あなたは、どうして化粧をするのでしょうか。

 

もちろん、なんとなくという人もいるでしょう。まわりがしているから、私もしてるという人もいると思います。これはこれで、じつは大切な問題です。というのも、学生の頃だとなにも言われなかったのに、社会人になると「化粧くらいしたら?」と家族や会社の同僚からいわれたりします。

 

化粧のことを昔は、「みじまい」とよんでいました。みじまいとは、身だしなみのこと。化粧をしないことは、身だしなみができていないことであり、素顔で人前にでることは失礼だと考えられていました。この考え方は、武家の女性を中心として町人や商人へと広がっていきました。そんな1,000年以上前に考え方が今にも残っているんです。

 

ほかにも、かわいくみられたい、素顔だと恥ずかしいからという人もいるでしょう。かわいくみられたいから化粧をするという人は、かわいい自分になりたいという「変身願望」があるからでしょう。いわば、 かわいい自分が理想の姿。化粧によって、今ある自分を理想の自分に変身させます。

 

もちろん変身には、自分を理想の姿に近づけるというだけではなく、周囲が求める自分に近づけるという意味合いもあります。友達と一緒にいるとき、恋人と一緒にいるとき、家族と一緒にいるときで化粧の仕方が変わるのは、それぞれの人たちがどんなあなたを期待しているかに応えようとしているからです。

 

例えていうなら、俳優さんたちが舞台で演じる役が変わると化粧の仕方を変えるのと同じです。また、素顔だと恥ずかしいという人は、素顔の自分に化粧で手を加えます。自分の顔で自信のある部分を強調したり、見られたくない部分を隠したり。化粧によって、日々の自分の見え方・見られ方を管理します。こちらは変身というよりも、「身だしなみ」という意味の方が強いかも知れません。

 

ところで、わたしたちは素顔を本当の顔だと思っていますが、一日の大半を過ごすのは化粧をした顔です。友達が知っているあなたの顔は素顔ではなく、化粧をしている顔でしょう。つまり、あなたの本当の顔は、化粧をした顔なんです。その意味で化粧をするのは、一過性のおしゃれのためではありません。自分が自分としてあるために必要不可欠なんです。

 

わたしたちが化粧をするのは、「化粧くらいしたら?」という周囲の人からの要請があると同時に、やっぱり化粧をすることでなんらかの効果を実感しているからです。化粧をしても、なにも変化や効果がなかったら、みんな面倒なのでやらなくなるでしょう。ですが、化粧をしない人がいなくならないということは、やっぱり変化や効果があるからです。

 

たとえば、洗顔後に化粧水をつけたりすると気持ちいいですよね。 化粧は人の心理にも影響を与えます。化粧をして気持ちがいいというのも、その一つです。 研究によれば、同じスキンケアでも朝では「はげみ」、夜では「やすらぎ」の気持ちをえることがわかっています。これは、朝夜ともスキンケアから心地よさに関する感情がひきだされてはいるものの、朝は活動の開始に弾みをもたらすような、夕は活動の終わりに癒しをもたらすような感情がひきだされているということになります。いわば、化粧にはそれをする人の感情を変える力があるんです。

 

化粧療法やメイクセラピーという言葉を、きいたことがあるでしょう。これらは、化粧のもつ感情を変える力を利用したものです。もちろん、化粧をすることで感情が変わるのは、医学的疾患がある人だけではありません。男性でも、女性でも、若い人でも、年を重ねた人でも、可能です。そしてときには、妊娠をしている女性のストレスを和らげることだってできるんです。化粧のもつ力を上手く利用して、毎日を生活できるといいですよね。