「う〜ん、いけず〜」といえば、アニメ『ちびまる子ちゃん』の主人公・まるちゃんの口癖です。ですが、この「いけず」という言葉、よく耳にする割には、今ひとつ意味がわかりにくい言葉です。はたして、「いけず」の正しい意味はなんなのでしょうか。
1:「いけず」の意味は?
では、さっそくですが「いけず」とは、どういう意味なのでしょうか。辞書を紐解くと、次のような意味が載っています。
いけ‐ず
1 (関西地方で)意地が悪いこと。また、そういう人や、そのさま。「いけずなことばかり言う」
2 《近世上方語》悪人。ならず者。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
また三省堂書店の『大辞林』によれば、「いけず」を漢字で書くと、「行けず」となるそうです。つまり、道などを行けなくさせるように「意地悪くする」ような行動や人を指して、「いけず」と呼ぶようです。
ボクはは関西出身ですが、けっこう頻繁に使います。よく、京都弁(=京言葉)だと思っている人が多いかもしれませんが、京都だけでなく、大阪やその他の関西の人も使うので、どちらかといえば関西弁なのかもしれません。
(1)「いけず」は京都の方言?「いけずぅ」って何!?
関西というのも、なかなか難しいくくりです。神戸や大阪、京都や奈良、和歌山や滋賀も関西です。だからといって、すべてが同じ方言かというとそうでもありません。滋賀だと、江州弁というのがあったりします。
モデルの高橋メアリージュン・高橋ユウさんの姉妹は滋賀出身ですが、京都に近い大津出身ですし、ミュージシャンの西川貴教さんも滋賀出身ですが湖東に近い野洲出身です。
高橋メアリージュンさん・ユウさんと西川貴教さんも、若干イントネーションが違ったりするんです。このあたりは、滋賀出身者じゃないとわからないかもしれません。また、京都と大阪でも、「行きはる」「行かはる」と、同じ意味を指す言葉でも言い方が違ったりします。言葉って面白いですよね。
(2)京都の街並みで見かける「いけず石」とは?
ところで、「いけず石」というのを知っていますか。京都に観光に来たことがある人なら、一度は見たことがあると思います。家と道路が面する角のところに設置されている、少し大きめの石のことです。
なぜ、そんな石を置いているのでしょうか。その理由については諸説ありますが、ひとつには道を走る自動車が右折や左折をするときに、車が家にそれ以上近づかないようにするためと言われています。まさに「行けず」な石です。
京都人ではない人からすると、「車の往来に邪魔」としか思えませんよね。ですが、これはちゃんとした理由があります。京都では、家が軒並ぶような場所の道が大変狭い。そんな場所でスピードを出していたら、歩行している人に危険がおよびます。
また、京の町家は屋根が低く、軒先が広がっています。それにもかかわらず、道が狭いからと自動車が縁石に乗り上げるくらい寄ってしまうと、家の軒先にあたってしまい、屋根が壊れてしまう可能性もあります。けっして、「行けず」な石ではなく、お互いのことを考えた解決策の石が、いけず石なんです。
(3)「行けず後家」なんて言葉も…
ちなみに、「いけず」の意味を調べていると、「行けず後家」という言葉がでてきます。“後家”とは、夫と死別した女性、つまり未亡人を意味します。
つまり「いけず後家」とは、何歳になっても後家さんのようにお嫁に行かない女性のこと。よく意味を知らない人だと、「意地悪な未亡人」という意味で「行けず後家」を使っている場合があります。ですが、本来の意味は、「結婚していない歳のいった女性」のこと。言い換えると、「オールドミス」のことなんです。
2:いけずの意味がわかる!「いけずな人」の特徴3つ
ところで、「いけず」な人、つまり意地悪な人とは、どんな特徴があるのでしょうか。
(1)人のあら探しをする
わざわざ探さなくてもいいのにと思うのに、人の失敗などを見つける人がいます。よくいえば、注意力(=観察力)が鋭くて目に付いてしまうのでしょうが、わざわざ探しているという人も。そんな人は、本当に「いけず」です。
(2)あげ足をとる
あらを探すだけならまだしも、人の失敗をこれ見よがしに関係ない人たちにまで吹聴したり、より目立つように追い討ちをかけてくるような人もいます。きっと、自分が優位に立つチャンスを、今か今かと待ち構えていたのでしょう。本当に意地悪ですよね。
(3)サプライズ好き
ちょっとビックリかもしれませんが、「いけず」な人の中には、サプライズ好きな人もいます。というのも、「いけず(=意地悪)」にも悪い意味だけではなく、いい意味もあるからです。
例えば、「今夜は仕事で会えない」といっておきながら、彼女を待ち伏せして驚かせようとする人も、「いけず」な人ということになります。この場合の「いけず」は、底意地が悪いわけではなく、ちょっとしたいたずら心があるだけ。悪い意味ではないですよね。
3:まとめ
いかがでしたでしょうか。関西出身者以外ですと、「いけず」というのはニュアンスがわかりにくい言葉かもしれません。ですが、きっとそれぞれの地方に、「いけず」によく似た、その地方の人しか真意がわかりづらい言葉というのもあるはずです。
だからといって、みんながみんな、標準語を使えばいいというものでもありません。生まれ育った場所の言葉、大事にしたいですよね。