性加害・性被害があとをたちません。多くは密室でおこなわれるため、加害者と被害者以外に真実を知ることは難しく、わたしたちは報道やバラエティの情報で、色々好き勝手なことを言ったりしてしまい、えん罪であれば加害者とされる人を、事実であっても憶測で世間話をすることで被害者を傷つけてしまうことがあります。
ジャニー喜多川氏による性加害による被害を訴えていた男性が、性被害のトラウマに加えて告発に対するネット(SNS)などでのひぼう中傷などが重なり、自殺されたこともあります。
こういった、性被害を受けた人に対する誹謗中傷を概して「セカンドレイプ」と呼びます。なぜセカンドレイプは起こるのか、そしてそれを防ぐ方法はないのでしょうか。
1.セカンドレイプとは
セカンドレイプは、「性暴力・性犯罪被害者が被害を公にしたり、被害を診察する産婦人科医や事情聴取をする警察官から、被害者にも責任があるという趣旨の発言を受けたりすることで、周囲の誤解や好奇に晒され二次的に精神的、社会的に不利益を被ること」(知恵蔵mini)とされています。
ですが、医師や警察官だけではなく、メディアや一般人がおこなう被害者にも責任があるという趣旨の発言も含まれ、性犯罪被害者が犯罪後にさらなる苦痛や非難、社会的な制約に直面すること全部をセカンドレイプと考えていいでしょう。
なぜ、セカンド(2次)なのかといえば、性的暴力(レイプやセクシャルハラスメント)が「1次」のレイプであり、その後に続く被害者への誹謗中傷や非難が「2次」的なレイプだからです。ファーストレイプが特に身体や尊厳がつけられるのに対し、セカンドレイプでは社会的な偏見や制度的な問題により、再び傷つけられます。
2.セカンドレイプの特徴
では、もう少しセカンドレイプの特徴について考えましょう。
非難と疑い
セカンドレイプは、被害者が告発することによる周囲からの非難や疑念により生まれます。つまり、加害者とされる人に対して周囲が「あの人は、そんなことをするような人じゃない」と擁護したりするからです。これには、「レイプ神話」が影響しています。
レイプ神話とは、「露出度の高い服を着ているから被害に遭う」「本当に嫌なら抵抗できたはず」「女性は本当はレイプを望んでいる」「被害者は女性で、加害者は男性」「男性は被害に遭わない、力があるから抵抗できる」「衝動的におこなわれ計画性はない」などの加害者や被害者、性暴力に対してもたれる偏見や間違った信念のことです。もちろんですが、これらはすべて真実ではありません。
無理解
周囲の人がセカンドレイプとは一体なにかということを正しく理解していなければ、悪気ない言葉であったとしても結果的にセカンドレイプになってしまうということもあります。
「どうして逃げなかったの」「なぜ助けを呼ばなかったの」「思ったより元気そうだね」「大丈夫、早く忘れた方がいいよ」「つらいのはあなただけじゃない」「気にしないで」「がんばって」「しっかりして」「私だったら気がくるってしまう」「こうすればよかったのに」「なぜ、もっと早くに話さなかったの」といった言葉は、悪気なく被害者に言ってしまいそうですが、こういう言葉も被害者を傷つけることになり、セカンドレイプとみなされます。
社会的孤立
セカンドレイプにより、被害者は友人や家族から孤立することがあります。社会的な制裁や無理解からくる孤独感は、被害者を苦しめ、時には死を選択させることもあります。例えば加害者が男性で、被害者が女性の場合、男性が加害者を擁護思想なのはなんとなくイメージできますが、じつは同性である女性も場合によっては加害者を擁護するということが研究(漆谷紗耶・森永康子「レイプ神話受容のメカニズム」)によってあきらかになっています。そのため、セカンドレイプについては、同性だからとか同じ様な年齢だからとかという理由で理解してもらえるとは限らないんです。
メディアの扱い
セカンドレイプはメディアによって誤解されて報道されることで、被害者を再び攻撃することがあります。被害者のプライバシーが侵害され、その後の人生に深刻な影響を与えることがあります。また今の時代はSNSで一般人が世間話・井戸端会議・酒の席のような感覚で、「気軽」に加害者を擁護し、被害者を攻撃してしまうことがあります。こちらの方がメディアよりも被害者に対するセカンドレイプの問題が大きいでしょう。
3.セカンドレイプを防ぐ方法
それでは、セカンドレイプを防ぐにはどうすればいいのでしょうか。
啓発と教育
セカンドレイプを防ぐためには、性犯罪の啓発と教育が必要です。性的暴力の被害者に対するサポートと理解を広め、社会的な意識を高めることが重要です。学校教育のなかに取り入れたり、企業のハラスメント研修の一部として学ぶ機会を設けてもいいかもしれません。
セクシャルマナーについて考える
これは自分が加害者にならないためにも、「性的同意」についてしっかりと理解しておく必要があります。たとえば、会社の上司と部下や学校の先生と学生・生徒といった社会的地位の差や上下関係がある状態ではなく、お互いが対等な関係でお互いに断る選択肢がある状況のときにだけ、セクシャルな関係に進展させることができると理解しておかなければいけません。酔っぱらっていたり、意識がもうろうとしているときにセクシャルな関係を持とうとするのは言語道断なんです。そして、性的同意は、毎回確認する必要があります。一度関係したからといって、ずっと関係していいわけではないのです。
被害者サポート
被害者への適切なサポートが提供されることは極めて重要です。性暴力の被害者のうち過半数以上がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症するともいわれています。これは、地震などの被災者よりも多いといわれており、そのため専門家のカウンセリングやサポートグループへの参加が、重要になってきます。ちなみに、PTSD症状としては、フラッシュバック、パニック障害、不眠、集中力の低下などがあり、日常的にいつも落ち着かなかったり、イライラしたりしてしまいます。
メディアの責任
メディアは性犯罪を報道する際に慎重であり、被害者のプライバシーを尊重することが求められます。被害者を再び傷つけないよう、責任ある報道が必要です。
制度の改善
制度的な問題に対処するためには、法的な手続きや支援体制の改善が必要です。2023年7月には性犯罪の法律改正がありましたが、被害者が安心して報告でき、公正な対応が得られるようにすることが大切です。
まとめ
セカンドレイプは性犯罪被害者にとって深刻な問題であり、社会全体での意識とサポートの向上が必要です。啓発と教育、被害者への適切なサポート、メディアの責任ある報道、そして制度の改善が、セカンドレイプの発生を減少させ、被害者の回復を支援する手段となります。
ジャーナリストの伊藤詩織さんが、自身の性暴力被害を巡る虚偽の情報を投稿され名誉を傷つけられたなどとして、漫画家のはすみとしこさんらに慰謝料などを求めた訴訟で、東京地裁は名誉毀損を認める判決を言い渡していますが、セカンドレイプはそもそも「不法行為」でやってはいけないことなんだということを理解しておく必要があります。
そして「本人が望まない性的な行為はすべて性暴力で、被害を受けた人は何も悪くない」ということも忘れてはいけません。
相談窓口
1. 性暴力被害者ワンストップ支援センター https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html
#8891(近くのワンストップセンターにつながる電話番号)
2. 性犯罪被害相談電話(各都道府県警察の性犯罪被害相談電話窓口につながる)
#8103(24時間365日)
3. よりそいホットライン(留学生のために英語、中国語、韓国語等の外国語専門ライン)
フリーダイヤル 0120-279-338
メール・チャット相談
1. Curetime https://curetime.jp/ ( 匿名でできるチャット相談)
