マカロニ西部劇テーマ曲のカヴァー企画「荒野の七曲」、第6弾は

 

 

「ウエスタン」!

レオーネ&モリコーネの黄金コンビ最大の傑作と言ってもいいでしょう。

TIME誌が選んだ、映画ベスト100に選ばれたことでも有名です。

 

ともあれ、早速リンクを貼ります

 

この映画。

 

とにかく素晴らしいのですが、僕の周囲では認知度は低かったり…

(すごくざんねん

 

「西部劇」しかも、古い(1968年)、というだけで

おそらく99%の現代日本人は鑑賞することから遠ざかるかもしれません。

 

しかし、ええ。Easy come, easy go.

お手軽に得られるものからは何も残りません。

 

変な先入観なんかを捨てて

175分、この大西部に身を置いてみましょう。

言質を超えた何か~ある意味、もうひとつの人生体験と言っていい~が心に深く深く残ることでしょう。

 

登場人物は、いずれも「善」でも「悪」でもない。

反吐が出るほど汚い部分、ずる賢い部分を持ちながら、夢を見続ける少年のような純粋さ、夢のためなら命を賭けることも厭わない勇気を持ち合わせていて

かといって気張っているわけでもなく、いつも自然体。

 

すっごーく、人間くさい。

キレイもキタナイもマジメもズルイも、みんなそれぞれ抱えてて隠しきれてない。

 

その分、画面に漂う空気にもウソが無い。

 

 

ハーモニカ男

虚無的、けれど行動派。武骨、GUNの腕は超一流。

「古い西部の男」を体現する、ある意味ステレオタイプなウエスタンヒーロー像。

彼がハーモニカを吹くのには意味がある。

 

 

殺し屋フランク

こちらも凄腕。典型的なピストレーロ。

「これぞガンマン」といった生きざま。銃のウデでのし上がって来た感バリバリ。

けれども、銃だけで得られるチカラ、カネには限りがあることも薄々感づいていて

実業家に成り代わろうとするが、その辺はどうもガンマンの癖が出てゴリ押しが過ぎて

どうも拙い…

彼なりに、苦悩して新時代に対応したいと思ってはいるが、それが出来るほど

(彼自身が思っているほど)器用ではないってあたり、実はシンパシーを十分に感じ得るキャラ。

ヘンリーフォンダさま、さすが。恐怖や冷徹、残酷一辺倒でなく、どこか哀れさをも醸し出しています。

 

 

ならず者のシャイアン

前二者にも増して「オールドタイプ」な男。

ならず者にして犯罪集団「シャイアン一味」のリーダー。

最初に登場シーンでは、いきなり悪のオーラ満開。ひと睨みで場の全員がチビりそうな。

 

しかし物語が進むにつれ、実は純粋で真っ直ぐな男だと知らされます。

義理がたくて、男気があって、信じるに足るヤツ。

こういう男は、一生の友達にしたいものです。

 

そして実は母親コンプレックス→母性への強い憧れ、が明らかになってゆきます。

「母親と同じ味」のコーヒーを飲んで、ひっそりと眠るように逝った彼は、実は一番幸せで、一番人間らしいキャラだったかも知れません。

 

 

 

ニューオリンズからやって来た高級娼婦ジル

「もう人生のすべてを経験したと思ってた」そう言い切るほどですから

都会ニューオリンズで、たいへんな場数を踏んできたことでしょう。

それも納得の美貌。立ち居振る舞いもフェロモン全開。

 

大都会で上昇志向を胸に、酸いも甘いも経験したビッチが

しかし、汚い男たちが行き交う、な~~んもない西部のど田舎にやってきて

爛々と目を輝かせています。

 

全てを経験したはずの彼女は、「普通にひとを愛する」経験だけは無かったのでしょう。

アイルランド出身の生真面目なダサ男、マクベインの元に新妻として砂漠へ。

 

しかし、いきなり夫と家族の死体に直面、早速未亡人に。

戸惑い、愛の貫き方を模索し、一時は投げやりになってしまうジル。

 

でも、ハーモニカ男やシャイアンといった、武骨だけどウソが無い、正直で純真な西部の田舎オトコたちに接するうちに「夢」を見出し、それを生きる希望へと変えていきます。

短い期間だったとはいえ、知ってしまった「本当の愛」を貫こう、と決意し、亡き夫マクベインの愚直な夢を引き継ぐためなら、再び泥水でもすすってやる。

そんな「女の強さ」も発露しながら、ハーモニカ男の後ろ姿に心ときめかせ、シャイアンの童心を溢れんばかりの母性でしっかり受け止めて

 

無様に死んでいったり、行き場を失い去るより他にない「オールドタイプの男たち」への憧れを抱きながらも

唯一、新しい時代に対応し、亡き夫や去っていった男たちが成しえなかった「夢」を切り開く、強い女性として開花してゆく。

 

ああそうか、この映画の真の主人公はジルなんだ。

 

