ふとした瞬間に、「もしかして○○君のこと好きかも」なんて、自分の気持ちに気付くことありませんか。なぜ人は、誰かのことを好きになるのでしょうか? 今回は、そのメカニズムを心理的に迫ります。

 

 

1:好きになる理由ってなんですか?

人を好きになり、恋心が生まれるときは、どんなときでしょうか。

 

進化心理学という、進化理論を使って人間の感情を研究している学問によれば、恋心は子孫の繁栄と深く関係しているといいます。

 

生き物は、子孫を残して自分の遺伝子を反映させようとする本能をもっています。人間も同じ。繁殖をしなくなったら、絶滅してしまいますよね。

 

エッチをすれば妊娠し、繁殖をする可能性があります。人類にエッチをさせるためだけだったら、その行動にエクスタシーを感じさせる感情がともなっていれば、いい訳です。ですが、人間の場合、たとえ妊娠しても、好きな相手の子供でないと、「出産しよう!」「ちゃんと育てよう!」という気は起こりませんよね。子孫を産み、育てることを人類にさせるために、「誰かのことを好きになる」という感情が生まれたというんです。

 

とはいえ、私たちが誰かのことを好きになるときに、そんなことなんて考えませんよね。どちらかというと、相手とより仲良くなりたい、相手に依存したい、依存されたい、自分を犠牲にしてでも助けてあげたい、独占したいと思います。これが、いわゆる私たちが日常的に考える恋愛感情です。

2:人が人を好きになる理由を心理学でご紹介します!

では、ここで人が人を好きになる理由を紹介したいと思います。ちなみに、人が人を好きになる理由には、自分の側の理由(自己要因)と相手の側の理由(他者要因)が存在しています。

(1)人を好きになる自己要因

まずは、人を好きになる自分の側の理由から紹介します。

 1.生理的に興奮している

人は、自分の心理的、生理的状態から、誰かを好きになることがあります。たとえば、生理的に興奮状態にあるときに恋心が生まれやすいといわれています。

 

生理的に興奮していて、その理由がなぜだかわからないとき、近くに恋人にふさわしいような人がいるとします。すると、その興奮をその異性に対する恋心によるものだと思い込みます。そして、その異性を好きになり、恋が生まれることがあるんです。

ちょうどその状況が、ひと目惚れなどで恋心が生まれるときに、人は感情的に高揚し、興奮状態にあることから、誤解して誰かのことを好きになってしまうんですね。いわゆる「吊り橋理論」というものです。

 2.自信が低下している

自分への自信(=自己評価)が低くなり、劣等感をもっていると、人を好きになるといわれています。たとえば、試験に落ちたり、病気になったりなど、自信を失い、落ち込んでいるときに、慰めてくれた人と恋に落ちやすいんです。

 

これは心理学的には、落ち込んだときの寂しさから、誰かにそばにいて欲しい、誰かに助けて欲しいという欲求が高まるからだとされています。また、それだけでなく、自分への自信が低下することで、周りの人が自分よりも優れて見え、好意を抱きやすいからでもあるんです。

 

いわゆる、失恋したあとに、すぐに新しい恋が生まれやすいのも、この理由からです。高校生や大学生だと、これからの時期は受験や期末テストがあったりして、不用意な恋愛に発展してしまう機会が多い時期に突入かもしれませんね。

 3.助けてしまう

普通に考えて、自分が困っているときに助けてくれる人に対して、好きになってしまいそうというのはイメージできますよね。ですが、心理学的にはそうではないんです。

 

これは、認知的不協和という言葉で説明されます。認知的不協和とは、人が自分自身の中で矛盾を同時に抱えた状態、また、そのときに覚える不快感を意味します。

 

本来は自分が困っているときに助けてくれる人に対して、好きになってしまいそうなのに、自分が誰かを助けて、その人を好きになってしまうというのは矛盾で、違和感を覚えます。そのとき人は、この違和感を解消するために、もともとその人のことが好きだったから助けたんだと考えるようになるんです。

 

高校生や学生が、本当は自分が試験勉強をしないと大変なことになるのに、勉強を教えてと頼まれてしかたなく教えたとき、自分も納期が間近な仕事を抱えているのに、残業の友達の仕事を助けたときなどに恋が生まれやすいのも、この理由からだとされています。

 

これからの時期だと、2月14日のバレンタインデーに女子から男子にチョコをプレゼントするのではなく、男子にチョコをプレゼントさせるように仕向けるといいかもしれませんね。

