2023年2月9日、Public Library of Science社より刊行されているオープンアクセスの査読つきの科学雑誌「PLOS ONE」にある論文が発表されました。「Suppression of angiotensin converting enzyme 2, a host receptor for SARS-CoV-2 infection, using 5-aminolevulinic acid in vitro」と題するその論文の内容は、新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2)の感染を防ぐ可能性がある物質が明らかになったというものです。

 

東京工業大学の研究チームは、SBIホールディングス株式会社の子会社であるSBIファーマ株式会社と共同で研究をおこない、5-アミノレブリン酸クエン酸(5-ALA)と第一鉄ナトリウム(SFC)を接種することで、新型コロナウイルスの感染が抑制される可能性があることを明らかにしました。

 

5-アミノレブリン酸とは、体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸のことで、細胞内のエネルギー代謝を促進する働きがあるといわれています。ヘムやシトクロムと呼ばれるエネルギー生産に関与するタンパク質の原料となる重要な物質ですが、加齢にともないミトコンドリアで作られる量が低下するといわれています。5-アミノレブリン酸は、日本酒や赤ワインなどの食品にも含まれているといわれています。

 

 

 

 

研究チームは、新型コロナウイルスは、ヒトの細胞の表面に存在するアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という受容体を介して侵入するとされており、細胞の表面にあるACE2の数を減らすことができれば新型コロナウイルスに感染しづらくなるのではないかと仮説を立て、研究をすすめました。

 

実験の結果、5-ALAによってACE2の数を減らすことが証明されました。そして、5-ALAに加えてクエン酸第一鉄ナトリウム(SFC)も加えたところ、その効果がさらに顕著になったというんです。

 

 

論文では、5-ALAとSFCにより、ACE2の量を減らすことができ、結果的に新型コロナウイルスの感染低下につながる可能性があると推察できるとまとめています。

 

 

 

 

あくまで実験レベルので結果であり、臨床的に効果が証明されたわけではありません。専門家間で見解の相違があるでしょうし、個々の臨床における状況の違いなどにより結果が変わってくる可能性があります。

 

今後、さらなる研究や臨床経験の蓄積によって、新型コロナウイルス感染症に感染しなくなる日や完治する日がおとずれるように、多くの研究者がいろいろと取り組んでいる状況はとても心強いですよね。

 

ちなみに、5-ALAとSFCの組み合わせの摂取について、これまで千葉県こども病院遺伝診療センター・代謝科/千葉県がんセンター研究所の研究グループ、埼玉医科大学、順天堂大学が、遺伝子異常によりミトコンドリア呼吸鎖酵素の働きが低下し、その結果体のなかでエネルギーとなるATPの産生が低下するミトコンドリア病に対して、ミトコンドリア機能を改善させることを明らかにしており、なんらかの効果は期待できそうです。