女性の「潮吹き」・・・・・・女性の生殖器における尿道口から液体を放出する現象のことをそう呼びます。オーガズムの前、もしくは最中に腟前壁を刺激することにより、女性の尿道から液体が排出されると考えられており、英語では「Squirting」とか「Female ejaculation」とよんでいます。

 

セクシー動画(ポルノ / アダルトビデオ)でも一つのジャンルになっているほどなのですが、じつは「液体」が放出されるといっても、その液体がいったいなんなのかは科学的に解明されていませんでした。そんな謎に、岡山大学泌尿器科同門会に所属するみやびウロギネクリニックの井上雅と岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)泌尿器病態学分野の荒木元朗らが、かかんにも研究をおこない、その謎をあきらかにしました(「Enhanced visualization of female squirting」)。

1.「潮吹き」「潮を吹く」ってどんな感じ?

雑誌「COSMPOLITAN」のオンライン版が、「潮吹き」「潮を吹く」ってどんな感じ?5人の女性が語る体験談という記事を掲載しています。その内容をまずは紹介します。

(1)「初めての潮吹き」エピソード

  • 「パートナーに指でしてもらっているときに、突然でした。その人が最初の性的パートナーだったから、まだ経験の浅い私は何かよくわからなくて。でも相手がすごく喜んで、“潮吹き”であることを教えてくれました」--エリー・24歳
  • 「潮を吹けるのを発見したのは、20歳で初めてディルドを買ったとき。体に入れてすぐに、急に感覚が押し寄せてきたんです。初めてのことだったので、お漏らしをしてしまったのかと思いました。パートナーとのセックスで潮を吹いたのは、2人とだけでしたね」--ミシェル・26歳
  • 「最初は、女性器をほぐすヨニマッサージをしたとき。3時間かけてだんだんと中心に近づいていき、その終盤にGスポットを時間かけて刺激してもらったときに、体からじわっと液体が出たんです。最初はそれが潮吹きかどうかはわからなくて、タオルについたものを見せてもらって知りました」-- カット・30歳
  • 「大学時代、そのときの恋人としていたとき。彼がGスポットを指で刺激してくれて、そのときに、おしっこがしたい気持ちとオーガズムが来る直前の感覚の両方を感じたんです。すごくリラックスしていたから、まあいいかと放っておいたら、突然ドバッとした解放感と、水に濡れた感触がしました」-- サリー・35歳
  • 「潮吹きについては、以前からちょっと調べていました。そこでよく言われているのが、オーガズムのときに力を抜いて体が欲するのに任せるといいっていうこと。だから試してみたんです。最初は尿意みたいで我慢していたんですが、体の力を抜いたら潮を吹いていました」-- タイシア・27歳

(2)潮を吹くってどんな感じ?

  • 「いい気持ち。その瞬間は、潮を吹いたとはわからなかったけど。かなり濡れたのと、満足感があったことを覚えています」-- アリー・24歳
  • 「私の場合はいろいろ。内ももにちょっとだけ液が流れる感じがする程度から、一気に液体が噴出するような感覚まで。私にとっては、潮吹きならではの気持ちよさもあるけど、オーガズムとは違いますね。指で膣内に優しく圧をかけると潮を吹くので、どちらかというと圧迫から解放されるような感覚です。潮を吹いた後は体がじんわりとゆるむ感覚が強いですね。筋肉が完全にリラックスしたみたな感じ」-- ミシェル・26歳
  • 「感覚的には、深く解き放された感じ。クリトリスのオーガズムだと、はっきりだんだんと高まりがあって、その頂点としてオーガズムがある感じだけど、それとはかなり違います。私の場合は、Gスポットのオーガズムが近くなったときに、ヴァギナ内部の筋肉をゆるめるようにすると潮を吹けます」-- カット・30歳
  • 「大きな圧力がだんだん高まって、解放される。オーガズム中におしっこをするみたいな感覚に近くて、ただその解放がまるでダムが決壊するみたい。つまり、ぴゅっとホースの水みたいに出るのではなく、幅広い範囲でバ―ッとあふれる感じです。たとえが変かもしれないけど、マッサージしてもらって緊張がほぐれる感覚ってあるでしょう? 筋肉を押されて解放されるとき、そこで初めて、緊張していたことすら気づかなかった筋肉がゆるむ感じ。それに似ていますね」-- サリー・35歳
  • 「潮を吹くときは、温かくて、ワクワクした感じがして、思わず背中がそり返ってしまいます。そして、全身の筋肉がぎゅっと締まるのを感じます」-- タイシア・27歳

(3)潮を吹いた後はどんな気持ち?