姿を変えた「風と共に去りぬ」なんだ…

 

 

 

病に伏しつつも夢を追う鉄道屋モートン。

鉄道会社のトップ、住人達を追い出すために殺し屋を雇う、カネで何でも解決する

言わば「西部劇の典型的悪役」

 

でも、彼も実は「純粋な古い男」のひとり。

ひたすら夢を追って来た武骨な男なはず。

事業を起こし、多分がむしゃらに働いて成果を上げ

遂に、憧れの太平洋(記者の自室に絵まで飾ってる)への夢が実現しようという

まさにその時期、病に倒れ、悪化の一途。

焦る彼は、ますます愚直に彼なりのやり口で物事を進めます。

 

「カネで何でも買える」そう信じて生きてきた彼ですが

その思想すらも、大きな時代の流れの中では「バカな男の戯言」だったりします。

 

夢のため、皆の為、合衆国のため、そう信じて邁進してきたモートンは

哀れ過ぎる死に際、何を思ったのでしょう…

 

 

そんな5人。(ついでに、大西部に夢を託し全てを投げうったマクベインさんも含めて6人)

どれもシンパシーを感じることのできる彼らの人生が、ふと

大きくうねりながら変化してゆく西部に交錯します。

 

それは、時代が移り変わる、まさにその時。

古い者は退場を余儀なくされ、価値観も変わってゆく。

自由で気ままで、実力本位。わかりやすい「西部」が終わりを告げる時でした。

 

一番弱そうで、チカラもカネも無さそうな、ただの娼婦が

凛と立って生き残り、男たちに笑顔で未来を手渡している。そんなエンディングシーンは

まさにグレイトマザーのそれ。

 

最後に勝ったのは偉大なる母性だったのか、そうも思えてきます。

 

 

 

 

 

こんな傑作、観てないなんてどうかしてるぜアミーゴ!

 

 

さて、本題のカバーですが。

 

巨匠モリコーネさんは、この映画の為に大きな括りで三曲。

それおれの人生を表現するテーマ曲を作り、それを元に監督セルジオレオーネ巨匠がイメージを膨らませた、と云います。

音楽に合わせて画面(映像)を作るなんて!

 

これってまさにオペラ。

各人のテーマ曲を変奏しながら物語を進めていくってあたりもそう。

さすがのイタリアンですね!

 

 

1曲目は、ハーモニカ男のテーマ曲。

 

まさに、ハーモニカが印象的な哀愁漂う曲ですが

一方、彼にとっての重要人物、殺し屋フランクとの過去も、この曲に内包されています。

 

小さな風が、次第に強くなり

遂に運命の時を迎える。そしてすべては運命と時代に押し流されてゆく。

そんな曲です。

 

今回のカバーでは、冒頭にあの「風車」の音をサンプリングして挿入

ファンクなリズムに乗せて、ハーモニカならぬ鍵盤ハーモニカ。

さrない必殺のフェイザーベースでメロディを引き継ぎました。

 

 

 

続いて、この映画のメインテーマともいえる「ジルのテーマ」

ひたすら美しく、優しい。

 

出ましたモリコーネ節。素晴らしい。

 

雄大な景色を想起させつつ、様々な過去を洗い流すような、繊細で力強いメロディ。

甘く優しい母性をも感じることが出来る名曲です。

 

 

今回は、フェンダーローズのハーモニーの中を、ジャズギター風の「うそギター」

そしてフレットレスベースが引き継ぎ、ウッドベースが支える中を、再びジャズギター風のサウンドがアドリブします。

コードにそって、ただインプロヴァイズしたのではなく

ひたすら、ジルとその生きざま、大西部に思いを寄せて弾ききりました。

 

 

3曲目は「シャイアンのテーマ」

 

ほのぼのとした空気感、どこかユーモラスな響き。

この曲こそ、この映画に深みをあたえている、そう思います。

 

ハードボイルド一辺倒なハーモニカ男~フランクの因縁

繊細な美の極致、ジルの生きざま

この二曲に、シャイアンのまるで童子のような純真無垢な人間味が交じり合うことで

壮大な人間ドラマが完成するんだ、と。

 

楽し気で、すこし滑稽で

でも、その奥底に、どこか淋しさというか

満たされない何かを保ち続ける、そんな曲。

 

 

今回のカバーでは、思いっきりファンキーにアレンジしました。

儀のため、自身の正義を貫くために突っ走るシャイアン。

でも、それは傍から見れば少し可笑しくもある。そんなイメージ。

 

 

 

3曲を組み合わせて出来上がりました。

RYUKIによる「ウエスタン」カバー。

 

お楽しみいただければ幸いです。

 

もっと言えば、ぜひ映画をご覧になっていただければ、幸いです。

 

 

 

 

 

 

さあ、次回で七曲目。

ぬかるみのなかにレンコンを準備しようじゃねえか、アミーゴ!

 

(^-^)