「身体髪膚、之を父母に受く。敢て毀傷せざるは、孝の始めなり。」といえば、儒教のなかで説かれる親孝行のはじめです。これをもって、日本では「親からもらった体を大切にして傷つけてはいけません」と、美容整形などに反対する人がいます。

 

二重まぶたにするような「プチ整形」が流行ったときには「最近の若者は・・・」と批判がありました。ですが、実際は歴史的には日本では戦後に美容整形ブームのようなものも起こっています。とはいえ、やはり今の方が美容整形はブームという段階を過ぎ、ある程度一般的になってきたかもしれません。

 

美容整形の研究

これまで、美容整形に関する心理や態度について、多くの研究がおこなわれてきました。

 

たとえば、「美容医療(美容整形およびプチ整形)に対する態度」では、美容医療の経験のある者は少ないものの、興味をある者は多いことがあきらかになっています。そして、美容医療の経験は、他の身体変工の経験と関連があること、興味/経験がある者ほど社会で美容医療が受容されていると考えていること、プチ整形は美容整形に比べてコンプレックス解消というイメージが無いこと、また、興味/経験がある者ほど、周囲の人が美容医療を経験したと考えていることなどがあきらかとなっています。つまり、容姿への不満や装った姿こそが本当の姿であるという考えが美容医療を受けることを推し進め、施術を経験することによって自己に満足し、新しい姿が自己像として定着していくというプロセスになっているんです。

 

これまでの研究では,性格特性として外見を気にしやすいかどうか、自分の身体への満足度が高いか低いか、美容整形に関する経験の有無や経験者が身近にいるかどうかなどとの関連が調べられてきました。ほかにも、生活になくてはならなくなったSNSの影響というのも美容整形には関連するでしょう。

SNSと美容整形

オランダ・ティルブルフ大学(Tilburg University)のAnne-Mette Hermansらは、平均年齢21歳のInstagramユーザー470名を対象に調査をおこないました(Follow, filter, filler? Social media usage and cosmetic procedure intention, acceptance, and normalization among young adults)。

 

調査の結果、Instagramユーザーは自分自身の美容整形をしてみたいという意向は低いものの、美容整形の普及率は過大評価していることがあきらかになりました。つまり、自分は美容整形をしないものの、美容整形は一般的なことだと考えているわけです。また、美容整形を受けたインフルエンサーをフォローしているInstagramユーザーは、自分も美容整形を受けたいという意向が高く、美容整形を受けていないインフルエンサーをフォローしているInstagramユーザーは、自分も美容整形を受けたいという意向が低い結果でした。

 

フィルターを使って写真を編集する頻度が高い人は、美容施術の受け入れと意向が高かったんです。つまり、「変身願望」とまではいきませんが、いまの自分に満足していなかったり、改善したいと思っていることが美容整形につながるわけですが、その一端としてインスタグラムに写真を投稿するときにはフィルターを使ってSNS上で「整形」しているともいえます。

まとめ

インスタグラムを使っていると美容整形したくなるとまでは言いきれませんが、インスタグラムに接していることで、そこに投稿されている画像は加工されているものとわかっていながらも、自分自身と比較したときに自分に対する不満足を誘発してshまっている可能性は考えられます。