七夕。
織姫と彦星が一年に一回の逢瀬を楽しむ夜。
一年に一回、しかも夜。
想い合う男女がやることといったら、一つに決まってる。
明け方まで何度も愛し合った後、煙草をくゆらせながら彦星は、
「良かったよ。また来年な」
とか言って、織姫は涙を流すのだった。
一年待つのはやはり長くて、
七夕に吊るされた短冊の願いを片っ端から叶えるのに忙しい彦星はともかく、
機織りを生業にしている織姫はつい寂しくて、
言い寄ってきたハレー彗星と浮気してしまったりして、
「今度いつ逢える?」
なんてベッドで寄り添って囁くと、
「76年後だよ」
とか言われてまた涙を流すのだった。
以前浮気から本気になりかけたシューメーカー・レヴィ第9彗星は木星と無理心中してしまってもういないし、
池谷・張彗星は341年周期で滅多に会えないし、
ヘール・ボップ彗星は早漏だし…。
2061年のハレー彗星を待ち遠しく想って、
彦星に申し訳なく思いながら、
やっぱりあたしが本当に愛してるのはこの人だなぁ、と。
織姫は目を閉じて彦星の温かさを感じるのだった。
(書き下ろし)