1.はじめに

 第71期司法修習生以降、司法修習生に修習給付金が支給されています。基本給付金135千円が支給されるので従来の貸与性と比べると、修習生の待遇は改善されつつあるように思います。しかし、修習給付金案内によると上記給付金は雑所得に該当し確定申告の対象となり、必要経費として控除することができる経費はないとの記載があります。そのため、修習生が課題作成のために基本書等を購入したとしても、必要経費として控除することはできません。このような取り扱いは妥当なのでしょうか?

 

2.非課税所得

 現行法では、包括的所得概念(所得税法33条、34条、35条参照)を採用しているので純資産の増加をもたらすものであれば、所得として認識されることになります。

 本件修習給付金は返還を予定したものではなく給付されるものですから純資産の増加をもたらすものであるため所得に該当することに争いはないと思います。

 しかし、修習給付金は法曹となる人材の確保の推進等を図るために支給されます。また、修習生には修習専念義務が課せられており、司法修習生は,最高裁判所の許可を受けなければ,公務員となり,又は他の職業に就き,若しくは財産上の利益を目的とする業務を行うことはできません。(司法修習生に関する規則2条)そのため、本件修習給付金は、「学資に充てるため給付される金品」(所得税法9115号)に該当し、非課税所得とならないかが問題となり得ます。

 この点について、上記修習給付金案内には特に記載がありません。しかし、修習生には、修習専念義務を前提に兼業禁止規定があるため、修習を円滑に進めるために上記給付金があるといえます。そのため、「学資に充てるため給付される金品」にあたるとする余地はあります。

 

3.所得分類

 仮に、非課税所得に該当しないとしても、修習生は、裁判所による指揮監督のもとで、研修をうけることから給与所得(所得税法281項)若しくは雑所得(351項)に該当するかが問題となります。給与所得の場合、実額控除の方式が採用されておらず給与所得控除という形で一定額の控除を受けられます。給与所得に当たると有利となるのは、給与所得控除の額が実額の必要経費の額を上回る場合ですので注意が必要です。

 給与所得とは、雇用契約又はこれに類似する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいいます。

 修習給付案内には、給与所得にあたらない理由の記載はありません。たしかに、修習地や修習の期間等について裁判所との関係で修習生は時間的・場所的に拘束されているとも思えます。

 しかし、司法修習生の任用関係が雇用契約又は雇用契約に類似すると整理するのは容易ではりませんし、給付金が労務の提供の対価と言えるかという点についても疑問があります。

 そのため、給与所得ではなく、「給与所得・・・のいずれにも該当しない所得」(所得税法351項)、すなわち雑所得に分類するのが妥当だと思います。

 

4.必要経費 

 仮に、雑所得に該当するとした場合、必要経費(所得税法371項)として一切の控除を認めないことが妥当なのかが問題となります。

 必要経費の該当性については、消費との区別及び投下資本の回収部分に課税が及ぶことを避ける見地から、当該所得を得るために当該活動との直接関連性及び業務遂行上直接必要なものかどうかで判断します。

 本件修習の案内において必要経費として控除できる費用は何もないとする理由について明確な根拠は述べられていません。しかし、修習の課題等を行う中で書籍を利用することは必要不可欠ですから、それにもかかわらず一切の費用の必要経費性を否定することについては疑問があります。

 

5.最後に

 司法修習生に対する修習給付金については上記に述べたような税法上の問題点があるので、修習生が不利益を受けないように配慮する必要があると思います。

 

                      弁護士 西口 竜司