  • 「最初は漏らしちゃったのかと思って、どう反応していいか分からなかった。恋人のシーツを濡らしてしまったし、きまりが悪かったです」-- アリー・24歳
  • 「初めて潮吹きしたときは気まずかったです。それに、その後にシーツを交換しなくちゃいけないのも面倒だったし。マットレスまでしみてしまったら、完全に乾くまでは2時間くらいかかるし…。それに、乾いた跡を冷静な時に見るのが嫌ですね」-- ミシェル・26歳
  • 「感情的には、解き放たれた気持ち。やわらいで、手放した感じです。ほかの親密な体験では得られないような、開けっぴろげで…誰かに本当の自分をさらけ出した気持ちになりました」-- カット・30歳
  • 「最初は恥ずかしかったです。パートナーも驚いていたし。おしっこかと思ったけど、香りが甘かったので違うのかもと思いました。私の場合は、訳が分からなかったし恥ずかしかったので、落ち込んで、黙ってしまいました。それからしばらくはパートナーにGスポットを触らないでと伝えていたくらいです」-- サリー・35歳
  • 「若かった頃、自分の体を深く知る前はイヤだなと思っていました。でも、歳とともに、私にとっては自然なことなんだと理解できるようになりました。私の場合は、幸せホルモンが体の中を駆けめぐるような良い気分です」-- タイシア・27歳

2.女性の潮吹き現象

これまで女性の潮吹き現象について排出される液体の成分は、「尿」であるという説と、スキーン腺と呼ばれる尿道周囲腺からの「分泌液」であるという2つの説で議論がおこなわれてきました。

 

井上雅と荒木元朗らが、研究に同意を得た一般女性を対象に、膀胱内へ無害であるインジゴカルミン色素を含む食塩水を注入し、その後に性的刺激により潮吹き現象を誘発して動画に記録しました。そして、噴出された液体を分析した結果、主成分が尿であることを突きとめまたんです。また、液体中のPSA濃度が尿と比較して高かったことから、スキーン腺からの分泌物も含まれていることが示されました。

 

つまり、潮吹きの主な成分は「尿」だけれども、多少のスキーン腺からの分泌物も含まれているということです。ちなみに、スキーン腺は膣の上壁に位置し、尿道の末端に隣接する細い枝分かれした管の形をした分泌腺です。男性の前立腺に相当するとされています。

 

ところで、さらりと研究の方法と結果を書きましたが、ふと疑問におもうこともあるでしょう。例えば、「研究に同意を得た一般女性」というところ。もちろん、人を対象とする研究なので、同意は必要です。ですが、あえて「一般女性」を対象としているのは「セックスワーカーではない女性」で研究していますよということなんです。

 

なぜ、「セックスワーカーではない女性」じゃないとダメかというと、井上雅と荒木元朗らは「演技による潮吹き」を除外するためだといいます。名利ほど、プロだと演技で潮吹きができるんですね。

 

また、どうやって「性的刺激」を与えたのかも気になります。いわゆる「バイブ」といったプレジャートイ(セックストイ)を使ったのでしょうか。じつはこれについては、「女性のパートナーによる用手的刺激、もしくは陰茎の挿入」により実施されています。つまり、パートナーは実際に手で愛撫したり、性器を挿入したりして刺激を与えたというんです。

 

そして、潮吹きが起きる直前に、隣室で待機していた研究者が部屋へ入り動画撮影をおこない、同時に噴出された液体を滅菌カップに採取し、液体中の PSA(前立腺特異抗原)濃度やグルコース濃度を測定したというんです。岡山大学の研究倫理委員会の承認があるとはいえ、なかなか攻めた研究です。倫理委員から「実際に挿入する必要があるのか」と指摘はなかったのでしょうか。ちなみに、一般的にPSAは前立腺で産生されるタンパク質で、精液のなかに混じってゲル状の精液をさらさらにすることで精子の運動性を高める役割があるといわれています。

まとめ

男性の性機能に関しては、学問としての研究がある程度行われていますが、女性の性機能はまだまだ未知の領域です。「潮吹き」と言葉だけ聞くと、やらしい研究のように思ってしまいますが、実際には女性の性機能障害に対する理解、さらに治療へとつながる重要な一歩ともいえるでしょう。

 

しかし、「潮吹き」の主成分は「尿」だったんですね