高度情報社会である今日 我々は日常的に多様なメディアに接触している

これまでの先行研究の多くは メディアへの接触率やそれらと収入や住居環境など各種属性との関連性 また人物やメディアへの接触が我々の生活や意識にどのように影響を与えているかについての検討である

例えば 豊福は大学生を対象に情報化に対する意識を調査した結果「情報先取り指向」「対情報自律指向」「情報収集に対するコスト意識」「情報化是認・コミュニケーション指向」「対情報消極指向」「情報発信指向」の6因子を明らかにし 男性は女性に比べ「対情報自律指向」が高く 女性は男性に比べ「情報先取り指向」「情報化是認・コミュニケーション指向」が高いことを明らかにしている

そして 男性は雑誌やTVなどの接触が高く 女性は電話やポケットベルなどの接触が高いことも明らかにしている

五十嵐は 大学生の情報探求性を調査した結果「メディア情報源の活用」「対人情報源の活用」「一般的情報探求性」の3因子を明らかにし 女性は男性に比べ「対人情報源の活用」をより意識していること およびTV 書籍 雑誌 新聞 携帯メールへの接触が高いことを明らかにしている

萩原は ほとんどの大学生がラジオに接触していないものの 逆にTVには住居環境(自宅/下宿)による有意差はなく日常的に接触し TVを長時間視聴する者ほどニュース・報道番組や教育・教養番組を視聴せず ドラマ番組やバラエティ番組を視聴すること 特に男性はスポーツ番組やアニメ・マンガ番組に 女性はドラマ番組や音楽番組により多く接触していること また雑誌については男性は週刊誌 女性は月刊誌に主に接触し 新聞には男女ともあまり接触していないことを明らかにしている

平松は 大学生の化粧行動や化粧意識と人物やメディアとの接触との関連性を調査し 化粧行動や化粧意識は人物やメディアの持つ積極的・消極的情報の影響を受け それぞれ促進・抑制されていることを明らかにしている

このような メディアへの接触率や基本属性や意識・態度との関連を調査した先行研究は 被調査者のメディアに対する実際の行動を明らかにしており重要な知見を含む

しかしながら 我々の行動は余暇時間や情報機器の所有率といった外的要因だけではなく 個人差要因(性格特性)といった内的要因によっても規定されるにもかかわらず 従来 我々のメディア接触と個人差要因との関連を検討した研究はほとんど見ることができない

そこで本研究では 現在の若者のメディア接触が どのような個人差要因により規定されているのか検討を行った

なお 若者を調査対象者に選んだ理由として 社会人とは異なり 仕事上の必要性から情報を得るためにメディアに接触する必要がないため 社会的バイアスが低いことが挙げられる

また NPO法人子どもとメディアによって 1日6時間もの間も他者と言葉を交わさない子どもたちが小・中学生の調査対象者(2143名)の25%にも及ぶことが明らかにされていることから メディアではないものの 人物接触についても同時に調査を行った

【原著】
平松隆円 2006 人物・メディア接触への個人差要因の影響 佛教大学教育学部学会紀要 佛教大学教育学部学会 第5巻 pp.165-171