<a href="https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/8CqDvPuo_kI?utm_source=unsplash&utm_medium=referral&utm_content=creditCopyText">Unsplash</a>の<a href="https://unsplash.com/@napr0tiv?utm_source=unsplash&utm_medium=referral&utm_content=creditCopyText">Vasily Koloda</a>が撮影した写真

 

 

卒業ソングとは、学校や大学を卒業する際に歌われる曲のことです。卒業式の雰囲気を盛り上げ、卒業生たちの思い出や感謝の気持ちを表現するために歌ったり、歌われたりします。今回は、卒業ソングの歴史や代表的な曲、そして卒業ソングの選び方について一緒に考えていきましょう。

 

1.卒業ソングの歴史

卒業ソングといえば、一般的には「仰げば尊し」。この曲、卒業式でずっと歌われてきたものの、じつはどんな歌なのかが長い間わかっていませんでした。

 

「仰げば尊し─幻の原曲発見と『小学唱歌集』全軌跡」などによれば、1871年にアメリカで出版された「The Song Echo」という本のなかにあった「Song for the Close of School」という曲が原曲だそう。曲名も「Song for the Close of School」(=卒業の歌)なので、おそらくアメリカの卒業式で歌うために作られたのかもしれません。

 

 

おそらく「The Song Echo」を文部省音楽取調掛の伊沢修二(東京音楽学校初代校長)が入手し、1884年に刊行された「小学唱歌集」に収めたのだといわれています。「小学唱歌集」とは、1881から1884 年にかけて文部省音楽取調掛によって作られた日本初の唱歌教科書のことです。ちなみに、このなかには「蛍の光」も収められています。

 

 

話を「仰げば尊し」に戻しましょう。この歌の日本語の歌詞は、大槻文彦・里美義・加部厳大の三人で作詞したようです。

 

仰げば尊し わが師の恩
教えの庭にも はや幾年(いくとせ)
思えば いと疾し(とし) この年月(としつき)
今こそ別れめ いざさらば

互いに 睦(むつみ)し 日頃の恩
別れるる後にも やよ忘るな
身を立て 名をあげ やよ励めよ
今こそ別れめ いざさらば

朝夕慣れにし 学びの窓
蛍の灯火(ともしび) 積む白雪(しらゆき)
忘るる間(ま)ぞなき ゆく年月(としつき)
今こそ別れめ いざさらば

 

ちなみに英語の歌詞は次の通りです。

 

We part today to meet, perchance, Till God shall call us home;
And from this room we wander forth, Alone, alone to roam.
And friends we've known in childhood's days May live but in the past,
But in the realms of light and love May we all meet at last.

 

Farewell old room, within thy walls No more with joy we'll meet;
Nor voices join in morning song, Nor ev'ning hymn repeat.
But when in future years we dream Of scenes of love and truth,
Our fondest tho'ts will be of thee, The school-room of our youth.

 

Farewell to thee we loved so well, Farewell our schoolmates dear;
The tie is rent that linked our souls In happy union here.
Our hands are clasped, our hearts are full, And tears bedew each eye;
Ah, 'tis a time for fond regrets, When school-mates say "Good Bye."

 

気づきましたか。原曲の歌詞は友達との別れがテーマなのですが、日本語の歌詞は先生(師)と生徒(教え子)の別れに作りかえられています。

 

なお、東京藝術大学の藝大アートプラザによれば、「仰げば尊し」の編曲を担当したのは東京音楽学校出身の作曲家・本居長世だそうです。本居という名前でピンと来た人はかなりの歴史好きかもしれませんね。

 

そうです。本居長世は江戸時代の国学者本居宣長の子孫なんです。東京音楽学校(現東京芸大音楽学部)を卒業後、ピアノ指導などをしながら器楽曲や歌曲を発表し、童謡作曲の第一人者になりました。「汽車ぽっぽ」「赤い靴」「鯉のぼり」「十五夜お月さん」「通りゃんせ」「七つの子」「蝶々」「桃太郎」などの童謡を作曲しています。

2.Z世代が選ぶ「好きな卒業ソングTOP10」

ところで「仰げば尊し」は今の学校ではあまり歌われることがないのだとか。それでは最近の代表的な卒業ソングには、どんなものがあるでしょうか。バイドゥ株式会社がZ世代に「好きな卒業ソング」について調査したところ、次のような結果になりました。

第1位 栄光の架橋/ゆず 

Z世代の卒業ソングの定番として堂々の1位に輝いたゆずの名曲『栄光の架橋』。栄光にたどり着くまでの努力や挫折の日々、感謝の気持ちなどが描かれた感動の一曲です。

 

 

第2位 カイト/嵐 

『NHK2020ソング』として、2019年、第70回NHK紅白歌合戦で初披露。作詞・作曲・編曲を米津玄師が手掛けたため、日本が誇る国民的アイドルとトップクリエイターとのコラボレーションに話題が集まりました。

