ミサンダリ—(misandry)という言葉、聞いたことがあるという人はほとんどないでしょう。それでは、ミソジニー(misogyny)とい言葉ならどうでしょうか。こちらは詳しい意味はわからないけど、聞いたことがあるという人が多いと思います。

 

今回は、ミサンダリ—の意味とその背後にある問題について、考えていきましょう。

 

 

 

 

 

ミサンダリ—とはなにか

「ミサンダリ—」とは、男性に対する憎悪、軽蔑、偏見を指す言葉です。よく聞く「ミソジニー」とは女性に対する憎悪、軽蔑、偏見を意味します。

 

男性と聞くだけで、「男性は暴力的だ」とか、「男性は女性を性的な目でいつも見ている」といったステレオタイプで判断したり、そのように指摘したりすることがミサンダリ—にあたります。

 

あたりまえのことですが、すべての男性が女性を差別したり、性的な目で見ているわけではないですよね。個人として一人ひとり価値観や考え方が違うはずなのに、男性だからという理由で先入観を持ってみてしまい、知らないあいだに差別をしてしまっているんです。

 

そのためミソジニーやミサンドリーは、無意識の差別(アンコンシャス・バイアス)ともいわれています。また、ミソジニーやミサンドリーは異性の立場から生まれてくるとは限らず、同性間でも生じるといわれています。

ミサンドリーが表れる可能性のある状況と例

ミサンドリーは特別な状況で生じるわけではなく、日常的な場面でも多く見られます。

 

映画やドラマといったエンターテイメント作品では、男性をネガティブなステレオタイプで描くことがあります。たとえば、男性が無能、愚か、感情的に制御できない存在として描かれる場合などです。また男性は無口というステレオタイプから、男性が感情を表現することに対して否定的な態度をとることもあてはまります。

 

また、ジェンダー平等をめぐるディスカッションのなかでは、一部の人々が男性に対して一般化した攻撃的な発言や批判をおこなうことがあります。たとえば、「男性はすべて性的加害者である」というような一般化した主張もミサンドリーといえるでしょう。

 

男性の学生が女性の学生よりも低い評価を受けたり、雇用や職場環境で女性に対して優遇措置が取られ、男性が公平なチャンスを得られないなども時にはミサンドリーにあてはまります。

 

ミサンダリ—の影響について

ミサンダリーの態度や差別的な言動は、個人の心理的な健康や自己価値感に影響を及ぼす可能性があります。ミサンダリーの対象とされることで、自己評価や自信が低下し、不安や抑うつといったネガティブな感情を抱き、メンタルヘルスに悪影響をおよぼすこともあるでしょう。

 

ミサンダリーが社会に広まると、男性と女性のあいだの信頼関係や相互理解が損なわれる可能性があります。究極的には、男性と女性のあいだで対立や敵意が生じ、コミュニケーションや協力関係に悪影響を与える可能性があります。

 

またミサンダリ—により男性差別や女性優位の主張が支持されることで、ジェンダーバイアスや不平等な社会構造が強化される可能性があります。さらに、男性と女性の間での建設的なダイアログや協力の障害となることがあります。その結果、ジェンダー平等の実現を難しくさせるんです。

 

ミサンダリ—への対処法

まずはミサンダリーの存在を認識し、対話や相互理解を促進することが重要です。コミュニケーションを通じて、相手の視点や感情を理解し、互いに尊重し合うことが必要です。

 

そして、ジェンダー平等や共同参画の重要性を教育や啓発活動を通じて広めていきましょう。ミサンダリーの根底にある偏見やステレオタイプを解消し、性別に関わらず全ての人々が平等に扱われる社会を目指しましょう。

 

そして男性や女性に対するポジティブなイメージを強調し、個人の能力や特性を重視することで、ジェンダーに基づく偏見を軽減することが大事です。そのためには、男性と女性が協力して取り組むことが重要です。

 

もしミサンダリーによって心理的な苦痛やストレスを引き起こした場合、個人のケアやサポートを受けることが重要になってくるため、信頼できる友人や家族、専門家やカウンセラーと話し合える環境を整えておくことも必要になってきます。ミサンダリーに対処するためには、個人だけではなく社会全体での努力が必要です。対話と相互理解を大切にし、ジェンダー平等と共同参画を促進する努力を継続的に行っていくことが重要なんです。

 

まとめ

Netflixに「ハウス・オブ・カード 野望の階段」というドラマがあります。このドラマに、次のようなセリフが登場します。

 

The word "misogynist" popped into my mind. And I was trying to think of the word for the opposite. You know, the word for when a person hates men. Does anyone around this table know what that word is? I had to go and look it up. "Misandrist." And no one really knows that word because it's not used in our culture. So what I'm getting at, is maybe we all, regardless of our gender.

 

みんな、女性を憎悪するミソジニストという言葉は知っている。けれども男性を憎悪する言葉は知らない。このセリフからは、わたしたちが生きる社会には、あらゆる偏見と差別が存在し、無意識に自分たちも偏見と差別を持っているということが伝わってきます。

 

もちろん、歴史のなかで女性は男性以上に偏見の目で見られ、憎悪され、軽蔑されてきました。ミソジニーもミサンダリ—もなくなる世のなかになるよう、わたしたちは努力をしていかないとダメなんです。