2024年2月29日発売の「戦争と鎮魂」(牛村圭編・晃洋書房)に寄稿しています。

 

本書は、2014年度から2017年度まで、国際日本文化研究センターの共同研究としておこなわれた「戦争と鎮魂」共同研究会(研究代表:牛村圭)の成果報告書です。

 

共同研究は「人類の歴史は、戦争の歴史でもある。戦いの目的や戦術は変化を遂げていったものの、戦争の不可避の結果として、勝者と敗者を問わず、戦いの過程では多数の死傷者が生まれてきた。また、戦乱に巻き込まれた非戦闘員が命を落とすことも、稀ではなかった。先人たちは、戦い終えてのち、戦争で落命した者へいかように対処してきたのか。戦死者の魂を鎮めるためのさまざまな行為も、時代や地域を異にしても、古くよりあったものと思われる。そういう古今東西の鎮魂の営みには、普遍性も特殊性も看取されることであろう。本共同研究は、歴史学、宗教学、政治学、文化人類学、文学、社会学等々の、参加者の専攻分野を背景にした、古今東西に渡る重厚な学際的事例研究の報告と、それへの議論の積み重ねから成り立つ形」でおこなわれていました。

 

平松隆円は「第7章 メレル・ヴォーリズとその周辺 ―なぜ『天皇を守ったアメリカ人』になったのか―」を寄稿しています。

 

ぜひ、お近くの書店やオンライ書店でご購入いただき、お一読いただければ幸いです。また、大学図書館や近隣の公共図書館に購入依頼をしていただけたら、とても嬉しいです。

 

 

目次

序 論――鎮魂を考える (牛村 圭)

   第Ⅰ部 文学の視座から

第1章 日中戦争への鎮魂歌 (古田島 洋介)
    ――《寿星鶴算松齢図》を読む――
 1 「鎮魂」略史
 2 日中戦争に係る掛軸《寿星鶴算松齢図》
 
第2章 能における戦争と鎮魂 (佐伯 順子)
    ――敵味方の超克と宗教性、平和へのメッセージ――
 はじめに
 1 「修羅能」の時代設定とスペクタクルとしての戦争描写
 2 修羅道の表現
 3 鎮魂の祈り
 4 信仰心と戦士の神格化
 5 能の鎮魂の意味
 おわりに

第3章 戦後日本の〈鎮魂〉とサバイバーズ・ギルト (堀 まどか)
    ――シベリア抑留を体験した二詩人の表現から――
 1 鎮魂の概念と日本の戦争
 2 「シベリア抑留」という特異性――共有されない概念
 3 石原吉郎の抽象的な「語り」
 4 鳴海英吉の具象的な「語り」
 5 結論として

第4章 「集団死」に対する鎮魂 (徐 載坤)
    ――木原孝一を中心に――
 はじめに
 1 民間人の「集団死」の鎮魂
 2 〈無名戦士〉の「集団死」の鎮魂
 
第5章 多和田葉子『百年の散歩』論 (谷口 幸代)
    ――戦争の記憶の街ベルリンを歩く――
 はじめに
 1 ベルリンの街路を歩く散歩
 2 マルティン・ルター通りの「つまずきの石」
 3 プーシキン並木通りのソビエト戦没者慰霊碑
 おわりに

   第Ⅱ部 日本の歴史を顧みて

第6章 筧克彦における「鎮魂」と戦争 (西田 彰一)
 はじめに
 1 筧克彦の思想における「死」の扱い
 2 「みたましづめ」としての「鎮魂」
 3 戦争及びその「鎮魂」
 4 「鎮魂」と戦争に関する筧克彦の発言――美保関事件と「自らの神冒涜」発言について
 おわりに

第7章 メレル・ヴォーリズとその周辺 (平松 隆円)
    ――なぜ「天皇を守ったアメリカ人」になったのか――
 1 メレルのルーツ
 2 建築と海外伝道
 3 英語教師として
 4 日本人との結婚
 5 一柳家と廣岡家
 6 日本への帰化
 7 マッカーサーへの仲介
 8 「天皇を守ったアメリカ人」の真相

第8章 武藤章中将の東京裁判 (牛村 圭)
    ――その戦争と鎮魂――
 はじめに――「君を巻添に会はして気の毒だ」
 1 訴追の背景を探る――田中隆吉というインフォーマント
 2 「一九四一年頃の日本の政治は実質武藤が支配していた」
 3 「軍務局長は皆から鞭打たれる柱のような辛い職」
 4 東京法廷での論戦――田中隆吉 v.s. 軍務局
 5 軍人と政治――証言台の武藤中将
 6 判決下る
 おわりに――学匠軍人の手記

第9章 戦没者遺骨の戦後史 (栗原 俊雄)
    ――硫黄島を中心に――
 はじめに
 1 硫黄島の戦い――概略
 2 初めての渡島――二〇〇六年一二月
 3 いまだ海外で未収容の一一二万体
 4 二〇一六年、「戦没者遺骨収集促進法」成立
 5 課題山積
 6 分からない身元
 7 何のためのDNA鑑定か
 8 「方向性」

   第Ⅲ部 世界史のコンテクストで

第10章 古代ギリシアにおける戦没者国葬制度と追悼記念 (小堀 馨子)
 序 論
 1 時代背景――ペルシア戦争とペロポネソス戦争
 2 アテナイの戦没者国葬制度
 3 ペリクレスの国葬演説
 4 テスピアイ人によるデリオンの戦い(前四二四年)の戦没者記念碑
 5 結 語

第11章 慰霊のしらべ (等松 春夫)
    ――戦争と英国の「公共音楽」――
 はじめに――国民国家と戦争の記憶
 1 第一次世界大戦下の英国と「公共音楽」
 2 《イングランドの精神》と戦没者慰霊
 3 《ゲロンティアスの夢》への新たな意味づけ
 4 戦いすんで
 5 癒し・警告・和解――《朝の英雄たち》《われに平和を与えたまえ》《戦争レクイエム》
 おわりに

第12章 ケニアのナンディ社会における死と生のエスノグラフィ (吉田 優貴)
 1 フィールドワーカーが人の死に直面する
 2 死者と生者、過去と今
 3 死と生をめぐる思想

 

執筆者紹介

牛村 圭(うしむら けい) 国際日本文化研究センター 教授、総合研究大学院大学 教授[併任]
古田島 洋介(こたじま ようすけ) 明星大学人文学部 教授
佐伯 順子(さえき じゅんこ) 同志社大学社会学部 教授
堀 まどか(ほり まどか) 大阪公立大学文学部 教授
徐 載坤(す ぜこん) 韓国外国語大学校 教授
谷口 幸代(たにぐち さちよ) お茶の水女子大学文教育学部 教授
西田 彰一(にしだ しょういち) 国際日本文化研究センター プロジェクト研究員
平松 隆円(ひらまつ りゅうえん) 国際ファッション専門職大学国際ファッション学部 講師
栗原 俊雄(くりはら としお) 毎日新聞専門記者(日本近現代史)
小堀 馨子(こぼり けいこ) 帝京科学大学総合教育センター 准教授
等松 春夫(とうまつ はるお) 防衛大学校国際関係学科 教授
吉田 優貴(よしだ ゆたか) 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 フェロー