先日、関西ローカルの番組で石原良純さんが「あそこの店のオヤジは、すっとんきょうだから」と話していました。この「すっとんきょう」という言葉、時折耳にしますが、意味はなかなか知らないのではないでしょうか。「すっとんきょう」とは、一体どういう意味なのでしょうか。
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(1)「すっとんきょう」の意味は?
「すっとんきょう」、漢字では「素頓狂」と書きます。その意味は、「突然、調子のはずれた声を出したり、または奇抜な言動をしたりするさま。また、その人」(「日本国語大辞典」)です。井上友一郎が銀座の新風俗を描いた1955年の小説「銀座二十四帖」に「バカ野郎。素ッ頓狂なことを言うもンじゃあねえ」とでてきます。比較的、新しい言葉のようです。
ちなみに「素」は接頭語(=語調を整えたり意味を添えたりする言葉)です。「お手紙」の「お」が接頭語ですが、そうなると言葉として重要になってくるのは「頓狂」です。「頓狂」とは「せっかちで間の抜けたふるまいをすること。調子はずれの言動をすること。また、そのさま」(「日本国語大辞典」)のこと。「おどけ」や「ひょうきん」と同じような意味です。「頓狂」自体は、江戸時代初めに日本イエズス会が刊行した辞書「日葡辞書」にでてきますので、古い言葉といえるでしょう。
なお「すっとんきょう」を意味する英語はないようですが、あえていうとするならば「funny」とか「grimace」を使うようです。
(2)「すっとんきょう」は方言なの?
ところで、「すっとんきょう」という言葉は耳にはするものの、ふと「関西では使わないのでは?」とおもいました。そうなると「すっとんきょう」は標準語ではないのでしょか。しかし、「日葡辞書」や「日本国語大辞典」にでてくるわけですから、方言ではないはずです。
ですが、インターネットを調べていると山口県宇部市の東岐波ふれあいセンターのウェブに「す」から始まる東岐波の方言として「すっとんきょう」が掲載されています。意味も、「お調子者。おとぼけ者。慌て者。」で同じです。東岐波の方言が全国的に使われるようになったのかはわかりませんが、もし方言が起源だとすれば、全国的に馴染みがない言葉なのかもしれません。
ちなみに山口県宇部市といえば、ふしぎの海のナディア、新世紀エヴァンゲリオン、シン・ゴジラで有名な庵野秀明の出身地です。
(3)「すっとんきょう」なひとの特徴
それでは意味がわかったところで、「すっとんきょう」なひとの特徴についても考えておきましょう。
1.言動がなぞ
「すっとんきょう」なひとは基本的には「不思議ちゃん」といわれるひとです。ちょっと理解しがたいなぞの言動をしたり、つねに周囲からつっこまれたりしています。
2.おもしろい
「すっとんきょう」なひとは予想外のおもしろい言動をしがちです。もう芸人さんかと思うくらいおもしろいかもしれません。かといって、周囲に迷惑をかけるほどではないため、愛されキャラでいてられます。
3.あたまがいい
相手が想定していないような突拍子もない言動ができるということは、あたまがいい証拠です。もちろん、いわゆる「天然」で無意識のうちに「すっとんきょう」な言動をしてしまっているひともいるでしょう。ですが、想定外の言動ができるのはやっぱり自分引き出しが多いからです。
4.人懐っこい
「すっとんきょう」な言動ができるのは、周囲にすぐ馴染めるからです。人見知りもせず誰とでも仲良くなれ、話しやすいからこそ、「すっとんきょう」なこともできますし、周囲も受け入れてくれるわけです。
5.マイペース
悪くいえば周囲にあわせることがないため、周りからすると「すっとんきょう」にみえてしまうわけです。ですが、これはよくいえばマイペースで自分を大事にしているともいえます。
(4)「すっとんきょう」なひとはモテる?
「すっとんきょう」なひとは、けっこうモテるかもしれません。特徴としていわゆる「不思議ちゃん」と紹介しましたが、掴みどころのないことでどうしても気になってしまうという人も少なくないでしょう。また「すっとんきょう」な言動は迷惑にはならない程度なので、一緒にいておもしろいとか楽しいという印象です。そのため、愛されキャラとして認識されるため、魅力的にみられます。
まとめ
「すっとんきょう」という言葉について考えました。「すっとんきょうなひと」はけっして「困ったひと」なのではなく、「おもろい、たのしい、愛されるひと」という意味と考えていいでしょう。「すっとんきょうなひと」といわれたら、褒められてるとおもってもいいかもしれませんね。