マイナビニュースが男性200名を対象に行った「女性の方言が最もかわいいと思う都道府県はどこですか? 」という調査によれば、第1位に京都府(39.5%)が選ばれています。

その理由として、「上品で色っぽい」(26歳男性/新潟県/農林・水産/技術職)、「はんなりしていて口調が柔らかいから」(31歳男性/埼玉県/商社・卸/事務系専門職)などがあげられています。

なぜ、京都の方言が人気なのでしょうか

穏やかで丁寧、親しみやすくきれいな京都のことば

 

 

京都府といっても、南は奈良から北は日本海まであり、とても広い府なので、北と南で言葉が違います。「はんなりしていて口調が柔らかいから」というのは、京都市内を中心とする方言を指しているのでしょう。

さて、『どうなる日本のことばー方言と共通語のゆくえー』(大修館書店)に面白い調査が載っています。方言に対する、評価の地域差です。

 

例えば沖縄の言葉は、きれいで親しみやすいものの、聞き取りにくいという評価がされています。そして京都の言葉は、穏やかで丁寧、親しみやすくきれいという評価がされます。さらに、京都の言葉には、きつい、荒っぽい、聞き取りにくいといった評価はついていません。評価のうえでは、理想的な言葉といえるでしょう。

京都は、かつては都で(京都人にいわせれば、今でも都なのですが)、天皇を中心として貴族が住んでいました。穏やかで優しい、雅な生活を守るために、人と争うことを避けようとすれば、結果、柔らかな物腰の口調、独特の婉曲された表現を生みだされます。

京都の言葉には、都であった頃からの人との争いを避けようとする心が今も生きていて、そしてそれを私たちも魅力的に捉え、今なおどこかに都への憧れを感じているのかもしれません。

人間が好む「母音の長音化」の特徴が顕著だからという側面も

加えて言語的にいえば、人は時間的にやや長く発音される重音節を好む傾向があるとされています。

 

例えば、火曜日の火。

月火水(ge.tsu、ka、sui)と言うときに、「ka」が「ka:」と伸びますよね。

難しくいえば、母音が長音化するわけですが、これは関西地方の方言でより顕著にあらわれるとされています(廣田康子『中越方言の音韻分析』東京女子大学言語文化研究)。そして、京都の言葉には長音化するものがたくさんあります。このあたりも、京都の言葉が男性から支持される理由の一つと言えるでしょう。

言葉は、話す内容だけが重要なのではありません。

非言語コミュニケーション的にいえば、言い方、間の取り方など、話し方がすごく重要なんです。そんな重要な役割を、方言が担っていると言えるでしょう。恥ずかしがらず、自分の方言を大切に使っていってほしいと思います。