河童のクゥと夏休み | うぇぽんにっき

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見ました。ようやく。

『クレヨンしんちゃん』シリーズの鬼才、原恵一監督の劇場版最新作(と言っても2007年作品だが)!こいつを劇場で見られなかったことをどれだけ後悔したことか・・・。ともかく見ました!


前置きはこれぐらいにして即感想に言ってしまいますが、もうとにかく良かった!ものすごく泣きました。実に緻密で、実にリアルで、実に温かい。最高のエンターテイメントにして、最高の文学作品。こんな陳腐な言葉を並べることしか出来ない自分に腹が立って仕方ないぐらい、パーフェクトでした。


えーと、まずどこから褒めようかw


まず背景だ!・・・最初に書くようなことじゃないかもしれないけど、背景が実に素晴らしい。『時をかける少女』の時にも思ったんだけど、やっぱりアニメーションにおける背景というものはその世界観そのものを構築する手段なわけで、ここの出来不出来、力の入れ具合は作品そのものの完成度に直接関わってくる、とても大事なポイントだと思うのです。それが実に素晴らしかった!ちょっとだけ昔の、東京の、ちょっとイナカ(東久留米市が舞台)。夏のアスファルトの熱気、木漏れ日の涼しさ、河の音。そんなちょっとしたものがじんわりと伝わってくるような世界。水の描き方とかにはCGも使ってるんだろうけど、実にしっくりきていました。日本のアニメーションは、ようやくCGを一つの技術手段として使いこなせるようになった。素晴らしいことです。


そしてその世界観に乗っかる、ストーリー構成。ここは実にリアルな展開がとても好印象だった。宮崎駿が『となりのトトロ』で世間一般に評価されたのは、そこに描かれた世界があくまで日常であったから。『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』で描かれたファンタジーではなく、あくまで日常の中のファンタジーを描いたからだと思う。クレヨンしんちゃんの頃から、原監督のしんちゃんにおける日常の描き方は高い評価を得ていたが、本作での日常は、演出よりもむしろ脚本の段階にあったように思う。河童との出会い、心の交流・・・という展開はトトロの焼き直しというと言い過ぎだが、まあどこにでもあるベタな展開である。しかしそこからのメディア露出、メディアとの確執というのは、本来ファンタジーを描く上では避けなければならないような展開。実際トトロでは、『子供にしか見えない』という手を使っていた。本作では河童は実在した!ということがメディアに流出して・・・という展開をリアルに描いた上で、しかもそれを否定することを目的にするのではなく、あくまで命の大切さや友情の尊さに帰結したストーリー.構成が、実に素晴らしいと思った。うん。これはそうそう出来ることではない。


台詞の一つ一つもねぇ、実にまっすぐな、実にいい台詞回しなんスよ。クゥの古風な言い回しと、康一のまっすぐな台詞と、妹の舌足らずな喋り。キャストそれぞれの演技もとてもすんなりと入ってきたし。お父さんがココリコの田中直樹だったのなんか、劇中全然気付かなかったよ。これは。芸能人の声優起用においては成功した証拠。クレヨンしんちゃんの矢島さんとか藤原さんとか玄田さんとかが脇役だけど出ていたのも、ああ監督としんちゃんたちの絆はホンモノなんだなぁと思ってちょっと嬉しかった。


「20年間ずっと、僕がアニメ化したい作品の第一位であり続けました」と、監督がインタビューで語っているように、監督自身の原体験や、原風景とかが、きっとぎっしり詰まっている作品なんだろうなぁと思う。主人公の少年の名前が『上原康一』なのも、偶然じゃあないんだろう。そう言えば『お父さん、お母さん、兄、妹、犬』という家族構成はまるっきりしんちゃんちと同じだし、東京タワーのシーン、たんぼの真ん中で自転車のシーンなんかは、『オトナ帝国の逆襲』でそのまんまあったモチーフ。こういうパーソナルな想いが、作品の力になっているんだろうなぁ。作品の良さって結局、作り手の人間の太さだと思う。原恵一という一人の人間の太さを、また見せ付けてくれる作品でした。


笑えて、泣けて、あったかくて、最後にほわっとする。生きるっていいな、友情っていいなってことを思い出させてくれる。とても素敵な映画でした。こりゃ、しばらく忘れられないや。


『河童のクゥと夏休み』(2007年)

脚本・監督:原恵一

原作:小暮正夫「かっぱ大さわぎ」「かっぱびっくり旅」より

アニメーション制作:シンエイ動画