Il lungo giorno del massacro (1968)
「虐殺の長い一日」
英語版も訳そのままに "The Long Day of the Massacre"
1968年、マカロニウエスタンの絶頂期に公開された本作は
仕事熱心な保安官が陰謀による冤罪で逃亡者に身をやつし、真相解明のために行動する、というプロットで
ジュリアーノ・ジェンマ氏あたりに似合いそうなストーリーだったりします(男気ある協力者や恋人の存在、極悪だけど憎めないメキシコギャングとそのファーストレディ的なクールな美女が出てくるあたりもそれっぽい)。
けれども本作はピーター・マーテル氏が主演。
なかなかにクセが強い主人公に仕上がってます。
(なんたってマカロニウエスタンでは悪役も多いですから)
Peter Martell (1938-2010)
スタントマンとしてキャリアをスタート、その後は脇役として多くの映画に出演(総数70本以上)、マカロニウエスタンでもよく見かける俳優さん。本作以外に "Due croci a Danger Pass" "Ringo, il cavaliere solitario" など幾つかの主演作があります。"Dio perdona… io no!" (1967) では主役のキャット・スティーブンス役にキャスティングされつつも、撮影前日のケガ(骨折)で降板を余儀なくされ、テレンス・ヒル氏が変わって主役を務めたという逸話は有名で、彼の不注意が結果的にテレンス・ヒル&バッド・スペンサーの超有名コンビを生み出したのかと思うと運命の数奇さを感じます。ちなみに「風来坊」も当初はピーター・マーテル氏とジョージ・イーストマン氏のコンビが想定されていたという逸話もあります。
彼が演じるのは保安官ジョー・ウィリアムズ。
腕は立つし正義感は強いけれど、なにせ荒っぽい。容疑者は有無を言わさず射殺してしまうという強引な手法には否定的意見も多いようで…
とくに裁判官は好ましく思っていないようで、冒頭からジョーを説得(説教?)しております。
演じているのはアンドレア・ファンタジア氏
Andrea Fantasia (??-1985)
フェンシングに長け、殺陣師およびスタントマンとして多くのイタリア映画に関わり、俳優としてもペプラム映画やマカロニウエスタンに出演されたそうです。また制作サイドでプロデューサーとしても活躍されたとのこと。
それでも強引な手法で保安官の務めに励むジョーの前に立ちはだかるのは凶悪なメキシコギャング団「ラ・ムエルテ」。
ボスはペドロという男。
演じたのはマヌエル・セラーノ氏
Manuel Serrano (1919-1981)
プエルトリコ系でNY出身、米軍の空挺部隊で相当な活躍をされ「タフで個性的なヤツ」で知られていたとか。その後ハリウッドで俳優活動をはじめ、ヨーロッパ映画で活躍しマカロニウエスタンでは本作以外に「ジョニーハムレット」のサンタナ役などが知られています。
実はかなり「出来上がった躯」をお持ちのセラーノ氏。タフな経験がそうさせたのでしょう。対するピーター・マーテル氏も元ミスター・イタリアなのだそうですが。
その割にお二方の拳闘アクションに関してはリアリティという意味でそこそこ(まあ当時はこんなものかも知れませんが)
演者の経歴に違わず、男気のあるキャラとして仕立て上げられているペドロは極悪ながらも、どこか憎めない存在だったりします。
そのペドロの手下、というか密偵であるクレイはジョーを排除しようと試みます。
クレイを演じたのはフランコ・ファンタジア氏
(前述のアンドレア・ファンタジア氏の弟さん)
Franco Fantasia (1924-2002)
ロードス島出身の彼は兄同様フェンシングの達人で、スタントマンや殺陣師としてキャリアを築き、剣劇系をはじめイタリア映画で大いに活躍されました(2000年までに130本以上の出演歴)。また後年は武器アドバイザーとしてもイタリア映画に貢献したそうです。マカロニウエスタンでもお馴染みの顔。
ちょっと間が抜けてるクレイは、見知らぬ農家夫婦の家をジョーの隠れ家と勘違い。勇んで襲撃したラ・ムエルテは「あれ?」と戸惑いつつも二人を殺害。
ここで存在感を見せつけたのはペドロの情婦パキータ。
演ずるは元ミス・イタリアのダニエラ・ジョルダーノ女史
Daniela Giordano (1947-2022)
ミス・パレルモからのミス・シチリア、そしてミス・イタリア、さらにミス・ヨーロッパコンテストの2位という輝かしい美貌を引っ提げ1967年女優デビュー、以後さまざまなジャンルで活躍、マカロニウエスタンでも「五人の軍隊」や "Buon funerale amigos!... paga Sartana" などで印象的な役柄をこなしております。1980年に突如女優業から足を洗いシチリアでUFO研究に勤しんだそうです。その後2015年に女優復帰を果たし2018年まで活躍されました。
やらかしたクレイに恐怖のお仕置きタイム。
そして本件をジョーの仕業に見せかけることに成功します。
ボス以上の冷酷さとクレバーさが際立ちます。
かくして7,000ドルの賞金首になってしまったジョー。
しかしメゲないジョーはラ・ムエルテの銀行強盗現場に赴き(たまたま?)ます。
そして彼らが盗み出した現金を強奪!
呆気にとられるペドロとクレイ(ちゃんと見張ってろよ)
しかしながら直ぐに追いつかれたジョー。
ギャング団に加わることを勧めるペドロ、断るジョー。
二人は素手での決闘を開始!