 

 

第3位 3月9日/レミオロメン

2005年に放送された感動のヒューマンドラマ『1リットルの涙』(フジテレビ)の中で、病状が悪化し学校を辞めなければいけない主人公に生徒みんなで歌を贈るシーンで使われた合唱曲が『3月9日』でした。大ヒットドラマの名シーンで歌われたことに加え、3月は卒業シーズンという点も重なり、卒業ソングの定番として長く愛されている楽曲になったようです。

 

 

第4位 正解/RADWIMPS

思春期を過ごす世代を中心に圧倒的支持を受けている4人組ロックバンドRADWIMPSが、18歳世代1,000人と作る一夜限りのステージ『18祭(フェス)』(NHK)のために制作した楽曲。青春の葛藤や輝きを描き、 1,000人の18歳世代が抱えている様々な想いを込めてRADWIMPSと力強く歌い上げたこの曲は、夢を抱えて旅立つZ世代の胸を熱くするようです。

 

 

第5位 手紙〜拝啓、十五の君へ〜/アンジェラ・アキ

悩みや葛藤を抱える15歳の自分が未来の自分へ宛てた『手紙』。2008年、第75回NHK全国学校音楽コンクール(中学生の部)の課題曲として全国の中学生に歌われました。悩みを抱えるZ世代を励ます卒業ソングのようです。

 

 

第6位 YELL/いきものがかり

心温まる歌詞は、悩みに揺れ動きながらも未来への希望でいっぱいの卒業生の心を支える卒業ソングのようです。

 

 

第7位 365日の紙飛行機/AKB48

NHK連続テレビ小説『あさが来た』(2015年)の主題歌であり、冒頭、当時センターを務めていた山本彩の優しい歌声から始まる楽曲。「人生は紙飛行機」「風の中を力の限り ただ進むだけ」「飛んで行け!飛んでみよう」という歌詞が、新たな道へ進む卒業生の心に響くのかもしれません。

 

 

第8位 点描の唄/Mrs.GREEN APPLE feat.井上苑子

Z世代から大きな支持を誇るロックバンドMrs.GREEN APPLE。ボーカル大森元貴の柔らかい男声とゲストボーカルを務めた井上苑子の優しい女声から生まれる透き通ったハーモニーが魅力のデュエット曲。卒業式に好きな人を想うZ世代の心に染みるようです。

 

 

第9位 友〜旅立ちの時〜/ゆず

東日本大震災直後、全国ツアーを縮小せざるを得ず不安や迷いの中、混沌としているスタッフに「これから一緒に旅に行くんだ」と背中を押す想いを込めて作ったのがこの曲の制作の始まりだそうです。別の道へと進む友へ贈る歌詞が胸に響きますね。

 

 

第10位 ともに/WANIMA

聴いた人を鼓舞するような力強いアップテンポなナンバー。友達の背中を押すような歌詞がZ世代の心を揺さぶるようです。

 

 

3.卒業ソングの選び方

卒業ソングは、卒業生の思い出に残る大切な一曲として選ばれます。そのため、選び方には以下のようなポイントに気をつけるといいかもしれません。

(1)卒業生たちの意見を聞く

卒業生たちの思い出に残る曲を選ぶために、アンケートや投票などで卒業生たちの意見を聞くことが重要です。できることなら学校の先生や保護者(PTA)なども協力して選ぶといいかもしれませんね。

(2)曲の歌詞に注目する

卒業ソングには、卒業生たちの思い出や感謝の気持ちが込められているといいでしょう。そのため、歌詞に注目して、卒業生たちの想いが反映された曲を選ぶことが大切です。

(3)ジャンルや曲調を考慮する

卒業ソングは、卒業式の雰囲気に合わせて選ぶ必要があります。式典で演奏する場合は、落ち着いた曲調やバラードが適しています。また、生徒や保護者、先生など、聞く人が幅広い場合は、ジャンルを限定せずにみんなが知っていて口ずさめるような曲を選ぶといいでしょう。

(4)長く愛される曲を選ぶ

卒業ソングは、卒業生たちの一生に残る思い出の曲となることが多いです。そのため、長く愛される曲を選ぶことが大切です。有名な曲や年代を超えて愛される曲などを選ぶといいでしょう

(5)演奏する場所を考える

卒業ソングは、卒業式のメインイベントの一つとして演奏されます。そのため、演奏する場所を考えて、音量や曲調を調整する必要があります。また、音響設備や楽器の有無なども考慮して選曲することが大切です。

4.まとめ

卒業ソングは、卒業して月日がたってもその音楽を聴けば学校生活を思い出すきっかけになったりします。ステキな卒業ソングで卒業式を迎えてくださいね。