8月13日にお届けしましたラジオ「幻界からの一撃!」
(i-wave76.5FMいちのみや インターネット聴取も可です)

この日は、サックス奏者、キングカーティスの命日でございました。


1960年代、ソウル系アトランティックレコードの中心人物として
アレンジや音楽監督など大活躍。
独特のピーキーなサックススタイルは後年のデビッドサンボーンや
トムスコットに大きな影響を与えたと言います。
果ては、後の「フュージョン」に至る道程を作り上げた偉人の一人としても
記憶されるビッグな存在。

1970年代もソウル系はじめ自身のバンド「キングピンズ」を率い
シーンを沸かせました。

1971年8月13日、暴漢に刺され帰らぬ人となりました。RIP。



以前、キングカーティスつながりで
その「キングピンズ」のリズムセクション
バーナードパーディとジェリージェモットの
「黄金ソウルブラザーズ」を特集しましたが


もう一人、キングカーティスを支えた達人ベーシストがいます。


チャックレイニー



番組では、キングカーティス1966年の名ライブアルバム
"Live at Small's Paradise" から

ファンキーこの上ない "Pots and Pants" をお届けしました。


ワンコードのグルーヴの中で叫び歌い泣くカーティスのサックス。
お手本の様なギターのカッティングはコーネル先生。
ひたすらスネアが気持ちいドラムはレイ・ルーカスさま。

そして、ずっしりと、時に軽やかに駆けるベースライン。

チャックレイニー26歳、初期の名演です。



兵役中にギターをマスターした、というチャック。
その後NYに渡りベーシストに転向。

スタジオワークやプロとしてのライブを始めた頃と推察されます。




おそらく、チャックレイニーの
確認しうる最初のレコーディングは
ジャズ系のテナーサックス奏者、Red Hollowayのアルバム。



"Big Fat Lady" from "Red soul" by Red Holloway 1965


ちなみに
ウォームに歌うファンクギターは、ジョージベンソン。
ソウルほとばしるオルガンは、ロニーリストンスミス。

踊りたくなっちゃうね!



チャックレイニーは
その後、数々のジャズ~ソウル系のミュージシャンたちの間で売れっ子となり
数え切れないほどのレコード、ライブでベースを披露しています。


これも貴重な初期のセッション。
この頃から独特の「はずむ」感覚にあふれています。
"It's Crazy" by Eddie Harris 1968


ギターレスなぶん、ベースが上下に動いて
スペースを生かして躍動感を出している、そんな印象。






ソウル~ファンキー系の最重要ベーシストの一人となった
チャックレイニー氏

1970年代に入って
アレサフランクリンのバックバンドなどで活躍します。

"Old Landmark" 1971


ライブならではのドライブ感!


これぞチェックレイニー節、というような
プレベの音とフレーズに思わず身体が動いちゃう!

16ビートにおけるランニングベースの極意が
がっつり堪能出来ます。


ドラムはご存知バーナードパーディ。
ギターはコーネルデュプリー。



まさにソウル黄金時代。

(左から、コーネル、チャック、アレサ、バーナード)



ロバータフラック、ダニーハサウェイの
ニューソウル大御所二人のデュオアルバムでもグルーヴが光ります。
"When Love Has Grown"


こちらもドラムはバーナードパーディ御大。
グルーヴが気持ちいいギターはエリックゲイルさま。
美味しいとこもってくフルートはヒューバートロウズさま。

そして
随所に美味しいフレーズがてんこ盛りのチャック先生。

チャックさまのプレイって、
ベーシストのコピー教材にかなりイイと思うんですよね。

グルーヴの感じはもちろん
奇をてらわず、他の楽器とヴォイシング的にぶつからず
いかに躍動感のあるベースを構築するか、という点で
まさに教科書。


「ルートの連打しか思いつかなくて」
とか
「どうやってパターンを崩していいものか」
とか
「どういう音使いが他の楽器とぶつからないのか・・・」

という向きにはピッタリではないかと。



ソウル系三大大御所ベース(勝手に認定しました)
ジェームス・ジェマーソン
ジェリー・ジェモット
チャック・レイニー


の中では、チャックさんが一番、音数が多く感じるけれど
実は音使いはけっこうシンプル。


ジェマーソンのような切りこむシンコペーションよりも
さり気に上行と下降を(しかも1-5-8とかだから他を邪魔しない)
オンリズムでいくチャック様は

やや強引な引っ張りのあるジェマーソン先生や

ねっちりもっちりしたシンコペーションのへヴィネスさと
シーケンサー的なトランス感で
グルーヴをループさせるジェモット先生に比べて

軽快かつ都会的な印象。



やはり現代的ソウルベースの始祖ではないか、と。



かのジャコパストリアス氏も、チャック様からの影響を公言しています。



Jaco with Chuck

(てか親指、反りすぎ)




