最近よく耳にする言葉に「ダブルバインド」というのがあります。日本語でいえば、「二重束縛」という意味です。ですが、日本語で言われても、いまいち意味がわかりませんよね。実際、ネットなどでも間違った意味が伝えられていることもあります。そこで今回は、このダブルバインドの秘密にせまります。
1:ダブルバインドの意味は?
今から40年ほど前、グレゴリー・ベイトソンの「ダブルバインド理論」が、アカデミズムの世界で話題になりました。
もともとダブルバインド理論は、実在しない人の声が聞こえるというように、現実にないものをあると感じたり、周りで自分の悪口を言われていると思いこむ被害妄想を持ったりする、統合失調症の研究から生まれた理論です。
ダブルバインドとは日本語で言うと、「二重束縛」とい意味になります。しかしダブルバインド理論もダブルバインド(二重束縛)も、その字面だけでは、なんだかよくわかりませんよね。
ごくごく簡単に言えば、他者とのコミュニケーションを行う場面において、言っていることと、言ったことと相反する内容の態度をとるということが、ダブルバインドにあたります。言い換えるならば、ふたつの矛盾したコミュニケーションが顕在化している状態のことなんです。
言っていることと、言ったこととは相反する内容の態度をとることは、日常生活の中では、ありふれた出来事かもしれません。ですが、なかにはこれにうまく対応することができず、この矛盾を解決させるために「妄想」を持ってしまう人がいます。それこそが、統合失調症なのだと考えられていたのです。
もちろん、統合失調症を患っていなくても、ダブルバインドな相手とのコミュニケーションに混乱してしまうという人は、めずらしくありません。なので、「私、もしかして統合失調症なのかな?」と心配する必要はありません。
2:ダブルバインドの例!仕事、親子でのダブルバインド実例3つ
それでは、ダブルバインドについてもう少し詳しく知るために、いくつか例を挙げて考えてみましょう。
(1)親子の場合
グレゴリー・ベイトソンが、彼の著書『Mind and Nature』(『精神の生態学』新思索社)の中で取り上げている例です。ちょっと極端なのですが、参考までにご紹介します。
子どもと親密な関係になると不安を感じるという親がいます。そういう親は、自分の子どもに対してそうした感情を持っていることを否定するために、子どもを愛していることを強調するような行動を子どもの前でしたりします。
そのとき、子どもから返ってくる反応が、自分を愛情に満ちた親として見るものでない場合、その親はその場から逃げ出してしまうことがあります。
つまり、子どもへの愛情を強調する行動は、必ずしも純粋に優しさを示すための行動ではないと言えます。これは、親子だけにかかわらず、恋人関係でもありえるかもしれませんね。
(2)仕事の場合
仕事の場合は、もう少し日常的に起こりそうな例を紹介しましょう。
会社の先輩などと一緒に、何かのプロジェクトをするということがあるでしょう。当然ながら、そんなときはブレーンストーミングをしたりして、一緒にプロジェクトを成功させようとするはずです。
ですが、時に先輩と自分とあいだで意見が対立することもありますよね。どう考えても自分の方が正しいと譲らなかった場合、先輩の中には「だったらあなたの好きにすれば」と言ってくる人がいるかもしれません。
ですが、この「だったら、好きにすれば」というのは言葉では「好きにしたらいいよ」と理解を示してくれていそうですが、実際は違いますよね。本当に自分の好きなようにしたら、仮にそれで成功しても、後からどんな仕返しが待ち構えているか想像するだけでも怖いものです。
(3)恋愛の場合
恋愛の場合は、もっと「わかる、わかる」というような例を紹介しましょう。
彼氏が浮気をしたとします。そして、それがあなたにバレました。当然、彼は「ごめん。二度としないから許して」と謝るかもしれません。ですが、そんなとき「あ、これは口だけだな。きっとまた浮気するな」と女の勘が働くことってありませんか?
これは実は女の勘ではなく、言葉では「ごめん」と謝罪を口にしているものの、声のトーンや言い方、態度が真の謝罪ではないことを感じ取っているからなのです。これを専門的には「二重束縛的コミュニケーション」と呼んでいて、ダブルバインドのひとつです。
3:心理学を応用!ダブルバインドを知って恋愛を有利にする方法
さて、ではそんなダブルバインドをうまく恋愛に利用する方法は、あるのでしょうか?
ダブルバインドとは、紹介した通りふたつの矛盾したコミュニケーションが顕在化している状態のこと。なので、そういうコミュニケーションの態度をとられた相手は、基本的には混乱しか起こりません。
例えば、女子は男子に「リードしてほしい」なんて言いますよね。ですが、デートの場所や食事のお店など、女子が好む方向にリードしてくれないと、「女の子の気持ちがわかっていない」なんて言い始めることはよくある話です。
これなんて、ダブルバインドの実例のひとつですが、男子からすると「もう面倒だから、会うのをやめよう」なんてことにもなります。そのため、結論から言うと、ダブルバインドが恋愛を有利にすることなんて、容易にはあり得ないのです。
4:ダブルバインドを使ってくる相手への対策
では、相手がダブルバインドのコミュニケーションを行ってきたら、どのように対処したらいいのでしょうか?
いちばん重要なことは、相手の真意を知ること。そして、その真意に沿うように対応することです。なぜ、相手がダブルバインドのコミュニケーションをしてくるのかと言えば、本当は自分のしてほしい対応があるものの、それを公言すると批判を浴びたり、ふたりの関係がまずくなると考えているからです。
そのため、本当にしてほしいこととは別のことを表向きで示しているわけです。ですが、それは本当にしてほしいことではないため、それをされると不機嫌になってしまいます。
まぁ、結局のところ、ダブルバインドのコミュニケーションをする人は面倒なタイプなので、極論を言えば、あまり近づかないほうがいいかもしれませんね。
5:まとめ
いかがでしたでしょうか。ダブルバインドは、知れば知るほど、けっこう面倒ですよね。
恋愛にしろ、職場の人間関係にしろ、なるべく相手にやってほしいことと相手に伝えていることが矛盾しないような、ストレートな関係が築けているほうが、やっぱり健全だと言えるでしょう。