子どもの健やかな成長を祝う行事は、いろいろあります。有名なものには、7歳、5歳、3歳の子どもの成長を祝う「七五三」がありますよね。ほかにも京都では、この4月の春の時期に「十三まいり」というのがおこなわれます。これは、男女とも13歳になったら、嵐山の法輪寺詣でて、本尊の虚空蔵菩薩に知恵を授けてもらう儀式です。このように、日本人は人生の節目節目を大事にし、神社仏閣に詣でたりしていました。

人生の節目と髪の関係

じつは、髪もまた、人生と大きく関わるものでした。今では自由に髪を伸ばしたり、短くしたりできますが、昔はそうではありませんでした。髪を削ぐことも、たんに伸びたからというのではなく、人生の節目と関係していたんです。

生まれて7日目「産剃り」という禊ぎ

たとえば、生まれて初めて髪を切る日にちも、昔は決まっていました。『源氏物語』で有名な紫式部が書いた日記には、寛弘5(1008)年10月17日の出来事として、藤原道長の初孫である敦成の産剃りを記録しています。産剃りとは、生まれた子どもの頭髪を初めて剃ることです。そして、10月17日は、敦成が生まれてから7日目です。これは、敦成に限ったことではなく、当時は子どもが生まれたら7日目に産剃りをおこなっていました。

 

産剃りがおこなわれたのには、理由があります。昔は、産剃りをすることで、出産の血による穢れを取り去ると考えられていました。昔は女性の生理(月経)ですら、穢れと考えられていました。その穢れた血が出産時に生まれてきた子どもについてしまったのですから、禊ぎをしなければいけません。産剃りは、とても重要な儀式として考えられていたんです。

幼少期の髪の毛を剃り続ける習慣

ちなみに、産産剃りのあとは、3歳頃までは、男女とも髪を剃った頭で過ごしたといわれています。昔は、生まれた子どもが無事に大人に成長することは希でした。今では治るような病気で、幼くして命を落とすことが多かったわけです。そこで、3歳頃までは穢れがついて命を落とさないように、髪の毛を剃り続けられたんです。もちろん現実的には、高温多湿の日本の気候では、新陳代謝の活発な幼児の頭皮は不衛生な状態になりやすく、湿疹やかぶれができてしまうから。それを予防する目的があったからでしょうね。

 

そして、3歳を迎えて初めて、髪を剃ることをやめて伸ばしはじめました。これは「髪置」とよばれました。髪置とは、幼児が頭髪をはじめて伸ばすときにおこなう儀式のことなんです。