新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延とともに、わたしたちの行動に対する制限が、厳しくなってきました。学校や大学が休みとなり、企業も在宅勤務(テレワーク)を導入するところが増えました。全国的にイベントが中止になり、政府からは不要不急の外出を控えるように呼びかけられています。

 

外出が制限されることは不便なことです。とはいえ、ある程度の生活は、ネット通販などを利用すれば、外出することなく生活を送れる世のなかです。すべての人びとが、実際に自分の手でなにかをする必要性は少なくなりつつあります。

 

AIに代替されないふたつの「びよういん」

新型コロナウイルスが発生する以前からも、ロボティックやAIの発達によって、人間が実際に仕事をする必要はなく、将来は様々な仕事がなくなっていくだろうといわれていました。例えば、フレイとオズボーンという研究者によれば、銀行の融資担当、弁護士助手、レジ係、訪問販売員などが高い確率で、10年後くらいにはロボティックやAIに取って代わられるだろうといわれています(Frey, C. B., & Osborne, M. A. (2013). The future of employment: how susceptible are jobs to computerization?)。ほかにも、ネイリストですら消えていくといわれています。

 

一方で、ロボティックやAIが代わりを務める事ことが難しく、将来も人間が関わっていく仕事もあります。たとえば、医師と美容師。偶然にも、どちらも「びよういん」で働くこの2つの仕事は、消えてなくなることはないと考えられています。その理由はなんだとおもいますか。

 

まずは、医師。検査は機械がおこない、AIが検査結果から診断をし、ロボットが手術をする。たしかに一見すると、人間の医師は必要なくなるようにもおもえます。ですが、患者が「胸が苦しい」というというとき、それが「息苦しい」のか「胸が痛いのか」といった意味の理解は、AIでは難しいんです。そのため、治療から人間の医師がなくなることはないと考えられています。ジェニファー・ローレンスが主演を務めた映画「PASSENGERS」に登場する、カプセルに入っただけで治療が自動的におこなわれるというのは、なかなか難しいんです。

 

 

そして、美容師。髪を切ることもロボティックやAIでは代替できないでしょう。というのも、老若男女、また洋の東西を問わず、ひとには髪が生えていますが、その髪に対する考え方や美意識は違うからです。


年配の女性のあいだでは、黒くて艶があり、くせのない長い髪を美しいと考えているひとが少なくありません。

 

ですが、どうでしょうか。
 

今の日本に、そんな髪の女性は少ないとおもいませんか。特に若い女性をみていると、髪をあかるく染めていたり、パーマをあてている方が、多いかも知れません。
それは、若いひとのあいだでは、黒い髪は重い印象となり、かわいくないと考えているからです。
 

男性だって、髪は重要な問題です。薄毛や抜け毛で悩んでいるひとは多いでしょう。じっさい、発毛剤や育毛剤は景気が悪くなっても、売れ続けています。なかには、髪が薄くなることを恥としてとらえ、必死に隠そうとしているひともいます。

髪の文化 海外との感じ方の相違「ヨーロッパでは、髪が薄くなる(=はげている)方が魅力的」

そんな話を友人の外国人女性にすると、不思議な顔をします。というのもヨーロッパでは、髪が薄くなる(=はげている)方が魅力的で、女性からもてるからです。

 

 

世代はもちろんのこと、日本と外国で髪に対するとらえ方が違います。髪に対する考え方は文化や社会の影響が大きいのです。そのため、医師の診断以上に、髪をどう切るか、どうスタイリングするかをロボティックやAIでは代替できません。

 

しかし、一体どうしてわたしたちは薄毛や抜け毛で悩んでしまうのでしょうか。髪色は黒色と明るい色だと、どちらを美しいと感じ、その理由はなぜなのでしょうか。次回以降、髪にまつわる歴史をめぐりながら、わたしたちが抱く髪に対する考え方のルーツをたどっていきましょう。