス・ヒルがフューチャーされております。

 

アメリカでは "Ace High"

こちらはやはりアメリカ人のイーライ・ウォラックを押し出しております。

(Iron Maiden の "Aces High" との関連はありません…と、またロックネタを強引に入れ込んでみました)

 

マカロニウエスタンの中でもそこまで有名な作品ではないかもしれませんが、キャストも内容も素晴らしく、ぜひ機会があったらご覧いただきたい一作です!

 

そして美しいメロディに溢れたサントラは必聴!であります。

 

 

かのラリー・グラハム氏は言いました。

「新しいものが良いとは限らない。しかし古いものが全部良いわけじゃない。古くて良い、これをアンティークと呼ぶんだ」

 

隠れたアンティーク「荒野の三悪党」機会があったらぜひ!

 

アディオス、アミーゴ!

(^-^)