4.自分とよく似ている

人は、自分と意見や考え方、好み、趣味などが似ている人を好きになるといわれています。いわゆる、「自分と釣り合いがとれている人を好きになる」というものです。

人間は、案外とめんどうくさがりな生き物です。自分と意見や考え方が違う相手と一緒にいると、お互いに理解し合うのがめんどうですし、大変な労力にもなります。

たとえば、食べ物の好みが違うと、デートで何を食べるか決めることだけでも大変ですよね。そんなめんどうを避けるために、自分とよく似ている人を好きになると言われています。

 

おもしろいことに、「どんな人と付き合いたい?」と質問されたら、誰しも高嶺の花のような相手の名前を挙げます。ですが、実際に付き合う相手を調べると、そのような高嶺の花ではなく、自分とよく似ている釣り合いがとれている相手を選んでいるんです。

5.外見がいい

誰と付き合いたいかという理想は、高嶺の花のような人であるというのは、今言った通りです。そして、それは外見もあてはまります。つまり、人は美人やイケメンに対して好きになってしまうのです。

 

人が、外見のいい人を好きになってしまう理由には、諸説あります。

たとえば、外見のいい人は内面もいい人に決まっているという思い込み(ステレオタイプ)があるからという説。外見のよさは、免疫力の強さなど、繁殖して遺伝させると優位な、目に見えない能力を裏打ちしているからという説などがあります。

ただし難しいのは、外見のいい人は好きだけれど、自分と似ているかどうかや釣り合いの問題などもあって、実際に付き合うところまでいかない場合があるということなんです。

(2)人を好きになる他者要因

では、次に人を好きになる他者の理由を紹介しましょう。

 1.相手が好意をもってくれる

難しい言葉で、好意の互恵性とも言われたりします。人は、相手から好かれていることがわかると、自分もその人を好きになるという心理があります。

 

たとえば、今まで何も意識していなかったのに、急に告白されると相手のことが気になったり、友人から「○○君が好きらしいよ」と、自分に関心をもっていることを知らされると、自分もその人のことを好きになったりしますよね。

 

いわゆる、「お土産をもらったら、私もお返ししなくちゃ」というような心理が好きという感情にもあって、「好きをお返ししなくちゃ」と無意識に思ってしまうんです。その意味では、好きな相手にはまず、自分から告白するというのは大事なことだといえます。

2.褒めてくれる

これは、自信の低下から好意とセットとも言える心理です。人は、自分を褒めてくれる人を好きになってしまいます。というのも、人には自尊心(自信)を高めさせたいという欲求があり、誰かが自分のことをほめてくれるというのはこれを直接、満足させることができるからです。そのため、自分を評価し、褒めてくれる人に対して好きになってしまうんです。

 

自分の自信が低下しているときに、一緒にいてくれるだけではなく、慰めてくれたり、褒めてくれたりされたときには、もう好きにならずにはいられません。

3.よく会う

毎日の通勤や通学の電車のなかで、しゃべったことはないけれど、一緒に乗り合わせる人っていませんか。そういう人が、ある日電車に乗ってこないと、「どうしたのかな?」って思ったり、名前も知らないのに親近感を覚えるっていうことがあります。

人は、単に顔を合わせるだけで話したことがなくても、何回か会っていると好きになってしまいます。

 

同じ学校や職場で恋愛をしたり、結婚してしまうのが多いのは、このためなんです。また、ドラマなどで見る、偶然を装ってすれ違うというのも、あながち間違ってはいないんです。

反対に、遠距離恋愛になってしまって、あまり顔を見なくなってしまうと、いくらLINEなどでメッセージのやり取りをしていても、好きという感情が弱くなってしまうと言われています。

 

遠距離恋愛の恋人とは、メッセージだけではなく、写真を送ったり、意識的にビデオチャットなどをするように心がけましょう。

4.自分の秘密が打ち明けられる

自分の感情、経験、人生観などを他人に言葉で伝えることを、自己開示と呼んでいます。簡単に言ってしまえば、「自分の秘密を他人に打ち明けること」と言ってもいいでしょう。

 

秘密を打ち明けられると、人はそれを好意や信頼の表れとして受け取り、同じように自分も相手に秘密を打ち明けようとします。

お互いが、秘密を打ち明け合うようになることで、ふたりの関係は親密となっていきますよね。

 

そして、結果的に、ふたりの間に「好き」という感情が芽生え、深まっていくと言われています。とはいえ、いきなり深い話をすると、ちょっと重く、引いてしまうかもしれませんので、そのあたりは要注意です。

3:まとめ

人を好きになる理由は、決してひとつだけではないんです。

 

英語で、恋をすることを、CHEMISTRY(化学作用)なんていったりすることもあります。自分の側の理由や相手の側の理由など、様々な要因が混ざり合い、作用し合って、「好き」という感情が生まれているんです。そして、この、「人を好きになる理由」は、相手に自分のことを好きにさせるという方法に応用することも可能なんですよ。