一進一退の攻防。
両者疲弊のタイミングで公安が追ってきたため、決闘は引き分けのまま強制終了となりました。
公安をやり過ごし、隠れ家に辿り着いたギャング団。優しいペドロはジョーの手足を縛りつつも、仲間達と一緒にぐっすりお休みタイム…
当然のごとく逃亡するジョー。
目覚めてジョーの不在に気づいたペドロの「二度見」がなかなか良い感じです笑
隣で眠そうなパキータ嬢(ペドロの情婦)も良い感じ笑
公安とギャング団双方から狙われる身となったジョーが心の拠り所としたのが恋人のララ。
ルイーザ・バラット女史(クレジットはリズ・バレット)が演じております。
Luisa Baratto (??-??)
1965年から女優業をはじめ、4年間に11本の出演作を残し1969年には引退されたそうです。ホラー映画やアクション系での活躍が目立ち、マカロニウエスタンでは「荒野のお尋ね者」「キラー・キッド」"Il pistolero segnato da Dio" のヒロイン役でお馴染みです。
二人を見守るララのお兄さん、アラン。
(インチキ薬売り)
演じたのはラルフ・イェッブ氏(クレジットは Ralph Webb)
Ralph Yebb (??-??)
実は彼についての詳細を渉猟し得ませんでした…汗
ご存じの方がいらっしゃいましたらご教示願いますm(_ _)m
ところが、いとも簡単に見つかってしまいます…
繰り広げられる逃走劇。
そしてまたしても呆気なく追いつかれてしまいます。
応戦するジョーとギャング団の銃撃戦が始まりますが…
気を抜いたジョーは再び囚われの身に。
カネの在処を知りたいペドロですが…
ジョーの縄を解いて、決闘の再開!
(前回水を差されたのと同じ態勢から、という義理堅さ)
結局不利になったペドロは銃で脅して再び(ていうか何度目?)のジョー捕縛。
吊し首になろうとも口を割らないジョー。
業を煮やしたパキータはまずアランを銃殺した上でララに酷いことするぞ!と脅しをかけます。
これには流石のジョーも降参。カネの在処を言わずにいられませんでした。
かくしてギャング団とジョー、ララはカネの隠し場所へ向かいます。
しかし待ち伏せしていたのは、ジョーの親友であり、ジョーの後任として保安官に就任したエバンス。
演じたのはグレン・サクソン氏
Glenn Saxon (1942-)
オランダ生まれの彼は20代前半にイタリアに移住しキャリアをスタート。ヒーロー映画での主演で頭角を現し、いくつかのマカロニウエスタンでの主演(「復讐のジャンゴ 岩山の決闘」や "Vete con Dios, gringo" "Carogne si nasce" "Il magnifico Texano" など)をはじめ、イタリアおよびドイツのアクション映画などで活躍、1990年代以降はオランダに戻ってロエル・ボスの名で(本名)TVを中心に俳優活動を続けているそうです。
エバンスはダイナマイト部隊を引き連れラ・ムエルテを襲撃します。
そして混乱に陥るギャング団に対し狙撃部隊で追い詰めます。有能!
かくしてタイトルにある「虐殺」の末
ギャング団は壊滅に至りました。
最後まで抵抗していたペドロでしたが…
最終的にジョーの一撃で絶命。
ジョーはエバンスに別れを告げ
ララと共に新天地への旅を歩み始めます…
複雑なプロットではありませんが、それぞれのキャラが立っていて、またアクセントになるイベントによって飽きの来ない作品に仕上がっています。
監督はお馴染みアルバート・カーディフ名義のアルベルト・カルドーネ氏。
(毎度のことながら、カルドーネ氏はこの低解像度のちょっとコワいお写真しか見つからないのです、だれか良い画像持ってたら教えてください)
Alberto Cardone (1920-1977)
「地獄から来たプロガンマン」「砂塵に血を吐け」 "20.000 dollari sul 7" のドル倍増3部作と "L'ira di Dio" "Paga o uccidiamo tuo figlio" などのマカロニウエスタンを手がけました。
そして何と言っても本作をドラマティックに仕立て上げているのがサントラ。
(毎度ながらこちら、私のマカロニ師匠、保田さまのチャンネルから。みなさま是非登録を!)
おそろしくエモーショナルなトランペット、重厚なオルガン、切ないストリングスの響き、そして格調高いハープシコードのアルペジオ。
まさしくミケーレ・ラチェレンザの真骨頂。
Michele Lacerenza (1922-1989)
音楽院でのトランペット教師を経て、エンニオ・モリコーネ師との出会いから映画音楽の世界へ。彼こそがまさに西部劇=トランペットという定番の組み合わせを作った張本人であり、マカロニウエスタン劇伴におけるアイコニックな存在であることに異論はないでしょう。もちろん作曲家、編曲家としても超一流であることに間違いありません。
同じくアルベルト・カルドーネ監督の下で仕上げた "L'ira di Dio" に共通するサウンドですが、本作はよりラテン味を加え哀愁漂うサウンドになっております。
今回もなるべく本来の持ち味を崩さぬよう…と心がけながらカバーいたしました。
お楽しみいただければ幸いです!
すっかり桜も満開ですね!
新生活が始まる方も多いでしょう、くれぐれも体調に気をつけて、楽しくいきましょう~
アディオス、アミーゴ!
(^-^)






































































































