最近では日本でも「LGBT」という言葉を一般的に耳にするようになりました。しかし、まだ詳しくは知らないという人も多いでしょう。そんな中、最近では「アセクシャル」という言葉もメディアに登場するようになりました。アセクシャルとは、一体なんなのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

1:アセクシャルって知ってる?

今から10年ほど前の2009年、同性愛者であることを公表しているアイスランドのヨハンナ・シグルザルドッティル氏が首相に再選されました。以降、欧米では同性愛を公表している人たちが市長や閣僚を務めるなどをし、社会的理解も進んでいますが、ここ日本ではまだまだと言えるような事象も多いですよね。

 

そんな日本において、アセクシャルという言葉を知っているという人は、そう多くはないでしょう。アセクシャルとは、「性的魅力を経験しない人」のことで、“無性愛”とよばれたりもします。

(1)セクシャルマイノリティのひとつ…アセクシャルとは?

アセクシャルについて考えるためには、まず「性」について知っておく必要があります。私たちは、「性」というと男性か女性かということだけを考えてしまいますが、実際はそうではありません。

 

性と一口に言っても、①身体の性、②心の性、③社会的な性、④性的対象の性、の4つがあるんです。

 

まず①身体の性ですが、これは生まれながらの生物学的な性(=SEX)を意味します。たいていは、外性器の形状や遺伝子などによって分類されます。②心の性とは、自分の性をどのように自認するかによって分類されます。難しい言葉でいうと「性自認」のことです。③社会的な性とは、生物学的な性とは別に、育っていくにつれて身についていく、“男らしさ”や“女らしさ”のことです。難しい言葉でいえば「性役割」のことです。そして④性的対象の性とは、恋愛感情や性的欲求の対象がどのような性であるかということです。専門的には「性的嗜好」とよばれたりします。

 

私たちの性は、この4つの性の組み合わせで、本来は成り立っています。そして、アセクシャルは④性的対象の性に関わり、性愛の対象を持たなかったり、もしくは性的欲求がない人を意味します。

 

アセクシャルに関する研究はほとんどないため、どの程度の割合で存在するかはわかりません。関西学院大学社会学研究科の飯塚諒氏と智原あゆみ氏による「2016年度 LGBT 調査報告書」によると、1割程度がアセクシャルとされています。1割という数は、一般的に考えれば少数派であり、そう考えるとセクシャルマイノリティとも言えるかもしれません。

(2)アセクシャルとデミセクシャルはどう違う?

アセクシャルに関連して、デミセクシャルという言葉も、最近では登場しています。デミセクシャルとは、一般的な性欲(=性愛)がある人と性欲がない(=無性愛)人の中間と言われています。

 

アセクシャル以上に、デミセクシャルについて考察するのは難しいのが現状です。というのも、デミセクシャルの人は普段は性欲がなく、一見するとアセクシャルなのですが、何かのきっかけで、性欲がわくことがあるからです。そう聞くと「普通のことなのでは?」と思う人が多いでしょう。実際、その通りなんです。

(3)アセクシャルをカミングアウトしている有名人は?

性に関する事柄をカミングアウト(=公表)することの賛否や必要性は、ひとまずここでは議論しないとして、有名人にアセクシャルな人はいるのでしょうか?

 

インターネットで調べてみたところ、アセクシャルだとカミングアウトとしている人は見つかりませんでした。

 

調べている中で、「セックスすることが気持ち悪い」という人は見かけます。ですが、「セックスすることが気持ち悪い」と考えることと性欲がないことは必ずしも一致しないので、安易にアセクシャルだと考えることはできません。

 

 

 

2:アセクシャルかも…チェックする方法ってあるの?アセクシャルかデミセクシャルかの診断

もしあなたが、あまり性的なことに関心がなければ、「もしかしたらアセクシャルかも……」と思ってしまうかもしれません。

 

そういう人からすれば、自分がアセクシャルかどうかわかる診断テストを知りたいと思うでしょうが、残念ながら診断テストはありません。また、あったとしても非常にセンシティブな問題に関わることであり、誤解が生まれてはいけないので、インターネットで気楽に載せることはできないのです。もし、自分がアセクシャルかもと悩んでいるのであれば、専門家に直接相談してください。

 

ただ、そもそもアセクシャルであることが病気であったり、悪いことであったりするわけではありません。

 

例えば、同性愛は精神疾患のひとつとして考えられていました。1960年代、「ゲイ・リベレーション」という解放運動が高まり、精神医学界でも議論が起きて、1973年に同性愛は診断分類から一度、削除されました。

 

その後、紆余曲折を経て1987年に再度削除されてから現在まで、削除されたままになっています。つまり、同性愛は精神疾患とか障害とはみなされていないのです。

 

アセクシャルに関しても同じことが言えるでしょう。人によって、性欲の強さは異なります。ものすごく関心があるという人もいれば、その一方でまったくないという人がいることも、自然なことなのです。

3:アセクシャルな人にとって結婚とは…アセクシャルが持つ結婚観

性欲がなくても、結婚に支障をきたすことはないでしょう。ただしこれは、パートナーが同程度に性欲がないという前提になります。というのも、婚姻後に性的関係の維持ができないことは、離婚要因になることもあるからです。

 

残念ながら、アセクシャルな人に関する研究はなく、また周囲にもアセクシャルな人がいないため、どのような結婚観を抱いているか、正直わかりません。

 

ですが、性欲がなくても、誰かと一緒にいたいと考えたり、その相手のことが好きというのは自然なことなんです。

4:アセクシャルになるには原因がある?アセクシャルになる原因

では、なぜアセクシャルな人がいるのでしょうか。きっかけとなる原因があるのでしょうか? このあたりについても、今現在、研究が進んでいるわけではないので「わからない」としか答えようがありません。

 

ですが、性欲がすごく強い人、性欲が平均的な人、性欲がない人のそれぞれに何らかの原因があって性欲の強さが変わってくると考えるよりも、あくまで“個性のひとつ”として捉えるべきだと筆者は考えます。

5:まとめ

このコラムを読んでくださった方は、「アセクシャルについて知りたい」人が多かったと思います。そんな人たちからすると、答えになっているようで、なっていない内容になってしまったかもしれません。

 

ですが、アセクシャルに限らず、一般的に「LGBT」という言葉が取り扱う性は、病気でも特別なことでもないということを強調したいと思います。今も昔も、多様な性は存在し、それは特別なことではないのですから。