人はたいてい、誰かを好きになります。ですが、大人になるとわかりますが、「誰かを好きになること」と「誰かを愛すること」は、似ていながらちょっと違いますよね。世の中には、「この人、誰かを愛したことがないんじゃないかな?」という人がたまにいます。果たして、人を愛するというのは、どういうことなのでしょうか? そして、本当に人を愛したことがない人っているのでしょうか? 大学で恋愛心理を担当する筆者が、その謎にせまります。
![](https://ssl-stat.amebame.com/pub/content/9477400408/amebapick/item/picktag_autoAd_301.png)
1:人を愛せない人が存在する?
人を愛するというのは、どういうことなのでしょうか? それを考えるうえで参考になるは、心理学者ルービンの「LOVE – LIKE理論」です。
ルービンは、相手に対するロマンティッ クな愛情(love)と、単なる好意(like)を区別しました。そして、友人や家族には好意の感情のみが存在し、恋人にはロマンティックな愛情と好意の両方が存在することを明らかにしたんです。
ルービンの理論に基づけば、「人を愛せない人」が存在するとすれば、それは、相手に対するロマンティックな愛情が欠如しているからといえるでしょう。
2:人を愛せない病気があるの?人を愛せない人の心理3つ
では、人を愛せない人とはどんな人なのでしょうか? 残念ながら、恋愛にまつわる心理学の研究で、そのようなテーマを扱った研究はほとんど見あたりません。
そこで、心理学の分野を広げて考えてみると、関連しそうなものに「愛着障害」というものがあります。
(1)愛着障害とは
愛着障害とは、乳幼児期に長期にわたって虐待やネグレクト(=放置)を受けたことにより、保護者との安定したアタッチメント(=愛着)が絶たれたことで引き起こされる障害とされています。
たとえば、人と接する際に視線をそらしながら近づく、抱かれていても視線を合わせない、近づいたり逃げたり逆らったりするといった、極度に不安定で複雑な行動に特徴があるとされています。
(2)愛着行動とロマンティック・アタッチメント
大人の恋愛行動は、「ロマンティック・アタッチメント」とも呼ばれるのですが、これも愛着行動のひとつです。そして、このロマンティック・アタッチメントは、乳幼児期の保護者との愛着行動に影響を受けるのです。
たとえば、乳幼児期に大きな愛を受けてきた人は、他人を信頼したり、絆を深める傾向に育ち、恋人ともそのような関係を築いていきます。しかしながら、愛が足りない状態で育つと、束縛しがちになったり、情緒不安定になりがちになり、恋人にもそういう態度をとるようになるんです。
その意味で、愛着障害が人を愛せないということに関連している可能性は、十分にあるんです。
(3)愛着障害の特徴
では、愛着障害がある人の特徴とは、いったい何があるのでしょうか? あくまでも、乳幼児や児童に対する愛着障害の発見ポイントですが、いくつか紹介します。
- ものをさわりまくる
- ものを独占して貸せない
- ものをなくす(大事にできない)
- 人にべたっと抱きつく
- 服装の乱れ
- 落ち着きがなく動き廻る
- 靴や靴下を嫌う
- 注意すると暗い顔になったり、反抗する
- ウソが多い
- わざと友だちにいじわるをする
以上は、愛着障害の数ある特徴のうちの10個です。もちろん、これにあてはまるからとって、必ずしも愛着障害があるわけではありません。
3:サイコパスなの?人を愛せない男の特徴3つ
ところで、最近よく聞く言葉に「サイコパス」というのがあります。中には、人を愛せない(=人を大事にできない)のは、サイコパスだからと考えている人がいるかもしれません。ですが、サイコパス(psychopath)とは、異常心理学において反社会的人格の一種の精神病質、 または精神病質者を意味します。
特徴としては、
- 表面的な魅力
- 不安の欠如
- 罪悪感の欠如
- 他人を信頼できない
- 不誠実
- 自己中心的
- 親しい関係を継続して作れない
- 罰から学ばない
- 情緒の乏しさ
- 自分の行動が相手に及ぼす影響を鑑みることができない
- 将来の計画を立てられない
などがあるといわれています。
サイコパスには情動障害があり、そのため目的達成のために反社会的なやり方をするとされています。つまり、サイコパスには、他者への感情体験を直感的にくみとる能力が欠けているともいわれています。
その意味でも、「サイコパスだから人を愛せない」とはいえません。
これらをふまえて、人を愛せないという男性について考えてみましょう。
(1)愛を信じていない
ロマンティック・アタッチメントが、乳幼児期の保護者とのアタッチメントに影響されることからも、自分自身が愛されたことがなければ、人をどのように愛していいかがわかるはずがありません。それは、言葉を換えると、「愛を信じていないから、人を愛することをしない」いえるでしょう。
(2)人を信用できない
愛を信じていないのと同様に、人を信用することができない人は、「いつかは必ず人に裏切られる」と考えているわけです、必ず裏切るような人に対して、普通の人だって「裏切られてもいいから、私は愛するんだ」なんてお人好しはいないですよね。
(3)打算的
愛は、言いかえれば慈悲です。慈悲は仏教用語で、無償で人々を憐み、楽しみを与え、苦しみを取り除くことです。
「私を愛してくれないと、相手を愛さない」とか、「何か利益がないと、愛する意味がない」と考えている人は、人を愛することはありません。そう考えると、物事に対して打算的な人は、人を愛することはできないでしょう。
5:まとめ
いかがですか? 愛とは、自然にわき出るような感情ですが、実はそうではないのかもしれません。ですが、人を愛せないことは、その人自身の責任ではなく、生まれ育った環境などが影響していることが考えられます。
けっして、その人が悪いわけではないので、責めたりするのはやめましょうね。