その後も(現在に至るまで)
数え切れないほどのセッション、ライブ、スタジオワークをこなし


グルーヴマスターの称号がふさわしい
ベース界の第一人者として活躍中です。




そんなチャックレイニーの、有名なベースプレイといえば


代表的なのは、このアルバムでしょうか
"Who is this Bitch, Anyway?" by Marlena Shaw 1974




疾走する16ビート! 
この訛った16分音符がたまらない。
4ビートでのスウィング感との対比がまた素敵な曲。

さすがのドラムはハービーメイソン大先生。
クラビネットのようなファンク炸裂のギターは
デビッドTウォーカーさま。
(この単音カッティング大好きで
「うそギター」で結構参考にさせていただきました)


他にもこのアルバムにはスウィートソウルと
グルーヴベースがたくさん収録されています。

(アルバムタイトルも素敵過ぎ!)




このアルバムもチャックレイニーなしでは成り立たない名作。
"Aja" by Steely Dan 1977


豪華すぎるセッションマンを、これでもかと投入し
しかしあえて「クール」で「空間を生かした」サウンドに徹底してこだわった

AORの最高傑作の一つ。


それにしてもこのベース

はずむ!はずむ! チャックレイニーの真髄の一つ
重いのに、ピョンピョンと軽快に跳ねるグルーヴが堪能できます。

"Josie"


この、スペース(=間)と
ツボ、というか野球のバッティング的にいうと「芯に当たる」ヒッティング。

永久に聴いてても飽きないような躍動感。



もう一曲、このアルバムでは "Peg" という曲が有名です。



アレンジの最高峰、とも言われるこの曲。

百戦錬磨のミュージシャンたちを贅沢に使い
緻密に、かつ大胆に練り込まれた楽曲。

よく聴くと
ドラム~ベース~ギター~エレピの四者が
これ以上ないほどに有機的に絡んで
豊かな「場」を作っているのがわかります。

ところどころ出てくるチャックレイニー得意技「II-V」での
ドミナント3度(10度)に解決するダブルストップが気持ちいい!

そして、有名な逸話
スラップ嫌いなスティーリーダンの2人に見つからないように
後ろ向きでスラップしたというサビ。

この「はずみ具合」最高です。
余計な力が入っていないのに、グングンくる。


ドキュメンタリー的に、レコーディングの模様が撮影されていたようで
アレンジのマジックが垣間見えます。
(ベースとドラムのミックスのくだり、超楽しい)




それにしても、こんな「完璧」「ノーミス」な
レコーディングを
彼らは、「せ~の」で、やっちゃうんですね(さすがっ)





古いものも、新しいものも
妙なこだわりなく取り入れて自由に演奏しても

まったくチャックレイニーさを失わない、というところ

表面上のテクニックやフレーズでなく
「音楽の核」をしっかりと持っている。

ということなのでしょう。


80年代後半以降は
カントリーピッキングに発想を得たような

ライトなスラップとカッティングを交えた
2ビートのベースプレイがお気に入りの様子。

当時最新鋭のスペクターベースを使ってのソロ、デモ演奏



多弦ベースも早速取り入れる御大。
こちらはワーウィックのベース。


実にタッチに無理が無く(かといってピッキングが弱いわけでなく)
そうそうハイファイでも、滑らかでも無い

むしろ訛りや、突っかかり、が
たくさんあるん
だけれど

全体として、流れるようにスムーズに
腰にくるグルーヴになっています。
ベースが「歌」であることの一つの証明じゃないかと思えます。




最近は "Xotic" のベースを使用しています。



2フィンガーで時折見られる、人差し指でのアップダウン。

これが彼特有の「オルタネイトピッキング感」を演出して

なんというか、訛った(引っかかった)グルーヴを出すんだけど
その訛りが実に気持ち良くて

「機械では出せないグルーヴ」
と言えるんじゃないかな~


左手の押さえ方や、フレーズの組み立て
ピッキングのスタイルなど
いろいろ含めて

チャックさんの影響をモロにうけてるのが
実はウィルリーさんなんじゃないかな、と思ってます。






次回は、そんな「マスター」チャックのソロ作について書きますね





(^-^)